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テフラdeダンジョン  作者: 唯のかえる
章題『工事中』
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夢現

『休憩階層 王城牢屋』


 牢屋だらけの『休憩階層』にたどり着いたテフラとハピネス。

 そこで牢屋に閉じ込められた、頬が大きく痩け無精髭だらけの大男と出会った。

 テフラの肩で驚くハピネスによると前回の儀式の生贄の人物で、ニシキ村の村長マクキタラの兄だと判明する。


 テフラを一眼見て、その大男はテフラの父の名を呼び意識を失う。

 牢屋の向こう側で立ちすくむテフラは、その男の解放をするべく牢屋を背中の背負った斧マスターキーでこじ開けるのであった。



 ◇



「ぐ、う……。ゆめ、ではなかったのか……」

「おう、俺はニシキ村で森番リーブの倅テフラ! 急に倒れるからビックリしたぜ」

「リーブ……の息子」


 牢屋をぶち抜き、倒れた男の口に緑色の丸薬を押し込んで無理矢理嚥下させた後、床で安静にさせた。幸いなことに倒れた男には大怪我などはなく、疲労が激しかったところに大きな衝撃を与えてしまい、気絶させてしまったのだろうと判断をする。


 そして、しばらくして男がうめき声を上げてから目を覚ます。

 そこに横に座って休んでいたテフラが笑顔で声をかけたのだった。

 テフラの言葉に起きたばかりで状況が掴めず、男は目を白黒させ名乗り返す。長年言葉を使っていなかったせいか、どこか舌足らずに聞こえる。まぁ口に残った緑色の丸薬の苦さのせいも五割くらいはあるかもしれない。


「……わたしは、ハバキウス」

「んじゃハバキウスのおっさんか!」

「この感じ、口に残るにがみ。丸薬を使ったのか……見ず知らずの私に」

「おう! おっさんの名前は知らないけど、マクキタラさんの名前は知っているしな! にいちゃんなんだろ?」

「……資源は大事にしろ。それとおっさんはやめろ……!」

「お、おう、わかった。ええと、ハバキウスさんだな!」


 ハバキウスと名乗った男はむくり、床に伏せていた身体をゆっくりと起こす。

 人との関わりを立ち、かつての自分と同じ年代の青年におっさん呼びされるのは辛いようだ。まぁおじさんと呼ばれるまでの過程を全てダンジョン内で過ごしたのだから、思うものは人一倍強い様子。


 そんなハバキウスの様子を見守るテフラ。村長のマクキタラも礼儀には厳しい人だった、と背中に汗をかいている。

 その上で、ハピネスがぴょんぴょんしながら首を傾げる。


「えーっと、少年は少年だからでもこの人も少年……? いやもうおじさんだし、青年、中年? 中年は流石に失礼な気がする」

「!?」


 その軽快に喋る青い鳥の存在に気がついた、ハバキウスは驚きながらハピネスをワナワナと指を指す。


「鳥が喋っている。やはり夢……?」


 ハバキウスは混乱している。

 まぁ鳥が喋ったらびっくりするよな、とテフラは慣れきってしまった自分の出会った当初を思い出す。


「夢じゃないって! ハピネス、少しだけじっとしてな?」

「む、失礼。私はハピネス、しがない青い鳥さ!」

「……ということは、ひさしぶりの肉」

「オイシクナイヨ!?」

「悪い、友達なんだ。食べないでくれ……」


 ハバキウスはじゅるりと涎をこぼした。

 何かをテフラの頭の上で唸っていたハピネスが、一瞬の肉判定に飛び上がってテフラのマフラーの中に隠れる。慌てて飛び込んだからか、小さい鳥の足が見えてバタバタしている。

 無精髭だらけの大男が、口元から溢れる涎を拭って目を光らせた。しかし、食べたらダメだと言われてしょんぼりと肩を落とすのだった。



 ◇



 空腹になったハバキウスが立ち上がる。

 ハバキスの身長はテフラより頭一個分高く、頬がこけて痩せて見えるが必要な筋肉が研ぎ澄まされた威圧感のある体であった。


 彼は思う。

 ──また夢を見ている、と。


 あの八本足のボスを倒し、()()()()()()()()()()()()

 百を超え、千を超えて、ついぞ数えるのをやめた。

 それでも、()()()()()()()()


 気が狂う寸前なのかよくありもしない夢を見るのだ。

 初めて見た時は、柄にもなく幼馴染の男リーブが助けに来る夢だった。

 その次は自身の弟が父が。

 その次も次も次も。


 とっくの昔に他人の顔というものを思い出せなくなっていった。


 目の前の灰色の青年の顔を見る。

 いつも見る夢なら、顔にモヤがかかったように見えるのに不思議とはっきりしていた。

 知らない顔。けれど、どこか懐かしさを感じる顔。

 霞みがかった記憶が、僅かに思い起こされる。


「夢か……ククク」


 村にも喋る鳥はいなかったのだし、やはり夢だと思う。

 ふふ、ついに気が狂ってしまったか、と生え散らかした無精髭をさわって笑う。

 もしかしたら今まさにダンジョンに自分は食われていっている最中なのかもしれない。


 しかし、自分の呟きに想像が生み出したテフラという青年は大げさな動作で否定を繰り返す。

 自己分析をするハバキウスは夢じゃないと思いたい自分がついに幻想を産んでしまったと笑い続ける。


「夢じゃないって!」

「クク、ハハハハ!」


 だが、この青い鳥は。


「しょうね、青年……? ええい、中年! 夢じゃないよ!」

「誰が中年か!」

「「ひえっ!?」」


 もう少し結婚もせずにここに囚われ続ける自分の年齢に優しくても良いのではないだろうか。


 ハバキウスは顔を真っ赤にして、自身が生み出したと思い続けるテフラとハピネスに否定を繰り返すのだった。


村長の兄ハバキウスさんでした。夢おじ。

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