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第25話 「作戦開始」

朝、森に入ってからの陣形を話し合った後、俺たちはそれぞれ武器や防具を装備して集まった。

士官学校(ぜろばん)の四人は先日と同様にマントをはおっている。

というか、装備は先日とほとんど変わらない。

あの時の装備が正式な武装なのだろうか。

なんにせよ堂々とマントとか俺のゲーム脳を刺激する格好だ。

冒険者ってかんじで格好いいと思う……よ?

それぞれのキャラも濃いし。

ヨナは頼りになる前衛兼壁で苦労性、怒ると怖い。

アリスさんはいろいろと不詳な美形だ。

具体的にどこが不詳なのかというと性別とか性別とか後性別も。

聞くタイミングを逃してしまい今更きけるはずもない。

プリーさんは―――「食」で十分だろう。

ミフルに至っては……ってミフルの特徴ってあったかしらん。

よそ見してて瞬殺された一般人(モブ)


「なんか失礼な目線を感じる……」


『気のせいだと思うよ?

えーと……ハッコー?』


「そのネタまだ引っ張ってるのっ?」


『おや? つい昨日のことじゃないか。

まだ、っていうほどじゃないと思うけど』


「ああいうのは一発だから良いんだよ!

というより一発も当たってないから!」


『まぁ、俺が楽しいし』


はい完 全 論 破……出来てないのは秘密だよ。


「なん……だと……?」


リアルで「なん……だと……?」とか初めて聞いたわードン引きだわー。

この会話自体がちょっとしたおふざけだけども。

うん、前言撤回。


『ミフルは突っ込み兼いじられ役だ』


「かってに納得するなよ!」


『とまぁ、そんなことはどうでも良くて。

アリスさんはこの前の武器(レイピア)はどうしたんですか?』


「どうでもいいんかいっ」


ミフルと話しながら四人の格好を見ているうちに違和感を感じた。

それはアリスさんが武器を何も持っていなかったということ。

もう今から出発だというのに忘れ物というのも考えられないし、マントの中に隠すにはレイピアは大きすぎる。

てか隠す理由もない。


「ボクのことが気になりますか?」


からかうようにアリスさんは俺に微笑みかけてくる。

この人が男だったらどうしよう。

なんだか今ときめいちゃった気がする。


『というよりその格好が』


「貴方はこういう格好が好みで?」


ちぃっ、会話が成立しないだと!


「……あまりからかってやるな」


OH! ヨナさんったらナイスガイ!


「ふふっ、面白いですねキミは」


アリスさんは愉快そうに笑ったまま。

また顔に考えがでてたのだろうか。

この癖なおしたいなー。


「ボクのことはお気になさらず。

それに……」


それに?


「しつこい男は嫌われますよ」←ういんく☆ミ


ドキッとしちゃったぞ。

性別不明の相手に、ってか年齢も分からん相手にワタクシ土器(どき)胸胸(むねむね)に―――。


「か・な・た?」


アリスさんの若干挑発的な(あくまで個人的見解デス)に悶々としていた俺に声がかけられた。

決して大声ではないもののその声は俺の脳に氷水をぶっかけたかのように、深く響いた。

声の主は俺のよくしっている(ヒト)

ここで唯一家族と呼べる存在。



―――背後で魔法が形成される。



良く知った声だというのに、その声音は全く聞いたことのないものだ。

ヤバい、背中の冷や汗がやばい。

怖くて振りかえれない。

俺の肩に手がおかれた。



―――まるで獲物を逃がさんとする罠のように。



肩に置かれた手は万力を上回る強さで(エモノ)をきっと逃がさないだろう。

最期の時はもう近い。

せめて居るかどうかもわからない神に祈って……。


「何を―――」



―――告死の鐘が鳴る。



「―――デレデレしているっ!」


『アッーー!』


灼熱が俺を焼いた。

決してそれ以外の悲鳴ではない、って熱い!

いやまじで熱いー!




「……締まらんな」


「良いじゃないですか、面白いですし」


「それ後半が本音ですよね」


「そういうセシルールさんも楽しそうですね」


「もぐもぐ(プリ―さんが微笑みながら大きめの肉を上品に食べている音)」


「ははは、否定はしませんよ」


君たち助けろよ!

ちょ、やだ、なんかマズイ臭いがしてきたーー!

こんがり上手に焼けてきたーーー!





何故か怒り狂ったリンを沈めるためにそれから十分ほどかかった。

その間四人はこっちを眺めているだけだった……。

覚えてろー!


「だ、大丈夫か?」


リンは冷静になるとあたふたして俺の心配をしてきた。


『う、うん大丈夫だよ!』


肩の服が焼けて、結局着替える羽目になったけれど問題ないよ!

