いつもの日常
「ねぇ、可愛いでしょう?」
彼女はにんまりしてふんわりしたワンピースで一回転ふわりと回った。
「ふーん」
俺は興味なさげな相槌をうった。
正直かまっている暇はない。明日は数学のテストだ。赤点は補修で残らなければいけない。
それだけは阻止しなければ。
「ひどいなぁー、ちょっとでも「可愛いよ」とかぁかっこよく言ってくれもいいのにぃ」
女は残念そうにして机に頭をつけた。
ゴン!結構大きめに鳴った。
「…痛ぁ」
柳は頭を抱えて唸った。
「フッ」
距離感を間違えたのだろうか、馬鹿だなぁ、そんなこと考えていたら、彼女はゆらりと顔をこちらに向ける。
「…何笑ってるのぉ」
やばい、声出てたのか。
彼女は俺に思いっきりタックルをした。つもりだった、実際俺は微動だにしなかった。
ただ抱きついているだけに感じるくらいだ。
彼女は力振り絞ったが、動かなかった。
「…ぐぅ、動けー!あ!今こそ私の真の力を見せるとき!」
彼女は何か思い付いたようにして言った。
笑いながら彼女を引っぺがして聞く。
「なんだよ、真の力って」
彼女は自慢げに立ち上がって俺を見下ろす。
「ふふー、教えてしんぜよう!私の真の力を!」
「じゃかじゃかじゃん!」
「究極奥義!!ぶりっこ!」
彼女は手を猫のポーズをして、得意気にこちらを見る。
ゴン!
俺は間髪いれずに拳骨振りかざした。
「あだっ!」
彼女は頭をさすって、爆笑している。
「ふふ、あははは!」
彼女は数分笑い続けてから、呼吸を整えた。
「はぁ、笑いすぎてつかれちゃった」
「それは良かったな」
「膝貸して」
彼女はそう言って俺の膝で気持ち良さそうに眠りに入った。
あれから何時間か立ち、あの子が帰った。
そして、寝る前になって、俺は覚悟を決めた。
明日の朝、のんびり起きて、ご飯を食べて、準備して、家を出る。あの子と会って、登校する。地獄の数学のテストを乗り切り、伝えるんだ!
そうだ!明日こそ伝えよう!
太陽の木漏れ日のようなあの子に
そんなこと考えながら男は布団に横になった。




