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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
夏が始まる
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時間割

 巧は大きな画用紙に定規で直線を走らせる。

 紙を目一杯使って長方形を書く。中を6本の棒で区切る。

 小学校以来の単調な作業だ。美術の授業になかなかついていけない巧にしては良く描けた方である。

 一週間の時間割を描いて欲しい。夜桜先輩の指令である。

「朝は何時に起きてる?」

「5時です」

 と言った瞬間に、猫実さんに「早起きで偉いですね」と褒められた。

「、、、貸せ」

 夜桜先輩は乱暴に巧のマッキーペンを奪い取り、『5時』と上の方に書き込んだ。

 なんだか、夜桜先輩がこういう地味な作業をしているだけで笑ってしまいそうだった。姿勢を正したまま、巧は先輩の長い髪に隠れた横顔を眺めていた。

 先輩が画用紙の上の7つの柱の最後の1つを残して、『5時』からのびる横棒で貫いた。

「日曜日だけは7時に起きていい」

 と言いながら、かくっと、そこで横棒を曲げた。何で勝手に睡眠時間を管理されてるのか謎だが、反抗してもどうせ、怒られるだろう。

 先輩はそんな巧など気にせず脳内で計画を練り上げている。

「ええっと、7時間寝るから、いちにいさんし、、、10時に寝なさい。」

「はい、、、。」

 片手の指で巧の睡眠時間を数えながら夜桜先輩が、ドラマの女優さんのようなドヤ顔を決めてくる。

 猫実さんは真面目に巧の隣で黙々と英語の宿題をやっている。

 それからは、帰宅時間や、食事の時間などをどんどん書き込んでいく。抽出できた時間は、学校から帰った後の3時間半と、朝の45分程度だ。意外と少ないが、毎日お助け部にいる時間を今は勉強時間に回せる。

 すると合計して5時間強、時間ができた。

「こうしてみるとどう思う?」

「これが、ビジネス本によく書いてある『見える化』か、、、。」

 適当なことを言ったら睨まれたので、ちゃんとコメントを考える。

「意外と、少ないですね」

「逆に言えば、これ以上勉強しなくていいということだ。」

「、、、そうか」

 目から鱗とはこういうことを言うのか、と衝撃を受けた。

「ただ、闇雲に勉強時間を積み重ねているだけじゃダメだ。ちゃんと時間を区切って、量よりも質を高めることに意識を向けよう。つまり集中することだよ」

 自分に残された時間がはっきりした。肩の荷が降りたと感じた。今まで自分は望めないものを望んでいたのだ。しかし、こうやって現実的に状況を整理すれば、焦ることもなくなるだろう。

「ありがとうございます、おかげで目が覚めました。」

 机に手をついて礼を述べる。巧は夜桜先輩の懐の深さをまた感じざるを得なかった。

「目を覚ますよりも君は寝るべきだ、ね?」

 夜桜先輩の薄い唇から、白い歯がちらりと見えた。

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