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テフラdeダンジョン  作者: 唯のかえる
『幸せを忘れた青い鳥』
29/66

『ダンジョンショップ』

生贄ダンジョン境界4F


 ダンジョン内での浮ついた心をハピネスに注意され、しっかり反省したテフラ。

『魔法の地図』を見て、改めてダンジョンを進むことにした。

 テフラのお目目キラキラになって洞察力が鋭くなる『目に良い薬』は、ハピネスの記憶だと階段を降りるまで続くのでこの階層では罠の警戒をしなくてもすみそうだ。


 気をつけるべきは天井や床の変化があったことで、出現モンスターが変化していないかだと、ハピネスと相談をしてテフラはダンジョン内を進む。

 時折『魔法の地図』でも回避できないようにモンスターが現れるが、鳥籠のモンスターは見かけなかった。もしかしたら、ダッシュアップルンのように中々現れにくいモンスターなのかもしれないと二人は話し合う。


 そして、そんな二人が進む先は──。


「……なぁハピネス」

「なんだい少年?」

「本当に大丈夫なのか? 罠とかじゃないんだよな」

「大丈夫だよ少年。信じたまえ、本当にお店があるのだよ!」


 テフラは『魔法の地図』、まだマッピングが済んでいない場所をトントンと叩くように指差す。

 そこには沢山の青い光点が物凄い量で重なり合っていた。いつか、ニシキ村の実家で見た時のように、アイテムが沢山置かれている場所を表しているのだ。

 そんな『お宝』が大量に設置された場所を指差しながら、テフラが訝しげに呟く。彼は以前、沢のほとりダンジョンの落とし穴に落ちた際の、黄金の広間の罠を疑っているのだ。


 あの黄金から目を離せなくなった経験から、テフラは階段への通り道でもなければ、そこに進むつもりは一切なかった。もしも、浮ついた気分のままであったら何も考えずに飛びついたかも知れないが、叱られたばかりの彼はダンジョンへの警戒を強めているのだ。

 だが、テフラの頭の上に乗るハピネスはそこに進むように提言。

 テフラの知る限りでは御伽話でしかなかったダンジョンのお店、『ダンジョンショップ』があると言う。

 彼女はそこの映像を封じられた部屋の天井の映像で見たことがあったから、絶対に大丈夫と太鼓判を押している。


『魔法の地図』を敵情報に戻し、腕を組んでテフラは唸る。


「前に黄金が大量に設置された時は本当にやばかったからなぁ。一緒にいたもう一人が俺を通路に引っ張ってくれなきゃどうなっていたことか」

「うーむ、そんなに恐ろしいことがあったんだね少年。よし、じゃあこうしよう!」

「?」


 この狭い通路を行き当たりまで行って、曲がり角を曲がれば件の場所だ。

 そこでハピネスが頭からぴょんぴょんと肩に移動してテフラに進言。愛らしく首を傾けてハピネスは嘴を開く。


「少年が私を手のひらで固定して、曲がり角の向こうを見るというのはどうだい? もしも、その『黄金の罠』であれば固定された私は飛び出さないし、異常であったことがわかるだろう?」

「……天才かよ!」

「いや、誰でも思いつくと思うけどね少年……。ま、でも褒められて悪い気はしないかな! えっへん!」


 全然思いつかなかったと、テフラが頷き、言われた通りにハピネスを掴む。

 痛くないように握られてハピネスは曲がり角、その向こうの様子を伺った。そして、大きく頷く。


「大丈夫だ少年。私が見たことある場所だったよ」

「……おう、分かった!」


 テフラはハピネスを引き戻し、優しく自身の肩に移動させてあげる。

 出会って短いながらも、テフラもハピネスのことを信用している。テフラではわからないアイテムの種類や、テフラが忘れそうになったダンジョン内での心構えを教えてくれているのだ。信用しない訳がない。

 浮ついた時の真摯な説教により、ハピネスの命を預かっているという責任感も、テフラの心の中に生み出されているのもある。


 なので、ハピネスの言葉を信じて、テフラは曲がり角を曲がり。


 ──息を呑んだ。


「……本当にダンジョンに店があるんだな」

「ふふん、店の中に行ったらどこかに店主がいると思う。そこで買い物だね、少年っ!」


 狭い通路の先には、絨毯が敷かれショーケースに入ったダンジョンの不思議なアイテムが陳列された場所が広がっていた。

 おのぼりさんのように周囲を見回しながら、テフラは一応警戒をしながら店の中に入る。ハピネスが間違っているとは思っていないが、テフラが死んだらハピネスも死ぬと言われたのが効いているのだ。


