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第014話 工場の過ぎ去った思い出


 ロイドとの商談が弾んでいると、コネクトロ(おっさんが作った通信機器)にシーラから連絡が入った。


『才蔵さんですか? 今どちらにいるので?』

「えっと、ロイドっていうドワーフの工場」


 シーラがそのことを伝えると、何かを伝令されている。


『えっと、勝手に動かないでくださいませんか? 皆さん困惑されてます』

「ごめんごめん、五日後には帰れそうだから」


 シーラが再度そのことを伝えると、お嬢様口調で怒る声がした。


『五日後ですか? 何か理由がおありで……?』

「うん、おっさんが今抱えている難問が解決しそうなんだ」

『そうですか……ならその様に伝えておきます』


 その後、シーラはくれぐれも無茶はしないようにと言い、通信を切る。


 徹頭徹尾、シーラの後ろでお嬢様がブチギレていたが、よしなに。


「さてと」

「さてと、じゃありません才蔵様」


 うお!? 聞き覚えのある声がしたと思えば、背後に五号がいた。


 五号――紫色の精緻なショートカットと、アケビ色した綺麗な瞳が特徴のホムンクルス。


 ちょっと中性的だけど、一応女の子。


「いつの間にいたんだ」

「私は最初からおりました、それよりも派手な行動はお控えください」


 く、くそう。


 五号は影が薄い能力を持っているらしく、おっさんは相談されたことがある。


 その時おっさんは、逆手にとって特技にすればいいと答えたらこれだ。


 五号はおっさんの反応をうかがって得意気な表情を取ると。


「直に一号と二号もやって来るそうですよ」

「は! だからなに!? 一号も二号もお前にも、手伝ってもらうよ!」


 おっさんは膝をがくがくと震わせて、五号に迫った。


「おっさんとお前は共犯だ、だからな!」

「……それで、構いませんが?」

「頬染めるな、おっさんにはすでに妻子がいる」

「二番目で構いません」


 恐ろしい事態になる前に話題を変えよう。

 おっさんは踵をくるっと返し、五号に背を向けた。


「おっさんはこれから一念発起する」

「頼もしいです」


「そのための別行動だったんだ」

「そこまでお考えとは」


「だから!」

「だから?」


 おっさんを誘惑するように引っ付くのはやめて!


 一号と二号が駆け付けた時、おっさん、穢されそうだった。


 一号がその光景を見て不思議そうにしている。


「五号、主である才蔵様に何をしたんだ?」

「ちょっと手ほどきをしてもらっていた所だ、気にするな一号」


 黒髪のツインテールを持った二号は口をあんぐりと開いて硬直している。


「才蔵様、まさかこのために私達を作ったのですか?」

「そんなんじゃないよ! 二人とも理解して!」


 おっさんの手に嵌められた手錠を見てすべて察してよ!


 二人は何かを察し、おっさんから五号を引きはがしてくれた。


 五号は二人にズルズルと引っ張られて涙目だったよ。


「愛って、儚いものなのですね」


 おっさん、ホムンクルス達の急激な変貌にびっくりだよ。


 五号に変わるようにロイドがやって来た。


「大変、だったな」

「まぁな、それよりも三日後のお祭りの話を詰めよう」

「お、おう」


 そもそも三日後のお祭りってどんな内容なの?


 尋ねると、ロイドはお茶を出しつつ説明してくれた。


「三日後のお祭りは千年祭という名目だよ。エルドラドが出来た千年の節目の行事、今年で二千年目になる。本来だったら魔王を討ち取った英雄達の凱旋を祝う予定だったらしいけどな」


 ふーん。


「でも、魔王は死んだんだろ? ならゼルエルやアネッタを祝えばいいんじゃないか?」

「おっさんの言う通り、魔王は死んだらしい」


 ロイドはおっさんと目を合わせたまま、だが、と説明を続ける。


「魔王の軍勢と、英雄が率いた人類の軍勢の聖戦はこちらの敗北で終わった。魔王は討ち取れても、他は全滅さ。魔王を討ち取ることができたのは英雄が機転を働かせたから」


 聖戦後、魔王を失った敵勢力は統率に欠けた。


 中でも圧倒的な力を誇示していたのが吸血鬼の勢力で。


 吸血鬼は自身の弱点である太陽を、暗雲を掛けることによって封じていた。


 そうすることで吸血鬼は不老不死となり、残った人類を生贄としている。


 賢者エグゼの目的は吸血鬼の勢力を潰し、囚われている人類を解放することだった。


「聖戦の時にはさ」


 話に興が乗り始めたのか、ロイドは表情を活気づかせる。


「俺の工場で生産された武器が兵士達に愛用されてたんだ。表の看板にも掲げてあるユニコーンのエンブレムをつけた武器がこう、たくさんの兵士達が手にしている光景は圧巻だったんだぜ?」


「おお、それはロマンがあるな」


「ああ、十年前のことを今でも思い出すよ……嫌なことも色々あったけど」


 まぁ、人生につきものだよな、そこら辺の浮き沈みは。


 おっさんはロイドの肩を叩き、和ませた空気を漂わせる。


「武器の製造はもうしないのか?」


「そうだな、親父が死んじまったし、何より買い手がもういねぇ」


「ふむふむ、まぁ話はわかった。後は三日後のお祭り次第だな」


 ならば全力でお祭りを楽しみ、そして盛り上げよう!


 幸いなことにおっさんはこの前家族でお祭りを開いた経験ありです!



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