表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

第3話 「願い事」

感想を書いて下さった方ありがとうございます!

調子にのって連日投稿です。

これからは週1ぐらいのペースで更新していくつもりです。

リンが目を覚ました後、安静を条件に彼女は自室に戻ることを許された。

女医曰く


「こんなトコに一晩中居たら体内の循環が悪くなるわ」


だそうだが、自分の保健室(しごとば)をこんなとこ呼ばわりはどうかと思う。

またも彼女についていき、先程の部屋に入る。

廊下の窓から見える景色は暁を終え、夜の帳が下りてきていた。

部屋は暗かったが、彼女が黄色く光るランプを持ってきてくれたので明かりには困らない。


「ソファにでも座ってくれ」


『ありがと』


「いろいろ聞きたいことがあるんじゃないか?」


リン言うとおり、彼女が意識を取り戻してから考えないようにしていた疑問が脳内で巡っていた。

ここはどこか。なぜここにいるのか。俺は戻れるのか。さっきのは何なのか。


『顔に出てた?』


「捨てられた子犬みたいだったぞ」



『どんな顔ですかっ?』

からかう彼女の顔には疲労は見えない。直感だが彼女は無理をしていないだろう。

これなら心おきなく質問できる。


『聞きたいことはいくつもあるんだけど…取り合えずここはどこ?』


「王立教育機関エクリプス魔導学校、では物足りないな。ええと―――」


俺の知りたいことの意味を読み取ってリンは説明をしてくれた。


俺が立っている場所(ここ)この(・・)世界の約半分を占める巨大なU字型の大陸の上にある。

そしてその大陸には3つの巨大国家が存在している。


西部を治め、帝政を布く竜胆(リンドウ)

ここのイメージは戦前の日本に近いようだ。帝を頂に置き、覇道を唱えている。


そして、今俺がいる大陸東部の国。天空王国アスカ。

実際に空に浮いているから「天空」とついているのではなく、宗教的な意味合いなのだそうだ。

国力は他の2国家とあまり変わらないが、魔道の技術で他を圧倒しているらしい。


小国が大国に抵抗するため力を合わせ、1つの国家を形作っているラック共和国連合。

建前では民主主義国家らしいが、実際のところは上層部の一派が牛耳っている状況。

大陸南部で2つの国に挟まれているためどちらともと国交があり、非常に富んでいる。


彼女の説明はとても分かりやすかった。

魔道とか新しいキーワードが出てきて混乱させてくれたが。

いずれの国も俺は聞いたことがなかった。

一応日本についても尋ねてみたが、彼女は聞いたこともない様子である。


「この大陸上の3ヶ国のほかにも小さな国家はいくつかあるがそれほどの文明をもつ国は存在しないよ」


当然のようにランプをつける様子から想像は出来たが「科学」という概念はあまり発展していない。


「なんにせよ、この世界でこれらの国を知らない成人はほとんどいないだろうな」


『さいですか…』


日本もなく、科学も発展していない。

認めるしかないのか。


「君はこことは違う世界から来たんだろうな」


こともなげに彼女が言い放った。


『異世界とか信じてるの?』


「まあ、そもそも精霊の召喚だって異世界に住む精霊を呼ぶ儀式だからな」


『なるほどね。じゃああの歌が召喚のための詠唱ってやつ?』


「いいや、精霊召喚にはそもそも詠唱の必要はな……もしかして聞こえていたのか?」


『へ?そりゃあしっかりと。でも詠唱じゃないんだったらあれは―――』


何かに願うかのような声だった


「わっ、わすれてたっ!

あれは私オリジナルの召喚術式でな、マナのラインを通す時に詠唱を加えるとそれはもう強い精霊を召喚できるというとっても便利でお手軽な方法で高位存在が呼べるものでな、別に家族が欲しかったとか思っていたわけではなくてなっ」


冷静だった態度はどこへやら。

真っ赤に顔を染めて非常に分かりやすく「願い」を教えてくれた。


『愛してほしいってのはそういうわけだったのか…』


「だっだっだだから。それは!」


恥ずかしがる表情はとても可愛らしくまたからかいたくなった。

しかし、アレはとても切実な願いだった。

知り合って間もない俺ではその重さを推し量れない程に。

ま、だからこそ惹かれたのかもしれないけど。


『はいはい、わかりましたよ~』


「わ、わかってないだろ!」


『つまり、俺は君に呼ばれてここにいるってわけだな』


「いや、だから…」


今は彼女の過去(このこと)を掘り下げるべきではないだろう。


『それはともかくまだ質問してもいい?』


「……構わない」


『俺はここから元の世界に帰れるのかな?』


とくに待ってる人がいるというわけではないがあれでも生まれ育ってきた世界だ。

愛着(しゅうちゃく)がないと言えばウソだ。

だが、いわゆる異世界召喚系のものでは元の世界に帰れることはあまりない。

そういう読書経験が役立つとは思えないが一応聞いておきたかった。


「無論だ。帰れないのでは拉致と変わりがないではないか」


『だよね、俺は一生この世界に……って帰れるの!?』


釣りじゃないだろうな?


