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第17話 「招待と正体」

セクハラ、ダメ、ゼッタイ。

昼休み。

それは午前中の授業から解放された学生諸君にとっての憩いの時間だ。

友人と他愛もないことで話し合っている人がいたり、提出が差し迫った人が居たり。

その過ごし方は人それぞれ。

まさに千差万別。

だから上級生が下級生を校舎裏に呼び出すってのも間違っちゃいないだろう。

そしてその逆も然り。


『んで、どしたの?ルリア』


「まずは、いきなりお呼び付けしたことを謝らせて下さいまし」


『いや前置きはいいから』


学食にリンとティーちゃんを待たせているため、早く用事を教えてくれ。

いきなり九回生の教室に入って来たルリアに教室は騒然となった。

そりゃ、高校生の教室に小学生の子が入ってきたらみなさん不思議に思うだろう。

そのまま、無理やり引きづられるようにしてここまで来たという次第である。


昨日はリンと契約を結ぶだとかそんなこともあり忙しかった。

なので今日にでもルリアの調子でも伺おうと思っていたのだが。


「私の騎士になりませんか?」


……予想の斜め上を行きやがった。

この前と同じこの伝説の木(命名俺)の下。

この木が俺になんか恨みでもあんのか?


『……』


「校長先生から四日前の誘拐事件の件、聞きましたわ。

私はそれを聞いて大変感動しまして」


だからってなぜ騎士に?

やはり小学生の考えてることは分からん。

む、小学生というより女の考えてることか。


『えーと、やだ』


「なぁっ?お、王国の騎士になるという名誉を蹴ると仰るのですか?」


『ああ。俺はそのためにこの世界にいるわけじゃないからね。

それに、君の騎士になりたいやつらは君の周りにいると思うよ?』


「そう、ですか。

では、せめてもの礼として今度自宅にご招待させていただけないでしょうか?」


ちゃんと、引き下がれるとは。

俺よりもずいぶんと幼いのに大人っぽいな。

将来はいい女になると思うぜ(セクハラ)。


『それは良いけど。当然、招待されるのは俺だけじゃないだろ?』


「ええ。もう一人の方も当然ですわ」


『じゃあ、人を待たせてるからもう行くな?』


「それではまた後ほど」





『―――ということがあったんだ。リンも一緒に行く?』


「なんだかずるーい。私も行くー」


『ティーはなにも関係ないでしょうが』


タナトスさんは現在、ティーちゃんのペンダントを媒介にして現界してる。

そうすれば魔法を使うことこそ出来ないがこうして会話をすることができる。

そんなことしないでも現界してる俺って…。


「だって、リンちゃんが危険だったのに蚊帳の外だったしー」


リンと俺が”本”契約を結んだことはティーちゃんには伝えた。

それによって、何故か校内での周知の事実となっていた。


「ついにリンちゃんが大人の階段をーーー!」とこんな感じで。


特に公表するつもりもなかったのだが。

にやにやしてる女子の視線がつらいのですよ。


「……なぁ、カナタ」


『どうしたの?笑顔が引きつってるけど』


先の少女(ルリア)の自宅とは…」


『』


さてここで問題です!

お姫様の自宅といったらどこでしょうかっ?


「王城だろう」


『』


「なになにー?王都に行く用事でもあるのー?」


『ティー、パンが落ちるわよ』


「ありがとー、たーちゃん」


『ん』


タナトスさん、たーちゃんでいいんだ。

……問題はソコじゃなくて、王都か。

俺はすっかりこの街の何処かに行くのだと思っていたのに。

そういやルリアはお姫様だったわー。


『ここから王都までどんくらいかかるの?』


「まずはそこか。馬車だと三日ほどだ。

とはいえ王族が用件があるというならば王宮付きの魔術師が転移魔法を用いてくれるだろうが―――」


リンはここで一度言葉を区切った。

言いたいことはまだあるといった様子。

と言うより、そういうことではない、と。


『んんんん。詳しいことは後で聞いてみよう!』


なので俺は思考放棄に走ることにした。

めんどいことからは逃げるに限る。


「……やれやれ、実技が終わるころにカナタのいる教室に私が向うから。

件の少女と一緒に待っていてくれ。

そのときに詳しく話そう」


『やー、リンがいて良かった。ありがとうね』


問題が解決しそうな気がしてきた!


