第3話 二度目の断罪
第3話となります。
誤字脱字のご指摘などお待ちしております。
王都へ護送された私はすぐに牢へ入れられた。
私が入れられた牢は王城の地下にある貴族用の牢だった。
そこは20年前に私が入れられていた忌まわしき牢だった。
トリスタン様はあえてこの場所に私を入牢させたのだろうか。
私は狭い牢の中でただ瞳を閉じて時間が経つのを待つ。
「どうだ、久々の牢は?」
私の様子を見に来たトリスタン様が衛兵と共に現れた。
「何も話すつもりはありません」
「強がっても無駄だぞ」
「そうですか」
トリスタン様は私の落ち着いた態度が気に入らない様子だった。
「出ろ」
私は衛兵に強引に連れ出される。
「この後、お前には裁きが下される」
「それはどういうことでしょうか?」
すると、トリスタン様が信じられない事を告げてきた。
「アイリーン、お前には王妃様の魔力を奪った嫌疑がかけられている」
それはあまりにありえない話であった。
私は何もしていないのに王家やその関係者は私を疑っている。
「お前が王妃様に呪いをかけたのだろう?」
「私はそのようなことはしておりません」
「言い訳をしても無駄だ」
「トリスタン様、あなたは何を考えているのですか?この前のことを恨んでいるのですか?」
「黙れ!!」
トリスタン様は私の頬を叩いた。
私の体は床に叩き付けられる。
頬に痛みが走る。
「お前は所詮、悪役令嬢だ」
「わかっております」
「なんだと?」
私はトリスタン様を睨みつける。
「私は自分が悪役令嬢だと思っております。否定もしません。ですが、今回の件はまったく身に覚えのないことです」
「それはどうかな。我々は多くの証拠を掴んでいる。それと共犯者の存在も確認している」
「フェルテスさんは関係ありません!」
私は大声で叫ぶ。
「何を焦っている?心配しなくも大丈夫だ。お前を断罪した後に後を追わせてやる」
トリスタン様は私に唾を吐きかけると部屋から出ていった。
「・・・フェルテスさん」
私はその場で泣き崩れた。
私が悪役令嬢であるがために、フェルテスさんを巻き込んでしまった。
私はこの現状に対して後悔しかなかった。
◇
私は拝謁の間に案内された。
そこには懐かしい顔があった。
王になったユステリア様と王妃になったレティオール様がいた。
二人とも私同様に老いを重ねていた。
その隣にはトリスタン様がいた。
昨日の態度が嘘のように王の側近として佇んでいた。
私は衛兵に強引に突き飛ばされるとユステリア様たちの前に無理やり移動させられた。
私は両膝を床について頭を下げる。
「膝折礼ができなくなったのか?」
「いえ、私はシスターです。王に対して膝折礼などできようはずもありません」
私の言葉にユステリア様とレティオール様が目を合わせる。
私の態度が予想つかなかったのだろうか。
「久しいな、アイリーン。何年振りになるか?」
「今年で20年でございます」
「その様子、変わりないようだな」
「私は罪人です。日々、罪と向き合う日々を死ぬまで続けるのみです」
「それは殊勲なことだ。だが、お前はまた過ちを犯した」
「それは私がレティオール様に呪いをかけたと言うお話でしょうか?」
「そうだ。身に覚えがあるようだな」
「トリスタン様より聞いております。ですが私は何もやっておりません」
「では、トリスタンの話は嘘だというのか?」
「はい」
私はユステリア様を見つめる。
「王よ」
トリスタン様がユステリア様に声をかける。
「私が調べましたところ、アイリーンはガニメデにて治癒の力を使っておりました。その力は本来、聖女しか持ちえないものであります」
「つまり、アイリーンが呪いによって得た力だと申すのだな」
「はい」
「トリスタンがそう言っておるが、アイリーンよ、反論はあるか?」
「ございます」
私はトリスタン様を見ながら話を始める。
私は何もしていない。
ならば抵抗するのみだ。
「私は10年前よりガニメデの地にいた老医師、我が師の元で医学を学んでおりました。また、治癒の力も教えて頂いておりました。我が師は隣国カルタゴ出身で治癒の力を得る方法を知っており私はその方法を学ぶことで治癒の力を得ることができました」
