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リリィの話 ~女の子達の囀り~

リリィを少しでも気に入ってくださった方へ。

夜が長くなりましたね。夜の暇潰しに、少し女の子達の内緒話をのぞいてみてください。


婚約中の話しになります。

私は、リルアーナ・アルフィルム。

身分は、侯爵令嬢にして、勿体なくも王太子殿下の婚約者なの。

婚姻式を2ヵ月後に控え、私にはどうしてもどうしても、結婚する前にしてみたいことがあったのよ。

それは、女の子同士のお泊まり会よ!

時々、侍女のマリーが仲間の侍女やメイド達と開催しているのを聞いていて、ずっーと羨ましかったの。

でも、夜猫になる私じゃお誘いなんか出来ないし、デビュー前の私にはそれほど親しいお友達もいなかったしね!


と、いうわけで。


「女子会!初のお泊まり会よー!」

わぁっと盛り上がる私の側には、エリザベス様と、少し前から仲良くなったソフィア様。ソフィア様は、以前私の暴行事件のあったロココ伯爵夫妻の娘さんなの。

何度も何度もロココ伯爵家からも謝罪があり、その中で、年の近かったソフィア様ともお話させていただいて、今やとっても気の会うお友達になったの。ソフィア様にも婚約者がいらっしゃって来年には結婚されるんですって!お歳はこのメンバーでは一番上の18歳でいらっしゃるけど、ふんわりのんびりした雰囲気で、栗鼠のような方なのよ。でも、とても情報通で時々驚かされるわ。


ちなみに、お泊まり会の事をユーリに話すと、

「猫と子猪と栗鼠?何、その動物集会!面白すぎるんだけど」

と爆笑されたわ。むかついたから、絶対仲間にいれてあげないんだから!


「私、こんな風に人のお部屋にお泊まりするのは初めてですわ。」

エリザベス様が、私の部屋を興味深そうにキョロキョロして見ている。

「そうなの?エリザベス様は夜会でもお友達がいっぱいだったから、お泊り会されたことあるのかと思っていたわ。」

驚いたように声をかけると、

「お恥ずかしい話、結局お友達ではなかったのですわ。思えば、このような会をしたことも、そこまで深い話をした事もありませんでしたもの。没落した今や、皆様さっさと去っていきました。私としては、逆にリルアーナ様にお友達がいなかったとおっしゃるのが不思議ですわ。」

エリザベス様の言葉に、ソフィア様も頷く。

でも、本当にいなかったのよ!子供達のお茶会とかにユーリと参加しても、私と親しくするのは、ユーリ狙いの令嬢ばっかりなんですもの。

お話しても、ユーリのことばっかり。そんな方達と親しいお友達になれないでしょう?

私の言葉に、エリザベス様が慌てだす。

「私は、ユーリ様もお慕いしておりますが、リルアーナ様のこともとってもお慕いしています!」

エリザベス様の言葉に、にっこり笑顔を返す。

よく分かっていてよ。エリザベス様からいただいたお見舞いのお手紙は、とても温かくて、私を心配する文章で溢れていたもの。私、とっても嬉しかったもの。


「そういえば、リルアーナ様のお式の準備は順調ですの?婚約式から、1年ほどは婚約期間を設けることが多いのに、殿下とリルアーナ様のお式は半年程と急な展開ですものね?」

のんびりしたソフィア様の言葉にエリザベス様も私を見つめる。

そうなのよ。今、王宮もアルフィルム家も嵐のような慌ただしさよ。

「混乱し、空気が淀み重い国内の雰囲気を一新するためにも、この慶事は一刻も早く国を挙げて執り行うべきである!」

アレク様があげた声に王が頷いたものだから、もう大変!

でも確かに一気に、重い雰囲気はなくなったわね。

もう、それどころじゃないって感じ。

城下町でも、ロイヤルグッズ作成に盛り上がっているというし、経済的にも雰囲気的にもとてもいい方向には向いていると思うわ。


「でも、式を早められた本当の理由は、アレクサス殿下がリルアーナ様をご寵愛されるが故なのは自明の理ですわよね。アレクサス殿下がリルアーナ様以外、一切目に入れていらっしゃらないのは誰の目にも明らかですもの。」

ソフィア様の言葉に顔が赤くなる。

えっ?そんなにあからさまかしら?