「(むぅ、そんな笑顔をされては怒れないではないか…)」


『どったの?』


「な!なんでもない!」


そう言ってそっぽを向いたリンの顔が赤い。

にやにやとティーちゃんがリンをからかってるみたいだけど。

リンといいルリアといい本当に女の子は何を考えてるんだか。





放課後、ルリアと一緒にリンを待っていた。

このクラスの生徒は(俺を除いて)まだ十にも満たないのでやはり授業が終わると蜘蛛の子を散らすように遊びに帰って行った。

ここでの俺の立ち位置は

「放課後いっつも遊びに来ない子」

なので特に誘われない。


別に寂しくなんかないぞ。


俺は特訓という大切な用事があるからだから。

いや、ほんとに。


『誰に言い訳してんだよ…』


「どうなされましたの?」


『なぁーんにも』


リンたちのクラスは俺らとは少し離れている場所で授業を行っている。

授業内容によってその場所も変わるため、リンはああ言ったのだ。


『それにしても、どうして俺を騎士にしたいと』


「だから先程言ったではないですか。

貴方のような勇敢な者、なかなかおりませんわ。

こんなチャンスを眺めているだけのほうが愚かですわ」


およそこのクラスでここまでしっかりと自分の意見を話せるのはルリアくらいのものだろう。

異世界とはいえ、ガキんちょはガキんちょです。


『にしちゃ、やけに簡単に引き下がったな?』


「我ながら貴方が精霊だということを失念しておりまして。

つまり貴方にはこの世界に生きる明確な召喚者(りゆう)が存在するということ」


失念とか難しい言葉を使う小学生だな。

繰り返し言っとくけどメロウとかはふつーにBAKAですぜ。

タステ曰く、魔法実技以外の授業はずっと寝てるらしい。


そんなんでなれんのか、魔術師。


『わかってくれる分にはありがたいからいいんだけどさ。

どうして、そこまで精霊に理解があるんだ?』


あくまでちょっとした疑問。


「自宅にも何名か仲の良い子がおりまして」


精霊にということだろうか。

話に一区切りついたところで教室のドアが開いた。


「遅くなった」


『大丈夫だよ。

ルリア、この人がこん睡状態だった君を預かってくれた人だよ』


俺と違い、見ず知らずの年上ということでルリアが緊張しているのがわかる。


「はじめまして、では無いのでしょうが。

私がルルリリア=ファイアラーです」


「ああ、私にとっては初めてではないな。

だがこうして元気に話している君に会うのは初めてだ。

はじめまして。リン=ソラルという者だ」


うむ、年は違えど美少女二人そろうと壮観ですなー(セクハラ)。


『違うっ、セクハラなんかじゃ……ルリア、この人も正体を知ってる。

どうせならこの人も招待していいかな?』


「? 勿論ですわ。

この前の件、ありがとうございました」


「いや、君みたいないい子ならいくらでも迷惑をかけてもらってもかまわないよ」


リンさんかっけー。

女子高はいったら「お姉さま」とか呼ばれそうな感じ。

当然、アニメ的な意味で。


「…お姉さまと呼ばせてください!」


「ははは、構わないよ。

ちょうど妹が欲しいと思っていたしな」


ほんとに呼ばれやがった。

黒髪黒目の和風美人と金髪碧眼の姉妹とかどんな深夜アニメだよ。

……実際のところ、この世界では髪色の全く違う家族も珍しくないんだけど。





予想外にリンとルリアが仲良くなったため、招待の件は早々にカタがついた。

「自宅」といっても、この街(スパイア)の中に家があるらしい。

そして日程も今月に迫った演習の後、具体的には十一月に決まった。

話の終わりにリンがルリアを明日の昼食に誘ったので明日から、昼はもっとにぎやかになりそうだ。


「明日の昼食に友達を二人呼んでもよろしいかしら? お姉さま」


「構わないよ、ルルリリア」


『それじゃあ、俺はそろそろ特訓に向かうかな』


「そうか、私も今日は参加させてもらおう」


『了ー解。じゃな、ルリア』


「また」


「また明日、楽しみにしていますわ」





『それがあんなことになるなんて…!』


特訓場所に向かいながらそれっぽく呟いてみる。


「いきなりどうしたんだ?」


『言ってみただけ(キリッ』


「ふふっ、カナタは本当に子どもだな」


そんな笑わなくても…。

そこまで、おもろいのか?


「そんなところを含めて、召喚したのが君で良かったと思うよ」


『…俺も、君で良かったと思ってる』


特訓場所まで、互いにこれ以上語ることはなかった。

そんな必要も感じなかった。

ご覧になってくれた方、お気に入り登録をしてくださっている方、ありがとうございます。


演習が差し迫っています。作品内的に。

そろそろ内容を詳しく考えねばなるまい……!おい


またのお越しをお待ちしております。それでは。

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