第032話 滅びた世界に転移したおっさんは再生する、のかもしれない
エグゼ様が賢者の石を使って空から暗雲を払ったことで、世界に一時の平和が訪れたらしい。
おっさんはしばらく見てなかった晴れた空を仰ぐよう丘に立っている。
隣に五号がいつの間にか突っ立っていて。
「さぁ、これで後は才蔵様の子供を授かるだけだな」
五号もファンタジー大戦では活躍してくれたらしいが、それとこれとでは話が別。
「褒美を取らせてくれないんですか!? 何故ですか!?」
「おっさんには妻子がいるからだ! そこまでしがみつくのならこうしよう」
「なんでしょうか?」
「五号にはいずれ」
「いずれ?」
「おっさんによく似たホムンクルスを与える!」
「……才蔵様に似たつがいのホムンクルス、あり、いやなし、え、でも、うん」
などという陳腐なやり取りはあったけど。
その後、吸血鬼の支配地は急激に縮小し。
元々人間で、吸血鬼になっていた人たちは西側から東のエルドラドに誘導され目指した。
二号や三号、四号に六号が誘導人員となって彼らを助けてくれたようだ。
エルドラドで起こっていた反乱も納まったようだ。
ドワーフの長老は腕を骨折して病院のベッドで寝ていた。
お見舞いに駆け付けると、褒賞の言葉を貰う。
「おう、今回の立役者様じゃねーか」
「大げさな、今回の主役は賢者様ですし、あこれお見舞いの花です」
一緒にお見舞いに来たロイドは長老に言わなきゃいけないことがあったようだ。
「長老、すみませんでした!」
「……聞いてるよ聖剣は賢者の石として使われたんだろ?」
「長老の息子さんが命を賭して持ち帰ったものなのに、俺の一存で譲りました」
「その話、息子に聞かせてやらないとな。喜ぶか、それとも意外と怒るのか」
ははは、その息子さんとは面識ないけど、ここは笑っておこう。
笑っていると何故か長老とロイドはおっさんを睨む。
「お邪魔なようなのでおっさんはこれで帰ります。ロイド、落ち着いたら連絡くれ。じゃな」
退散退散っと。
おっさんが病室から去ると、長老とロイドの笑い声が聞こえた気がした。
その後、エルフの嫁シーラと、愛娘のミリアを捕まえて。
おっさん達はエルドラドの安全かつ最短の入口から外へと抜けた。
四駆の自動車を出して、二人を乗せて家に帰る。
「今回のタケノコ掘りはすごかったな」
隣に乗っていたシーラが冷や汗を流して言う。
「今回の件に関しては、タケノコ掘りのくだりは含まれないんじゃないかな」
「ミリアはタケノコ掘り面白かったよな?」
ミリアは車窓から暗雲がなくなった空を見上げつつ、わっるい笑みを浮かべていた。
「それなりに面白かったよ」
だよねぇー、じゃあ帰ろうか、我が家に。
ボタンを押してエンジン始動、ハンドルを握り前後に障害物なし。
アクセルクラッチに足を伸ばして、発進!
ミリアは我が家に帰る最中、わっるい顔してこう言っていた。
「またやろうよ、タケノコ掘り」
「やらん! ぜぇーったいやらんからな!」
それよりも、これから忙しくなるだろうな。
先に街に帰還した五号によると、剣闘士の仲間がもう街に着いているそうだ。
加えて一号達が新しい人を街に誘導している。
「これからおっさん達の街に急激に人が増えるのが予想される」
ミリアはわっるい顔して。
「どいつ使って遊ぼうかな」
と言い、おっさん早くもミリアの将来が不安になった。
嫁のシーラは気を取り直させるよう、話を続けさせた。
「街に急激に人が増えたら、どうなると思う?」
「ぶっちゃけわからん! もしかしたらトラブルの連続かもしれん」
「そうならないよう頑張りましょうね、二人とも」
世界の再生、おっさんは最初、それを使命だと思っていた。
うだつのあがらないサラリーマンが手に入れた、人生の課題だと。
けど紆余曲折あって、今では少し考えを改めている。
世界の再生はおっさんの使命じゃなく。
この世界にいる人全員の使命だったのだと思う。
おっさんは割と利口だからね、一人で何もかも背負ったりしないの。
先ずはおっさん、家族になってくれた二人にそのことを打ち明けた。
シーラは美しい相貌をほころばせて笑い。
ミリアはわっるい顔で「いいだろう」と言う。
こんな家族を持てたことが最大級の幸せで。
二人を家族に迎え入れられた理由は、おっさんのスキル【クラフト】のおかげだった。
こうして滅びた世界に転移してしまったおっさんは。
スキル【クラフト】を使って異世界を再生する。
のかも、しれない。
《第一部 了》
今作ですが、この話を以て一旦更新を止める運びとなっております。
今書き溜めしているものですと、第二部で主人公のおっさんと、その家族である二人の大団円を予定しております。読者の皆様をお待たせする形になりますが、長い目で応援してくださるとこれ幸いで御座います。
それでは、第二部の【指輪物語編】で再びお会いしましょう。




