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第六百六十五話

「う、うわぁ、来るっ!」


「鮮血の螺旋突き!」


 迫りくる突撃豚に繰り出された捻りを加えた突きが刺さり、突撃豚は魔石へと変化した。豚を処理した兵士は豚に驚きへたり込んでいた生徒に手を差し伸べる。


「しっかりしろ、こんな所で恐れていてはダンジョンなんて潜れないぞ」


「す、好きで潜る訳じゃありませんよ。こんな所来たくなかった!」


 後方勤務志望だろう生徒は支えられて立ち上がりながらも不満をぶちまけた。それを聞いた他の生徒は同調する者と呆れる者に分かれた。


「だよなぁ。現場を知れと言われても、何の役に立つんだよ」


「それなら軍人ではなく官僚目指せばって話だよな」


「そう言うなよ。官僚になれる程頭良く無かったから軍ならいけると思ったんだろ」


 生徒間に決して埋まらない溝が構築されそうな雰囲気だ。普通の高校ならば懸念すべき事態かもしれないが、士官学校では話が違う。


 後方勤務志望なんて我儘は通らない。人事部から間引き部隊配属と言われれば本人の意思はどうあれ従うしかないのだ。


「中尉殿、武器系スキルにああいう技を授かる効果ってありましたっけ?」


「・・・そこは気付いても気付かないふりをするのが優しさだよ」


 この世界、スキルは授かっても必殺技を授かるなんて事は無い。前世のRPGのように強力な技を使えるようになるなんて事は無いのだ。


 一階層を抜け、二階層に着いた所で休憩になった。座り込み水を飲む生徒が散見される。そこに護衛の兵士から叱咤の声が響いた。


「諸君らが担いでいる荷物は、諸君ら自身がダンジョンから出るまで飲食する物だ。いつどれだけ消費するかは諸君らの自由だが、無くなれば追加される事は無い。それを弁えるように!」


 水をガブ飲みしていた生徒が慌てて飲むのを止めてペットボトルをリュックサックにしまう。しかしその残量は目に見えて少なくなっており、他に数本あるとはいえ足りるかどうかは微妙と思われた。


「水も自由に飲めないなんて・・・」


「ならば持ち込む量を増やせば良かったか?水の重さは干し肉や乾パンの比じゃないぞ」


 不平を述べた生徒に、近くにいた兵士が正論を叩きつけた。水を増やすという事は運ぶ重量が増えるという事だ。


 この重さでも音を上げているのに、背負う荷物が更に重くなるとなれば体力の消耗は多くなりもっと水を飲みたくなるだろう。


 となれば水の消費が増えるので持ち込む水を増やす事になり、必要な水の量が増えて荷物が重くなりと悪循環から抜け出せなくなる。


「そりゃ、あんたらは手ぶらだから楽だよな。こっちは荷物を持たされてるんだよ」


 言い返されて面白くない生徒は更に言い返した。しかし、毎年この行事に付き合わされているだろう兵士は平然とそれにも反論した。


「じゃあ交換するか?この両手剣は約ニキロの重さがある。モンスターが来たらこれを振って倒すのだが、十キロの荷物を背負って歩くのとどちらが楽だと思うかね?」


 選択を突き付けられた生徒はそれ以上何も言えず、不機嫌さを隠す事もせずにただ歩くのだった。

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― 新着の感想 ―
お気遣いの紳士になる中尉殿(笑)流石にコレ位はマイナス査定まで行かないか?
山登りでもあるよなー そのバーター
>鮮血の螺旋突き ダ○の大○険ってこの世界でも連載されたんですね!
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