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第百一話 魔導の塔とヘルハウンド

ゆっくり休んだ僕達は、次の階にやってきた。


ついに16階だ。

長い。長く続くこの魔導の塔。

階を上がる度に強くなる敵。


最後に出てくるであろう魔法使い。

気を引き締めて登ってかないと、いきなりやられる可能性がある。

そう思い辿り着いた16階。


その予感は的中した。

「グルルルル」

黒い姿の狂犬。目が赤く光るモンスター。

いままでの敵とは明らかに違う、狂気を感じられる、その出で立ち。

この階全体に広がるうめき声。


すでにその狂犬は戦闘体制に入っていた。


「ヘルハウンドだな」

ガルクがそうつぶやいた。ヘルハウンド、ブラックドック。イギリスに伝わる不吉な妖精。

ゴーレム達よりはずっと小さいが、引き締まった筋肉、明らかに走る力も飛ぶ力も高そうだ。


「これはかなり強そうだ。」

僕がそう呟くやいなや、飛び出してきたヘルハウンド。

僕が認識した時には、もう僕の懐まで来ていた。

これはマズイ。そう思う間もなく痛みが走る。いままでに感じたことがない激痛だ。


「うああああ」

いきなり飛びかかられた僕は、腕を噛まれていた。

そして、もう思考はできなくなっていた。

ただ叫ぶだけだった。


何が起きたのかも認識することができない。

ただ、痛みだけが、体中を走る。


「がああああ」

混乱する、僕は、噛まれている腕を振り回す。

とれない。痛みが体中を伝播する。

相変わらずだが痛みに弱い。


痛い。痛い。痛い。

思考ができなくなる。

痛みは思考を奪ってしまうものなのか。


いままでは、瞬間的な痛みだけだった。

ここまで続く痛みは初めてだった。


振り払おうと、振り回そうとすると、ヘルハウンドのキバがめり込んできて、さらに痛みが増す。



「こっちよ!!」

なにも出来ない僕とは対照に、冷静なラクスはそう言て、その瞬間ヘルハウンドのしっぽを切り飛ばしていた。

ラクスの鞘を出た瞬間に、尻尾は吹き飛んでいた。

ラクスの抜刀術。


「ギォォォォオオオオ」

ヘルハウンドは、僕の腕に食いついていた口を、離し、ラクスの方に向かった。尻尾に痛覚があるのか分からなかったが、ヘルハウンドの狂おしいほどの怒りは僕ではなくラクスの方に向かった。


「おにいちゃん、大丈夫!?」

ミコルちゃんが走ってこちらに近づいてきた。

かなり心配してくれているようだ。

しかし、なにも言葉を返せなかった。痛みが全てを支配している。


「おにいちゃんじっとしてて」

僕の腕に、触れ。詠唱するミコルちゃん。

ミコルちゃんの腕の暖かさを感じる。


「ヒール」

そう唱えると、僕の左腕が光り出し、傷口が塞がっていく、そして痛みも和らいでいく。やっと思考が出来る程度に痛みが和らいでいた。


「すごい、ありがとう。回復魔法はこんなに効くんだね」

ここまで進んできたが、継続的なダメージはいま考えると初めてだったので、こんなにも効くものだと思っていなかった。


我を忘れるほどの、いきなりの強敵に改めてこの塔の恐ろしさを知った。

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