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第019話 何でも屋


 千年祭前日。


 ロイドは今日のことを争奪戦と言っていた。


 なんでも千年祭の出し物は中央部にある商業区以外は各人で店舗設営して、派手な事件起こさない限り基本的に好き勝手やって進行していくものらしい。


 いわば花見での陣取り合戦みたいなものね、了解。


 前日、ロイドはあらかじめ目をつけていた立地があるらしく。


 ホムンクルスが0時になると同時にその場所を獲っていた。


 やるね。おっさんの称賛に五号はサムズアップする。


「愛の力です」

「……五号、おっさんからアドバイスしよう」

「なんでしょう?」

「お前の愛は執拗で重いと思う人が大半だから、気を付けた方がいい」

「がーん」


 一歩間違えばストーカーになるだろう。


 それでもここを奪取した功績はでかい。


 エルドラドの中央区の周りは円環道路で仕切られてて。


 おっさん達が獲った場所は円環道路に面する三又に伸びた道の中角だ。

 このポイントは「激熱だぜ」とロイドはたいそう喜んでいた。


 遅れてやって来たドワーフが「チ、素人が一丁前に」と負け犬の遠吠えしていた。


 ロイドはそういったドワーフへの気遣いも欠かさず、粗品を渡していたよ


「四号、ああいう所も勉強になりそうだな」

「そ、そうですね」

「四号もロイドを見習って、周囲の店に粗品渡してきたらどうだ?」

「ど、どれがいいかなぁ……これなんかどうだと思われますか?」

「気持ちさえこもってればなんだっていいって」


 おっさんに背中を押されて四号は隣の露店に向かった。

 数舜後、隣の露店から悲鳴があがり、四号が出戻って来た。


 ロイドは鬼気迫った様子で四号をにらみつけていた。


「余計な仕事増やすな」

「すみませんすみませんすみません!」


 なんだろう、熱意がありあまってるのかな四号は。

 と好意的に解釈している場合じゃなく、おっさんも仕事しないと。


 おっさん、千年祭では基本的に裏方作業だけど。


 ロイドに融通してもらい、個人店も出すことにした。


 その設営をしようとすると、六号が隣で同じく設営している。


「六号も何かするつもりなのか?」


 というと、六号は花のように頬を染めて、静々と答える。


「はい、悩める乙女たちの相談に乗ろうと思いまして」

「……恋愛相談所?」

「はい、ふつつかですが、頑張りたいと思います」


 かぁー! 乙女しちゃってんねぇ!

 でも、確かシーラは六号のことをスピリチュアルな力があるって評価してたな。


 なら適材適所、なのかな?


 今のところ六号と五号には街で漁猟を担当してもらってるけど、考え直そう。


 他にも三号も店を出すつもりでいるようだ。

 おっさんは当然のように話を聞きに行った。


 三号の店は花屋をやるらしく、みんな自慢の可愛い子達ばかりですと説明。


「意外だな、普段はスケベなことしか言わないのに」

「ご、誤解です。私はただ、花のおしべとめしべの」

「あ、それ以上言わなくて結構です」


 四号はロイドの下働きとして従事するらしいし。


 二号と五号は裏方に徹するようだ。


 二人は何故かロイドからもらった武器をヒュンヒュンと振り回していた。


 自己鍛錬のつもりなのだろうか?


「二号は双剣で、五号の武器はなんだ?」

「私のは暗器というらしく、変幻自在に武器を使いこなす器用さを買われました」

「ふーん、似合ってるな。でも店前で振り回すなよ」


 というと、二号は汗をぬぐって。


「ロイド様からの依頼なのです、店前でこうしていてくれと頼まれました」


 ど、どうして?


「私達は他のドワーフからよく思われてないらしく、何かある前にこうしてけん制しておいてくれと」


 な、なるほど……おっさん達は種族が違うもんな。

 ドワーフの千年祭で、人間が大活躍するのはつまらないのだろう。


 それを見越して先手を打つロイドくんもやりますねぇ。


 五号はおっさんをじっと見つめている。


「何か?」

「才蔵様のお店はどういったものなのでしょうか?」


 二号はおっさんが設営した店を遠巻きに見て。


「何でも屋? で御座いますか」


 五号が再度おっさんに問うんだ。


「何でも屋とは何をするものなのでしょうか?」

「書いてある通りだよ、基本はなんでもする」


 あ、でも、五号が考えているみたいな邪な内容は無理。

 というと、五号は手にしていた暗器を地面に落としていた。


「期待、してたのに……!」


 一体何を期待してたいのだろうか。


 それはさておき、おっさんの個人店は何でも屋だ。


 例えば掃除機の使い方がわからない場合は見本となって教えるし。

 とにかく困ったことがあれば聞いて、出来うる範囲で応えていく。


 それが何でも屋だ。

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