「当然だ。精霊召喚というのは相互理解の上で行われる。

いきなり初対面の人間に一生いてくれ、と頼まれてはいそうですかと答えてくれるような馬鹿はいるわけない」


俺は声に惹かれて何も考えずに来ちゃったんだけどね。

考えなしの馬鹿ですいません。


「というか世界を越える感覚なら私よりカナタのほうが優れているだろう?」


『俺は意識的には無力で無能な一般人なのに、世界を越える方法なんてわかるはずがないよ…』


「いや、君は無力なんかじゃない!君は私とティーを助けてくれた。

その君が無能であるわけがないだろう!」


リンちゃん、論点ずれてるよー。


「君がいなければ彼女はっ!」


『落ち着いて、そのことはおいおい考えるよ。ありがと』


まくし立てるリンを落ち着けるため彼女の肩を掴んで微笑む。


「…いいや、私こそ済まない。今はこの話をしていたのではなかったな」


彼女はすぐに落ち着いて俺の意図を察してくれた。

つくづく頭のいい、そして優しい娘であると思う。

リンの肩を離し空気を変えるためにも質問を重ねる。

もとの世界に帰れると分かっただけでも僥倖だ。


『この世界に魔法は存在するんだよね』


質問するまでもなく実際に目の当たりにしているので確認のようなものだけど。


「ああ、存在する」


また説明パートに入りまーす!


この世界の魔法は大きく2つに別れる。

その2つとは

《日》と《夜》

《日》が司るのは《火》《土》《光》

《夜》が司るのは《水》《風》《闇》

たいていの魔法を使える人々は《火》《土》《風》《水》のうちどれか1つの属性を持っている。

1つの属性を持つ者はそれぞれの属性以外の魔法は行使できない。

また《光》もしくは《闇》を持っている人は1万人に1人いるぐらいで、それを持っているだけでアスカでは確実に職を得られる。

そして属性《日》もしくは《夜》の魔術師とはこれらが司る3つの属性をあわせもつ者をさす。

《日》と《夜》どちらも当然《光》と《夜》よりも貴重な人材で10万人に1人いたらラッキーだ!くらい。



『ちなみにリンの属性は?』


「私は《日》だ」


当然のように言ってのけるね…。



また、それぞれの属性には代表(シンボル)ともいえる精霊が存在する。

その属性と一定以上(ラインははっきりしていないらしいが)に感応が強ければ精霊を召喚できる。

《火》には火蜥蜴(サラマンダー)

《土》には土竜(ノーム)

《光》には使途(エンジェル)

《水》には海獣(リヴァイアサン)

《風》には鎌鼬(かまいたち)

《闇》には(シャドウ)

そして

《日》には日輪(サンシャイン)

《夜》には月光

といった具合に。

召喚を行うとたいていの場合代表(シンボル)と同一の精霊が現れる。

だが、例外的に召喚した者と精神的に結びつきが強い精霊が選ばれることもあるらしい。

この精霊召喚には下手をすると精霊のマナに召喚者が耐えきれず、ティーのように暴走してしまうリスクをはらんでいる。


「魔法と精霊に関してはこんなところか」


俺が理解できず何度も同じことを聞き返したため結構時間がかかってしまった。


『頭が痛い』


知恵熱というか、一気にいろいろ詰め込みすぎたかもしれない。


「私もまだ学んでいる身だからな。説明下手で申し訳ない」


楽しそうに謝るリンの言葉には全然誠意が感じられない。


『思ってないでしょ』


「ふ、これでもまだまだ冒頭程度だがな」


『どこでも勉強ってのは疲れるもんだな…』


「カナタも学生なのか?」


『そだよ、男子校に入ったのは失敗だと今でも後悔してる』


「本当にただの男の子だったのだな」


『男の子って、そういうリンは何歳だよ。どうせ俺とたいして変わらないだろ』


「女性に年を尋ねるとはね」


やれやれと肩をすくめる彼女の仕草が若若しい容姿と合っておらず笑いを誘った。


「む、なんだか馬鹿にされている気がするぞ…。

ちなみに私はこの世に生を受けてから100年と5カ月だ」


ぶうううっ!

お茶でも飲んでいたら今頃リンの顔に盛大にぶちまけていた…。

平然と言ってのけた彼女は俺の返答を待っている。

すなわち「お前はいくつなんだ?」である。


『18歳』


悔しがりながらも年齢を答え、リンを窺う。

そういえば彼女は喋り方も最初から独特だったしこの世界のヒトの中には長命種もいるのかもしれない。


「ふふふ、冗談だよ。納得しないでくれ。私は18歳の正真正銘ただのオンナノコだよ」


これまた楽しそうにリンは笑った。


そんな雑談をしていると、窓の外が明るくなってきた。


「朝か」


『早いね。ここは学校なんだろう?授業とか大丈夫なの?』


「《日》の魔術師を舐めないでもらいたい」


彼女とそんな軽口を交わしあっていると突然ドアの扉が開け放たれた。


「リンちゃん大丈夫!?……ってリンちゃんが男の子連れ込んでるーーー!!」


ローブ姿からラフな格好に着替えたティーちゃんだった。

今はまだ早朝なんですが…。


「テ、ティーこの人は―――」


「せーんーせー!リンちゃんが!あの奥手で、鈍感天然のモテ女のリンちゃんが、おとっ、大人の階段を

ーーー!」


リンが何かを言いきる前にティーちゃんは走り去って行った。

なんか喚きながら。あとドップラー効果も発生させつつ。


「あれで悪い奴ではないんだが」


リンの言葉には諦めが見て取れた。

いろいろな小説を読んでると毎回様々な魔術理論のようなものが出てきますよね。難しいですね…。

今回は大まかな説明だけでしたが、後々詳しく書かせていただくつもりです…機会があれば、ですが。


彼方の能力が分かるのはいつになるのやら。次話までにできたらいいなー。

リンはほんとに18歳です。ねんのため。


一ヶ所、リンとティーが逆になっているところがあったので修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