「王、それは無理でございます。王もご存じの通り、我が国では神の信託により選ばれた聖女のみが治癒の力を得るのです。それを医学の勉強で治癒の力が学べるとはありえません。まさにそれこそが嘘でございます」
「トリスタン様、何故そこまで断言できるのですか?」
「アイリーンよ、何度も言うがこの国では治癒の力は聖女にしか持ちえないものである。それを悪役令嬢であるお前が手にするのは不可能だ。何らかの方法で手にしたとしか考えられない。なによりそのハーネスリングには呪いの効果があると考えられます」
トリスタン様が私の左手首につけられたハーネスリングを指差す。
「これは私の大切な人より戴いたものです。呪いを司るものではありません」
「では、調べさせて頂いても良いな?あの男もお前の仲間であろうしな」
やはり、トリスタン様はフェルテスさんを恨んでいた。
私を断罪した後、フェルテスさんを探し出すつもりだ。
トリスタン様は卑怯だ。
そうやって何が何でも私とフェルテスさんを処罰したいのだ。
そんなことは許されない。
「それもお断りします」
「ほう、それは何故か?」
「これは私の想い人から頂いたものです。誰にも触れてもらいたくありません」
「そんな言い訳が通用すると思うか?」
「事実です」
「構わん。取り上げよ!!」
衛兵たちが私からハーネスリングを取り上げようとする。
「やめて!!」
私は抵抗する。
だが、男の力には勝てない。
ハーネスリングは衛兵たちに有無も言わさず奪われた。
衛兵から受け取ったトリスタン様はハーネスリングを確認しながら笑みを浮かべていた。
「このリングは証拠となります。これで王妃様の呪いを解除できるでしょう」
「アイリーン、残念だ」
ユステリア様も同調する。
レティオール様も私を哀れみの目で見つめている。
「お前は二度も過ちを犯した。覚悟はできているな?」
「元より覚悟はしております。ですが、私は何もしておりません」
「まだ言うか」
トリスタン様は私に歩み寄る。
また、昨日のように私を叩くつもりなのだろう。
「お前が王妃様の魔力を奪った。お前が治癒の力を得ることは無理なのだ」
「それはこの国のみの考えです」
「なに?」
「何度でも言いましょう。隣国であるカルタゴでは治癒の力を修行で得ることができます。老医師はカルタゴ出身であり、私は治癒の力を教えて頂いたのです」
「黙れ!!」
トリスタン様が叫ぶと私はまた頬を叩かれた。
痛みが走る中、私は顔を上げるとトリスタン様を睨む。
こんな理不尽な仕打ちに負けるつもりはない。
「お前がそのような力があると言うのなら、王妃様の力を奪ったとしか考えられぬ!」
「それは偏見でございます。私は確かに過去に罪を犯しました。今でもその罪に後悔の念しかございません。ですが、私が得た医学や治癒の力は紛れもないものでございます。トリスタン様が未だに私を許せないのはわかっております。その上で申し上げます。私は自力でこの力を得ました。過去の罪を償うため多くの人々を救うことが私のすべてでございます」
「そのような戯れ言を申すとは・・・まさに悪役令嬢。王よ、今すぐこの者を処罰しましょう!今こそ彼女を断罪し、王妃様の力を取り戻すのです!」
「うむ、人はそう変わらないと申すしな。衛兵、この者を・・・」
その時、拝謁の間に誰かが入ってきた。
それはユステリア様の家宰だった。
「王様!!」
「どうした?」
「カ、カルタゴより使者が参っております。アイリーン殿の件で至急お話があると」
「アイリーンのことだと?」
ユステリア様が私に目を移す。
カルタゴ国が私を名指しで使者を送ってきたことが信じられないようだった。
それは隣にいるレティオール様やトリスタン様も同じだった。
「まずはこの手紙を」
家宰はユステリア様に手紙を渡す。
「紛れもない。カルタゴの蝋印だ・・・」
ユステリア様はすぐに封を開ける。
そして中を確認すると絶句した。
「これは・・・なんということだ。急ぎ、使者をここに案内せよ」
「はっ!!」
家宰は急いで拝謁の間を出て行った。
「何があったのだ?」
トリスタン様も戸惑いを隠せないでいる。
しばらくの沈黙の後、カルタゴ国の使者が現れた。
その姿を確認した私は思わず声をあげた。
「フェルテスさん!!」
そう、私の前に現れたのはフェルテスさんだった。