 店の中に入ると、


「いらっしゃぁーい」

「うぉお!?」


 テフラの死角、部屋の壁際から声が掛かる。

 驚いて咄嗟に武器を構え、振るいそうに────。


「少年! 待ちたまえ!!」


 ハピネスがテフラの顔面に飛びつき、行動を静止させる。

 テフラが武器を構えた先、そこには赤髪の女がいた。

 テフラに声をかけた主。その女は糸目でニコニコと笑っている。


 構えた手斧マスターキーに、女の手が這わされ、テフラはピクリともそれが動かせなかった。


「────なっ!?」

「うっふっふー。当店で暴力行為が見られた場合、それ相応のご対応をしちゃいますよお客さぁん」

「な、なな」


 しっとり喋る甘い女の声。

 目を皿のように見開いたテフラの語彙力が著しく低下する。手斧を抑えられたのが原因ではなかった。いや、一応はその行為も問題ではあるのだが……。


 一番の問題は。

 その女の体型と格好が問題だったのだ。


 出るところが出て、引っ込んだ肉感的な体つき。

 それなのに胸元むき出しで谷間が良く見える、光を反射するぴっちり衣装。

 肌の色を隠しきれない目の細かいタイツ。

 最後は頭から黒いウサギの耳がにょっきりと。


 ────それはいわゆる、バニーガール衣装だった。


 ボッ! とテフラの顔面が真っ赤に染まり、脳裏にピッシャーン! と雷が走る。

 純朴な青年にとって刺激的すぎた。

 さらに言えば、彼は今『目に良い薬』まで口にしているのだ。

 それはもう洞察力が鋭い。とてもとても鋭い。


 そのテフラの様子に、バニーガールは糸目でニコニコと笑みを浮かべて距離を詰める。

 顔を真っ赤にしてテフラはその場で仰け反った。

 そんな彼に、手斧から顔へと白細い人差し指を近づけ、糸目バニーガールはしっとり言葉を呟く。


「うふふ、オイタはダメですよぉ?」

「お、おう」

「………………少年」


 ジト目のハピネスから放たれた低い声に、テフラは我に帰ってすぐさま謎の糸目バニーガールから慌てて離れた。

 そして、武器を構え……るかどうか悩み、逡巡したのちに背中に斧をしまう。

 その様子を見届けると糸目バニーガールは、ニコニコ表情は変わらず先ほどの入口の壁際に戻っていった。


 テフラはその糸目バニーガールに背中を向けて、肩にいるジト目のままのハピネスにこっそりと声をかける。と言っても糸目バニーガールはその様子をガン見しているのでこっそり話す意味はないのだが、二人は気がついていない。


「ハピネス、あれが店主か!? あのエッ……あの人が!?」

「……そうだけど少年見惚れてたね。鼻の下伸びていたよ少年。顔が真っ赤のままだよ少年。エッ……ってなんだい少年、ねぇ少年?」


 ジメジメとしたオーラを出しながらジト目で言葉を放つハピネスに、さらに顔を真っ赤にしてテフラは体をプルプルさせながら言葉を返す。


「いや……! いや、あれはしょうがねぇだろ! あんな変態的な格好見たことねーよ!」


 へんた……。と聞きウサ耳をピンと立てていた糸目バニーガールの額に青筋が走っている。それに気がつかない青年と青い鳥はコソコソ話を続けた。


「買い物する時ってあのエッ……、あの人と話さないといけないわけ!?」

「……少年って思ってた以上に純朴だね。お姉さん安心したよ」

「……村に同年代にあんまり女の子いなかったんだよ。他の同年代の子と付き合ってたし、俺は森番の仕事やってたし」

「少年……」


 憐れみの目で、青い鳥が青年を見た。

 生まれた時から『尾根錦祭』の儀式の人物として定められていたために、その辺りで一つテフラの知らない村の認識があったりするのだが、関係ないのでこの辺で置いておく事にする。とにかくまぁ、彼は女性耐性……というか肌を多く出している女性の格好に弱かった。

 そんな話をしている二人の背中に気配。


「お客さぁん? お買い物はなされないのですかぁ?」

「「ハイ、すぐ見ます!」」 


 すぐ至近距離で前傾姿勢になった糸目バニーガールが、テフラの耳に息が当たるような距離で声をかけてきたのだ。当然、そのテフラの耳に声をかけていたハピネスも飛び上がる。


 そうして二人は『ダンジョンショップ』でお買い物……。というか、買いたいものがあるかどうかを探し始めるのだった。


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