「本当ですわ。特にアレクサス殿下の20歳の祝賀会は、思い出す度にうっとりします。未婚女性のほとんどが、目にかけていただこうと気合いを入れて準備し、あれほど熱い視線を殿下に送っていたのに、一瞥もせず、リルアーナ様に向かうんですもの。民に至っては、王宮ラブロマンス!運命の愛!と盛り上がっているそうですわ。」

ほうっと熱いため息をついてエリザベス様まで仰るから、こちらこそ恥ずかしくてたまらないわ。


恥ずかしいから、話を変えてみた。


「そういう、ソフィア様の結婚式も来年で準備が大変でしょう?お相手は、幼馴染の子爵家の方ですって?」

ソフィア様にお話をふってみた。

「ええ。でも、本当はお父様は爵位も下がるしあまり裕福でない子爵家の方だから難色を示していたの。」

「あら!そうなの?」

「ええ。でも、リルアーナ様のお陰で一気に話が進みましたわ。」

とっても嬉しそうに話すソフィア様に、私は首を傾げる。

「私、何もしていないわ」

わかっていない私に、ソフィア様は教えて下さった。


「結婚ブーム到来ですわよ。年頃の貴族は一斉に結婚しますわ。だって、殿下とリルアーナ様が結婚されるんですもの。お二人のお子様と同年代の子供を生むには、今、結婚しないといけないもの。」

その言葉に私は驚く。


「お二人の仲睦まい様子からすぐにでもお子様が生まれる可能性があるでしょう?ぐずぐずしていられないわ。お2人のお子様と年が近ければ、異性なら結婚相手、同性であれば、友からゆくゆくは国の重臣へ行けるかもしれないチャンスですもの。そんな夢をみて、一気に結婚ブームが来てますのよ。私の父ですら、このタイミングを逃すよりは、と結婚を認めて下さったの!」


ソフィア様の言葉にぽかーんとしてしまう。

まだ、性別どころか子供が生まれるかどうかもわからないのに、と驚いてしまう。


「アルフィルム家の方は、本来、こういった権力ゲームには参加されないからご存じなかったのね。」

ソフィア様の言葉に、こっくり頷く。


「私は、尻込みする結婚相手のエリックを押して押して、お父様も押しまくって漕ぎ着けたんですのよ!」

そうにっこり微笑むと、ソフィア様は、次に、エリザベス様に向きあい、

「ですから!エリザベス様。ぐずぐずしていると、ユリウス様を誰かにかっさわれてしまいますわよ。ユリウス様は極上品ですもの。あらゆる令嬢が舌舐めずりして狙ってますわ。」

力強いソフィア様の言葉に、エリザベス様は顔を青くして、コクコク頷いている。


ソフィア様。優しい栗鼠さんかと思ったら、しっかり爪も隠し持っていらっしゃったのね。驚いたわ。


私が呟くと、ソフィア様はそれはそれは楽しそうにお笑いになって、

「あら。栗鼠って実はその歯も爪もとても鋭いのよ。」

そういうと、テーブルにあった小さなケーキをゆっくり手に持つと、口付けして、ゆっくり咀嚼する。最後にお行儀悪く、ぺろりと舌で唇を舐められると、

「この甘いスイーツと同じで、一度味わうと止められないの。欲しい(もの)は必ず手に入れたいの。女の子は貪欲なのよ?皆同じでしょ?」

その言葉に、エリザベス様と顔を合わせて、にっこり笑う。


「本当に、女の子は甘い(もの)に目がなくて、欲張りだわ。」

私の言葉に、エリザベス様もソフィア様も頷いた後、おかしそうに吹き出した。



夜は更ける。

乙女達の会話は

更に盛り上がっていく。


「リルアーナ様は、アレクサス殿下とはデートはされてますの?」

その言葉に、私は、しゅんと落ち込む。

「実は、お互いあまりに忙しくて、ゆっくり会えていないの。それでも、出来る限りお時間は取って下さっているけど、王宮で少しお話するのが精々で、なかなかゆっくりした2人きりの時間がとれなくて」