……ともかく、リンがなぜ怒ったのかは分からないけど、もう気にしないようにしよう。


「本当に大丈夫か?」


別に心配してくれるリンが可愛いな―とか思ったからではない。

あくまで、演習をスムーズに進めるためだ。

決して他意はない。


『それじゃ出発しよっか』


「ああ」


わざとらしくなってしまったが俺の話題転換にリンは乗ってくれたようだ。

ひと段落ついたのを見計らってかヨナさんがすっと俺たちの前にたつ。


「……では、任務を始める。

目的は「魔王城」の発見。

では往くぞ……!」


「「「「『了解』」」」」


珍しく気合いの入ったヨナの声に、プリ―さんまでも真剣に答えた。





―――作戦開始―――





「では前線まで飛ぶ。準備はいいか?」


「りょ、了解!」


ヨナの質問にミフルが答えた。


『ミフルが何かするの?』


「……さっき話しただろう。

俺たちの探索範囲は現在、通常部隊が戦闘を行っている最前線からだ。

しかしそこまで歩いて行っては半日ほどかかる。

前線まで全員を連れていくことがミフルの最初の仕事だ」


どうやって前線に行くのかも聞き逃してしまってたみたいだ。

失敗失敗☆……じゃなくて真剣に反省しなきゃ。


『連れていく、ってミフルは転移の魔法でも使えるの?』


たしか転移魔法は《光》か《闇》の二つの属性にしか無い、と聞いた気がするけど。


「いや、俺は《地》の属性持ち、「土塊使い(クラッド・ユーザー)」だ」


緊張しているのか俺を見ずにミフルが答えた。

土塊使いってのはゴーレムを使役する《地》の属性持ちを指す言葉だっけ。


「カナタ、今から(ミフル)は魔法を使うのだろう。

邪魔をしない方がいい」


リンの言ってることももっともだ。

皆とミフルから離れた。

俺らをを傍目にみた後、ミフルは地面に膝をついた。

何すんだ?




大地に手を触れ詩を詠む。


「《大地に眠りし黒壇の(とり)よ》」


地面にふれた右手を中心にマナで編まれた設計図が描かれた。

大地に描かれたソレは大きな鳥に見える。


「《仮初の器を()れ》」


平面だった絵は一瞬で立体的に編みなおされ、十メートルほどの鳥の立体図になった。


「《天を奔れ此処に在れ》―――」


短い詩の終わりとともに立体図(イメージ)は現実になる。


「―――《土塊(ゴーレム)黒金鵄(ヤタガラス)》!」




目の前には土でできた三本脚も巨大なカラスが立っていた。

って「カラスが立っていた」!?

あ、ありのままに起こったことを言うぜ。

急にミフルが詠唱始めたからリアクションも取れずに呆けていたら巨大な鳥が目の前に立っていた。

中二的な妄想なんかじゃ決してねぇ、ミフルの詠唱は中二どころじゃなくて……。


『ななな、なんだよこれぇー!?』


驚きが口をついて出てしまったあ!


「ルォォォーーーーン!」


大声を出した俺にそのでっかい鳥が俺を見て鳴いた。


「……」


『……?』


そのままなんとなく俺と鳥は互いに見つめあう。

片方だけ残った赤い瞳はまるで宝石のようだ。

こいつは……もしかして俺に何か伝えようとしてる?


「じゃ、みなさん行きましょうか」


『って空気読んでくれよ!

今俺とこの鳥が見つめあってたじゃんっ?』


「カナタ、ゴーレムと見つめあうとは意味が分からないぞ」


は?

リンは何を言ってるんだ?


「生きてる見たいってのは「土塊使い」としては最高の誉め言葉だよ」


ミフルもだ。

今この鳥の赤い目を……。


『どゆこと……?』


鳥の目は濁った白色だった。

さっきのは気のせいだったとでもいうのだろうか。

あの悲しい赤が。


「カナタは本気で言っているのか?

命がないはずのゴーレムの瞳を見たというのか?」


『……ごめんリン、気のせいだったかも!

さ、皆行こうぜっ!』


「むぅ」


リンには後で詳しく話そう。

とるあえず今は前線に行くことが優先かにゃー。


「……乗ってもいいか?」


「皆さん、乗ってください」


質問したヨナにミフルが答えると、鳥が片方の羽を使って背に乗れと言わんばかりに道を作った。

さてと、細かいことは気にせずに空の旅に洒落こむとしよう。

ご覧いただきありがとうございます。


やっとやっと彼方達の演習が始まりました。

こっからは戦闘がある……かもです。


詠唱いたーい。


更新が遅くなっておりますが、また来て下さることを祈って。

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