イケメン
城の最上階で、魔王は今か今かと待ち構えていた。
愛しのメアリが来るのを…
「ん…??もしかしてあれは…メアリ!?」
何年もたっているがやはり、魔王はメアリを一目見ただけで分かった。
「ふふふ、メアリ…私はずっと待っていたよ…。迎えに行かなければね」
平均男性に比べて随分整った顔に笑みを浮かべた。
「すっ、すみません…誰かいませんか…」
うううう、自分の声の小ささを呪いたい…
なよなよとした声は、当たり前だけど誰にも届いてくれない。
あーぁ。帰りたい…。
凹みそうになる心を、なんとか奮いたたせる。
はぁ、とため息をつきそうになったその時、バサァァァァという大きな音と、風が私を襲った。
な、なにこの風…!
風に抵抗しながら顔をあげて見たのは…
イケメン…
いやいやいやいや、は!?!
なんで…えっっっ?!
めちゃめちゃイケメンやないですかーーーい
誰、え、なんでこんな山の上にイケメンがいるの!?
私が戸惑っていたら、イケメンは笑顔を見せて言った。
「待ってたよ、メアリ…!さぁ、おいで?」
手を差しのべられたので思わず握ろうと…した!
いやいやいや、誰ですかあんた!!!
「誰ですか…。どうして私の名前を?」
「ふふふっ、やっぱり覚えていないか。とりあえず城へ入りなよ?そんな質素なドレスじゃなくて…ちゃんとしたの用意するよ」
質素で悪かったなーーーーーーー!!!!!!
てゆか、本当に誰?
私のことを知ってる…?
「あの…私、このお城の魔王様…?に用があるんです。ごめんなさい。貴方に用はないんです」
ふっ、ここまで言ったら大丈夫だろう。
さーて、どーすっかなぁ。
この人、お城に入りな的なこと言ってたから…お城の人?
そんなことを悶々と考えていたら急にぷっ、という吹き出した音がした。
「ふはははははは…っ!やっぱり…メアリは変わってないね…っくくっ…そんなとこも…大好きだ」
きゅんッッッ
くっ…きゅんとしてしまった…
だってこんなイケメンにこんな笑顔で大好きだって言われたら…そりゃ!ね!
仕方ない…んだよ!!!
「だから貴方は…」
「私がメアリが言う…魔王、だよ。君を呼んだのもこの私だ」
……………は?
このイケメンが?
「…な、なに言ってるんですか…私を呼んだって言っても村の一番の美人、でしょう?私じゃないかもしれないじゃないですか」
「だって、君以外にいないだろう?」
ぐっ、っと言葉につまる私を見て、イケメンは妖艶な笑みを浮かべた。
「ふふ、さぁお城に来てもらおうか?悪くはさせないよ?」
いや…騙されるな私…!!!
立ち止まる私にイケメンはん?と微笑む。
…ほんとの魔王がおっさんだったら、このイケメンについていく方がいい…?
そんな思いも浮かんでくる。
阿呆か、私…
けど、どのみち誰かのとこに行かなきゃならない…
だったら…もう、いっか。
小さく歩き出した私を見て満面の笑みでありがとう、とイケメンは呟いた。
イケメンかよ…