寂しそうに呟くと、

「リルアーナ様。それはいけませんわ。男性には、きちんと餌を与えなくては!」

「えっ餌?」

ソフィア様の言葉に驚く。

「そうですわ!甘い時間と触れ合いはとても大切ですわ。」

ソフィア様の言葉に、おずおずとエリザベス様が聞いた。

「触れ合いって何ですの?手を繋いでお散歩したりすればいいんですの?」


ソフィア様は首を振る。

「残念ながら男の方はそれでは満足できませんのよ。甘い口付けや抱擁だって時には必要なのですわ。男の方は、私達が思う以上に獣の一面を持っていらっしゃいますもの。リルアーナ様だって、もちろんアレクサス殿下との甘い時間をもう経験されているでしょう?」

ソフィア様の明け透けな言葉に、真っ赤になってしまう。

ソフィア様はそんな私をニコリとみつめると、次はエリザベス様に向かって微笑んだ。

「エリザベス様もユリウス様に口付けされたり、抱擁されてみたいでしょう?」

ソフィア様の言葉に、エリザベス様の顔が一気に赤くなる。

「わ・・・私とユリウス様がくっ口づ・・ほっほーよー・・」


「きゃぁぁ!エリザベス様―!!」


あらら。エリザベス様ったら想像しただけで、真っ赤になって気を失ってしまったわ。

慌てて介抱するソフィア様も、まさか気絶されると思ってなかったようでさすがに慌てふためいている。

私もかなりの箱入りだと思っていたけれど、エリザベス様はそれ以上だわ!


「・・・失礼いたしました。」

意識を取り戻したエリザベス様は恥ずかしそうにもじもじしている。

あまりの可愛らしい様子に、ソフィア様と顔を見合わせてクスクスしてしまう。

エリザベス様って、見た目は勝気な令嬢なのに、中身は本当にお可愛いらしいわ。

ユーリはそれに気づいているのかしら?


「あら!リルアーナ様!そちらに飾られている蛙のぬいぐるみはともかく、猫のぬいぐるみは、今、噂のハッシュ商会のものじゃなくて?」

ソフィア様が、目を細めてぬいぐるみをみている。

「ハッシュ商会?」

エリザベス様はご存じなかったようで、首を傾げている。

「今、一番の注目株の玩具商会ですのよ!特に猫のぬいぐるみは、ふかふかの毛触りで王宮からも特注を受けたとのことで、今や王宮御用達を掲げる人気店なの。ちなみに、王宮からの特注品は非売品らしいわ。アレクサス殿下自らが、ご機嫌で猫のぬいぐるみを大切そうに抱えて、キスしながらお店から出てきたと噂になっているのよ。アレクサス殿下は、可愛い趣味がおありだと民の間で噂されているそうなのだけど、リルアーナ様への贈り物だったのね!」

納得したと頷いているソフィア様に、私は、適当に笑っておく。


アレク様ったら、何していらっしゃるの!

知らない間に、色々と威厳がなくなってらっしゃるわよ。

毎日、アレク様が猫のリリィを愛でていらっしゃるのかと思うと恥ずかしいような、妬いちゃうような。

あら?私もアレク様と同じやきもちやきのようね。


そんな事を考えていると、

すーっと可愛いらしい寝息が聞こえた。


「あら?エリザベス様寝てしまわれたの?」

私のベッドの端でお可愛らしく寝てしまわれたエリザベス様を覗きこむ。

「エリザベス様ったら、昨日は楽しみで眠れなかったそうですもの。」

おかしそうにソフィア様がそっとブランケットを掛けて差し上げる。

「それにしても、エリザベス様がこんな性格されているなんて、私ともあろうものが全く把握できていなかったわ」

ソフィア様の言葉に、

「あら。私の中では早い段階からこんなご様子なのだけど、どんなイメージでしたの?」

「私の1つ下でデビューされたでしょ?その頃には、もう多くの取り巻きがいらして、あっという間に社交界の最大勢力の1つよ。いつも取り巻きに囲まれていらして、見掛け通り気の強い令嬢だと思っていたわ。気に入らない令嬢に辛くあたると評判だったのだけど、このご様子からすると、きっと取り巻きがエリザベス様の名前を使って勝手にしていたんでしょうね。」

