ノアル、旅に出る
ビックラとの死闘(?)を終えた翌日。
「この世界は、今、悪の魔法使いたちに支配されているの……」
朝食のパンをかじりながら、リンディが言う。
「ズルっ……悪の魔法使い……? ズルズル」
ノアルは、ソバをすすりながら尋ねた。
「ええ──」
ズルっ……
「あいつらは──」
ズルっ……ズルっ……
「私の友達の──」
ズルっ……
ズルズルっ……
ズルズルズルズル……
「──って、人の話を聞けー!!」
リンディが叫んだ。
「聞いてるわよ……ズルズルっ……」
ノアルは平然と答える。
「ていうか……何でソバがあるの!? ここ異世界でしょ!? ソバなんて、純和風の食べ物が何であるのよ!!」
リンディは全力でツッコんだ。
なお、リンディがなぜソバを知っているのかについては、誰もツッコまなかった。
「オマエ、コロス……ズルズルっ……」
ちっちゃいオジさんも、器用にソバをすすっていた。
◇
「──というわけで、今、この世界は悪の魔法使いたちに支配されているのよ!」
ザッツ雑!!
……説明が雑にまとめられたので、ここで補足しよう!
かつてジャギーの弟子だったエダルが反乱を起こし、ノアール(前作のヒロイン)とジャギーを封印。
エダルは悪の魔法使いたちを従え、帝国を築いていた。
その名も──
『エダル様、素敵でめっちゃ強~い! ファンキーなカーニバルをダンシングだね魔導帝国』
──略して、“エンニバル魔導帝国”。
「そうなのね……。でも、リンディさん、あなたが倒せばいいんじゃないの……?」
ノアルが首をかしげる。
「それが……できないの……」
リンディは悔しそうに拳を握った。
「私たちの魔力は……あいつらに奪われているの。巨大な魔導装置によって……」
唇を噛む。
「今の私たちには、あいつらに対抗できるほどの魔力がない……」
拳を強く握りしめる。
「だから……異世界から“救いの女神”を召喚しようとしたのよ」
「そういえば……その“救いの女神”って?」
「ええ……」
リンディは静かに答えた。
「私の友達──ノアールと旅をした、“オカダ”という女性よ……」
ノアルは考え込む。
(オカダ……? 奇遇ね……お母さんも結婚する前は岡田だったわ……。でも、岡田さんなんて、いっぱいいるし……。もっと珍しい名前だったら分かりやすいのに……プチョマチョゲスとか……)
ノアルは気づく。
(はっ! プチョマチョゲスさんがイケメンだったら、どうしよう……。いきなり『結婚してください』なんて言われたら……。プチョマチョゲス・ノアル……? いや、逆ね……ノアル・プチョマチョゲスよ!!)
ノアルは想像力が豊かだった……。
(あれ……? 何の話だっけ……?)
ノアルは思い出す。
そして──
「私が……私が協力する……」
「え……?」
「私が、この世界を救ってみせる!」
ノアルは胸を張り、堂々と言い放つ。
「チョモランマの名に懸けて!!」
「ふふ……ありがとう……」
リンディは優しく微笑んだ。
「やっぱり、あなた……似ているわ……」
「オマエ、コロス」
こうして──
ノアルとリンディ、そしてちっちゃいオジさんは、世界を救う旅に出るのだった。
◇
説明してなかったでやんすね。
リンディは森の奥の小屋でひっそり暮らしてたんでやんす。(←誰?)
三人(?)が森を歩いていたその時。
ドガーン!!
爆発が起こった。
「な、何!? 何なの、一体……?」
ノアルが叫んだ。
「敵の攻撃よ! 今のは魔法!」
リンディが叫んだ。
「フフフ……僕の魔法を躱すなんて……」
爆発で起こった煙が立ち込める中、人影が現れる。
「だ、誰!?」
リンディが尋ねた。
「フフ……僕の名前は、プチョマチョゲス……」
ドキンっ
(え、本当に現れた……!?)
ノアルの胸が高鳴る。
煙に包まれ、その姿はまだ見えない。
「太陽のような笑顔のお嬢さん……。僕と結婚してください」
(キャー! イケメンっぽいセリフ! どうしよう……ノアル・プチョマチョゲスが誕生しちゃう……!)
煙が晴れる。
そこにいたのは──
ローブをまとったガイコツだった。
ノアル、驚愕。
そして──絶望。
「ノアル、危ない! 《フレイム・ファング》!!」
リンディが魔法を放つも、プチョマチョゲスは、あっさりそれを打ち消す。
「くっ……、足止めにすらならない……」
「おやおや……いけないお嬢さんだね、それじゃあ、今度はこっちからいくよ! 《ファントム・フレイム》!!」
闇の炎が一直線にリンディに迫る。
(ダ、ダメ……避けられない!)
その瞬間。
ぐいん
ドガーン!!
炎が、急激に曲がり、地面で爆発した。
「え……?」
驚くリンディ。
驚くプチョマチョゲス──いや、ガイコツだから、表情分からんわ!
その後も、プチョマチョゲスが魔法を放つも、そのすべてがリンディに当たることはなかった。
「くっ……なぜ……なぜ、僕の魔法が当たらない……」
リンディは思った。
(私……もしかしたら、新たな力に目覚めちゃった……? 大魔導士リンディ爆誕?)
「フフン、それは私の超能力よ!」
ノアルが胸を張る。
「あなたの魔法なんて、私たちには当たらないわ!!」
リンディは思った。
(よ、良かった~。『新たな力に目覚めたのよ!』とか言わなくて……。大恥をかくところだったわ)
「く、そんなはずはない……! 僕の魔法は無敵なんだ!」
プチョマチョゲスは、さっきよりも巨大な炎を放つ。
「ユウコタケシヲスキニナル! お茶の子さいさいささ~い!!」
ノアルは、そう言って超能力で魔法の軌道を変える。
「乙女心を踏みにじった恨み、思い知りなさい!」
軌道を変えた巨大な闇の炎がプチョマチョゲスに直撃。
ボーン!!
(ガイコツだけに笑)
プチョマチョゲスは、空の彼方に吹き飛んでいった。
「ふぅ~、今回も強敵だったわね」
ノアルが言う。
リンディは思った。
(もしかして、この子なら本当に……)
戦闘中、まったく出番がなかったちっちゃいオジさんは、お昼寝をしていた。
「オ……オマエ……コ、ロス……ぐがー」
最後までお読みいただきありがとうございます。
誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。




