第四十五話 噴水修行
「おにいちゃんすごい」
ミコルちゃんに褒められるようになってきた。
ウォーターであれば、ほぼ同じ出力を左右で出すことができるようになってきた。
気を失うほどの修行を繰り返し、やっと基礎体力がついてきた。
正直言って思い出したくない程の修行の毎日だ。
毎日毎日同じことをひたすら繰り返す。
それ自体は、もともと得意であるので、そんなに苦労はなかったが肉体的な負荷が高いと、人間はこうも思考力が落ちるのか、と思う。気を失うのが一番わかり易い。つまり思考力ゼロになってしまうということだ。寝ている間は何も考えられないからだ。
その手前の体力疲労の状態でも朦朧とし、普段の20%ほどの思考力もなくなってしまうだろう。
プログラマーはもともと、その、肉体と精神の乖離を目指しているところはあって、純粋な思考がしたいと考えて、そこに努力を惜しまない。
甘いものの情報にも詳しいし、思考を最大化するための努力をおしまない人たちだ。体育会系はやはり、肉体負荷が最大という特別な状況下にあるので、思考力が弱っても、正しい行動ができるように訓練されてるのだろう、と思った。
どちらが上ということはない。
目的に対して最適化されるのだ。
今回は僕も魔法を使って、ラクスやガルクを守りたいし、大魔導師の塔に行きたいという目標があるからやれる。
苦手だからやらないというのは、あまり賢いことではない。得意なことを活かすのはいいと思うが、完全に避けられるときばかりではない。
「フォッフォッフォ、さて次の修行者わい」
「ほれ、いつものいくぞい」
ジージ師匠は、いつものように岩を上空に投げた。
さっと、ウォーターを左右で岩に向かって放つ。
「これはいつもどおりなのでは?」
「フォッフォ、いつもどおり両手でウォーターをだせとるな」
「ここから、特別メニューじゃ、強弱をつけるのじゃ、強くしたり弱くしたり。一分ごとに」
「なるほど、噴水みたいなことか」
僕は噴水のように水を強く出したり弱く出したりした。
やってみたところ、この訓練はかなり難しい。やっと両手の出力MAXずつでバランスを保てるところ、同じスピードで、弱く、強く、弱くを繰り返さないと行けない。
これが難しい。
プログラムだったら数行でかけるところだ。
for文で、10秒ごとに出力を1下げる。0になったら符号を逆にして
10秒毎に出力を1上げる。これを書くだけだ。
プログラムでいうとこれだけなのだが、実際にはかなり難しい。
1上げるってなんだ、って話が出てくる。
定量化されてない、魔法力をコントロールするのはかなり難しい。
1上げてるつもりが、右手は1.1左手は0.8上げてる、ということが普通に起きて弱い方向に曲がる。
しかし、これはすごく考えられた訓練だ。
つまりこの1.1と0.8の差を視覚化しようという試みなのだ。
この左右差を目で見て覚えて修正しよう
「こ、これはむずかしい」
「頑張るんだよ!おにいちゃん!」