ソフィア様の言葉にそうなのだろうと頷く。


「私のことも意外で呆れられたかしら?」

ちょっと心配そうに聞いてくるソフィア様の手を握る。

「いいえ。可愛い栗鼠のソフィア様も好きだけど、鋭い歯と爪を隠しもつソフィア様もとても好きよ。」

良かった。そう言って笑うソフィア様の笑顔はやっぱり栗鼠みたいにかわいいらしかった。


「いつか、ソフィア様の婚約者様にもお会いしたいわ。」

私の言葉に、くすりとソフィア様は笑う。

「有難う。でもきっと、殿下とリルアーナ様に挨拶させていただくと、エリックは緊張して一言も話せなくて、更に色々失敗して、かなりみっともない姿をお見せすることになると思うわ。」


「あら?貴女は、私の子供の重臣の座を狙っているんじゃないの?」


「ふふ。そうよ。でも、エリックは間違いなく、アレクサス殿下のお役には立てないわ。どんくさいし、気の効いたこと一つ言えないし、弱いし、泣き虫だし。」

「・・・えっと、どこが良かったの?」

私はソフィア様の語るエリック様の姿に衝撃を受けた。ソフィア様が選ぶ相手は素敵な人だと勝手に思っていたのだ。


「とっても優しい人なの。彼の子爵家の人達は、皆弱くてとてもお人好しでしかもお馬鹿さんなの。だからいつも騙されて、借金まで背負ってしまう。それでも、人を恨まないの。いつも、弱々しいけれど笑みを絶やさなくて、私がどんなに酷い事をいっても、怒らないし、私を認めてくれる。本当に、馬鹿で、でも心の綺麗な優しい人なの。ずっと大好きなの。でも、なかなかプロポーズもしてくれない優柔不断な人だから、私からプロポーズしたのよ!」

そう言って照れたように笑うソフィア様はとても綺麗だった。


「そんなとってもお馬鹿な位優しい人と、なかなか腹黒い私の子供、うまく組合わさったら面白い子が出来ると思わない?自信を持ってお薦め出来る子供が出来たら、リルアーナ様に自慢するわね」

そうにっこり笑うソフィア様に、こちらも笑ってしまう。

そうね。そんな未来を想像するのもとても楽しいわ。


ふぁ。

エリザベス様の規則正しい寝息を聞いていると、私にまで眠気がうつったみたい。

横をみると、ソフィア様も上品に欠伸されていた。


2人でエリザベス様の横に潜りこみ、3人でくっついてベッドに潜りこんだ。

「ねぇ。ソフィア様。私、こうしたお泊まり会をずっとしてみたかったの。あともう一つ、してみたかった事があるのだけれども。」

私がソフィア様をみると、

「あら?何かしら?」

「お友達と愛称で呼びあってみたいわ。」

私のお願いに、ソフィア様の目が丸くなって、おかしそうに笑って下さった。

「いいわね。でも、リルアーナ様の愛称は殿下のお気に入りだから恐れ多くてとても呼べないわ。そうだわ!リル!仲間うちだけの時はリルって呼んでもいいかしら?」

「ええ。とっても嬉しいわ。じゃあ、ソフィア様は、フィーかしら?」

「いいわね!」

エリザベス様は、と2人で少し考える。

「ベス!」

「ベス!」

ふふ。一致したわ。

「明日、エリザベス様にベスって呼んでもいいか聞いてみましょう。嬉しいわ。私も、愛称で呼ぶ友達なんて初めて。しかもまさか、王太子妃様と公爵令嬢様とだなんて、本当に人生はわからないものだわ。」

そんなソフィア様のしみじみした言葉を聞きながら、私はゆっくり眠りについた。


翌朝、1人だけ早く寝てしまったと落ち込むエリザベス様に、愛称の事を教えると、真っ赤なお顔で、何度も何度もコクコクコクコク頷く可愛いお姿がみれたわ。

ソフィア様が、なぜか、エリザベス様の頭を撫でていらして、

「連れて帰りたいわ」

そう呟く姿に、私は、笑いを止める事が出来なかった。


あと、今から朝食は食堂で食べるから、私の両親やユーリも同席すること、エリザベス様気がつかれているかしら?

食堂で朝食ってお伝えしてあるから、ユーリがいることは予想されてるわよね?

大丈夫よね?



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