第六百七十一話
「なあなあ、実習どうだったよ?」
「実習・・・干し肉・・・うっ、頭がっ!」
週明けの士官学校では他のクラスの生徒が数名実習について話を聞きに来ていた。彼らは今週末に実習に行く生徒だろう。
事前に情報を得られる分だけうちのクラスより上手く立ち回れるので不公平ではあるが、そもそもこの世で公平な事の方が少ないのだ。
産まれた時点で親や家に違いがあるのだから、その時点で既に公平ではない。公平に拘るのではなく、現状からどうやって盛り返すかが大事だと俺は思う。
「兎に角喉が渇く。荷物を持って歩かされるだけならまだしも、唯一の食料が塩辛い干し肉だけだぞ。食べざるを得ないのに、食べると喉が渇くんだ」
「じゃあ、水を多く持っていくようにするべきか」
「それが許可されるかどうかだな。それに、水を増やせば荷物が重くなる。体力をより消耗するぞ」
情報収集に来る生徒が熱心なのは当然として、質問された生徒も真面目に答えて共に対策を練っている。
「あれ、話してしまって大丈夫なんですかね?」
「事前に情報収集が出来るか、それを元に対策を考えられるかも評価に入るのだろうな」
うちの連中は事前に情報収集は出来ないが、協力して対策を練る事が出来るかも評価されるのではないかと思う。
正式に任官した後、他部署の者だからと連携出来ないのでは困るのだ。情報部とか監査部とか、連携出来ない部署は例外だ。
「蛤御門で長州軍は薩摩の守備隊に足止めされた。同じ思想の薩摩を攻撃も出来ず、かと言って他の門に回る時間もない長州軍は動きが取れなくなる」
現在歴史の授業中。日本史も軍事行動の焦点を当てた授業となっていて、前世のような表面だけ流す物ではないので面白い。
「そこに知らせを受けた新選組が駆けつけた。正面を主戦力で拘束し、背後から遊撃戦力で急襲する。企図された連携ではなかったが、教科書通りの挟撃により長州軍は敗走した訳だ」
新選組は会津藩のお抱えだった。戊辰戦争で会津攻めが苛烈だったのは、新選組への恨みからだったのかな?なんて思ってみたり。
「来月から個別に実習に出されるそうですが、中尉殿ならばどこに派遣されても成果を出しそうですね」
「俺は情報部に配属が決まっている・・・と言うよりもう配属されているからな。適性を見る必要は無いから情報部の業務に就く事になるそうだ」
「じゃあ、派遣先で中尉とご一緒に、とはならないのですね」
昼休み、辻谷君との世間話を楽しむ。彼は後方勤務希望だった筈だ。実働部隊の補助のような前線に近い部署から免れて欲しいが、こればかりは人事の判断に委ねるしかない。
「あれを何泊も続けるなんて、それだけで尊敬します。中尉殿、頑張って下さい!」
「あ、あはははは。ありがとう、頑張って任務を熟してくるよ」
言えない、迷い家さんにより下手なリゾート地よりも快適な環境で休めるなんて口が裂けても言えない。もしも辻谷君が迷い家の事を知ったら、どんな反応をするんだろうなぁ。




