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突然の婚約者

 仕方ない、と誘われるままに、ルトと食事へ。


「ブリズニツなら戻るついでで案内してやっても良いけど?」


 そう、ルトは言った。


「じゃ、同行人が良いと言ったらそうしようかな」

「目的地は?」

「セイール、それと、オルレアン」


 まずはあの港町へ。

 そして、北上してオルレアンまで戻ろうと思う。

 そこで、あの商人にヨルチの墓の場所を聞く。

 知らないなら戻って別れた所に花を供える。


 そんなつもりだ。


「あぁー、大体一緒だなぁ。

 セイールからオルレアンへは汽車のつもりだったか?

 今、運行してないけど」

「あ、そうなんですか」

「途中の線路が崩れて今、絶賛復興中」

「へー。そうなんですか」


 知ってる。

 でも、悪いのは指示したジェルメーヌと、唆されたフルグレイ。

 俺は、一切悪く無い。


「それで、人探しってどんな奴を探してるんだ?」

「知り合いの、恐ろしく強い人」

「腕っぷしが?」


 俺の答えに、ルトの顔に興味がありありと浮かぶ。


「それは、オレも紹介して欲しいな」

「何で?」

「話を聞きたい。強さとは何か。どうすれば強くなれるか、とかとか」

「ふーん。

 ただ、俺も半年程前にそこに居たと言う噂しか知らないから。

 この山を越えて行ったと言うくらいしか」


 俺が半年前にブリズニツにいた事はひとまず伏せよう。


「半年前のセイール?」


 ルトが眉を顰める。


「……何か?」

「……いーや、何でも無い」


 ……話を変えようか。


「そう言えばさっきの依頼って何の依頼?」


 受付嬢が渋い顔をしていた依頼。

 ガイドをしてくれるなら代わりに請けても良いかもしれない。


「あれは、依頼つーか人材募集みたいなもんだ」

「人材募集?」

「そう。ブリズニツで革命が起きた。その辺の事情は知ってるか?」


 問われ、俺は頷く。


「それで、王政は無くなって旧来の騎士団も瓦解寸前。

 それで、代わりになるものが必要になった」

「代わり?」

「そう。生まれ持っての貴族からなる騎士団でも、金のために動く傭兵団でもない。

 自分たちの国を自分たちで守る軍隊だ」

「……軍隊?」

「ただ、まあ、いきなり今までろくに戦ったことの無いような奴らがそれを出来るわけじゃないから。

 当面面倒を見れるような指揮官役が欲しくて、ダメ元でギルドに当たってみたわけ」

「今まで戦ったことの無い……そんな人間を束ねて戦わせる?」

「そう言っても、銃が撃てればそれだけで戦力だぜ?」


 それは、たしかにそうだろう。


「それに、自分たちの国は自分たちで守る。

 それが筋だ。

 今まで自覚なく守られてきた王を断首にしたんだから」


 そこで、ルトは一つ言葉を区切る。


「ブリズニツは、暴力で支配と隷属を取り払った。これからは、自らが血を流して戦わなければならない。

 自由と権利を守るために」


 まるで、宣誓をするように、静かに続けた。


「……これは、まあ知り合いの言葉なんだけど」

「自由と権利……」

「オレはこの国で生まれ育った。

 嫌気がさして、国を飛び出してブリズニツで傭兵まがいのことをしていた。

 そして、革命に参加した。

 その結果、何が起きるのかを考えずに。

 結果、ブリズニツは未だ混乱している。

 それでも彼らは進まなきゃならないんだ。

 何より自分たちのために。

 その手伝いをしている訳だ」


 守られ、搾取される。

 その反対へ。


 ブリズニツの反乱は、革命は、そう言う物だったのか。


「ま、偉そうな事を言える様な出来た人間じゃないけどな。

 俺が革命に参加したって聞いて親父は泡吹いて倒れたし」


 そう言ってルトは笑い声を上げる。


「何で?」

「親父はブリズニツ公爵位で、家は代々のここの統治者」

「ああ……」


 それは、失敗して露見したら戦争か、それとも、一族全員投獄だったんじゃないか?


「お陰でオレは家から追放。

 まあ、その方が気楽で良い。

 何でか、その後のほうがこうやってちょくちょく帰るようにもなった。

 下の事は流石に親父も気になるみたいだ」

「孝行息子だな」

「どこがだよ?」


 俺の言葉に眉間に皺を寄せるルト。

 生きてる内に出来るのが親孝行なんだよ。


「しかし、公爵家ご子息が道案内か。高く付きそうだ」

「元、な。それ、下で言うな」

「言わないよ。婚約者の家に弓を引いたなんて」


 俺の嫌味に、ルトが苦い顔をする。


「それ、知らなかったんだよなぁ。俺が家を飛び出してる間に来た話だ。

 相手の顔も知らないんだから」

「そんなの貴族の間じゃ珍しくないんじゃないの?」

「そりゃ、まあ、そうなんだけど……。オレにも選ぶ権利がある訳だ」


 その言い方は、些かミラーシャに失礼では無いかと思ったが口にはしない。


「今はどこで何をしてるやら」


 隣国で静かにしてるよ。

 半年で随分笑顔が増えた。

 そんな事、教えないけども。

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