サンドイッチ一つあげます
巧さん
こんにちは、夏休みの予定はいかがですか。
秋からは、文化祭なのでそれに備えて打ち合わせしたいと思っています。
お助け部の活動をみなさんにアピールするいい機会だと思います。
会える日があったら、あってお話ししましょう。
猫実未来
巧は、このメールに「いつでも暇です!!」と返信した。というか、それ以外の選択肢はなかった。友達と休みの日に出かけるのも、こうやってメールで打ち合わせするのも全てが新鮮で、ワクワクした。
夏休み、このメールが来るまでは巧はずっと小説のことを考えていた。図書館をぶらぶらしたり、1日の大半をぼんやりするのと、ペンを持って書くことに当てていた。学校の宿題はどこかやる気にならない。1日が終わって、完成していない小説のノートを閉じる。明日は、昼前に起きてまた、執筆。はたから見ると幸せそうである。本人は、何だか成果のないぼんやりした繰り返しにだんだん心が不安になってくる。心が不安になると、小説もうまく描けなくなる。そうなると、ヒントを探すように、映画を見たり読書に没頭したりする。結局は、それらが与えてくれるものは、確信ではなく勇気に過ぎない。だから、また書いてはぼんやりする。その繰り返しだ。
猫実さんからのメールは、そんな日常に一つ彩りを与えてくれた。
待ち合わせの日の前に、髪の毛を切る。早く寝る。ベッドに入る時から、何か今日が変わっていく気がした。
待ち合わせの駅は、何ともパッとしない東京の駅だった。猫実さんは、どちらからも行きやすいところにしましょう、と言って探してくれたみたいだ。電車は同じ路線を使っているから片方の最寄駅で待ち合わせてもよかったのだが。
猫実さんは、巧が到着するよりも早く来ていた。改札口の前にいる彼女を見てつい嬉しくて手が上がっていまった。あまりしない動作なのに、自然に手を振っていた。猫実さんは、白いブラウスに、青いスカートを着ていた。巧は、当然制服ではない彼女にあえて嬉しかった。制服でも私服でもイメージが変わらない。そこが猫実さんらしくて、巧はもっと気に入った。とうの自分はといえば、無難に無難を重ねた青いシャツにジーンズといういでたちであった。これ以上言う事はない。
「あ、こんにちは」
「こんにちは」
猫実さんは、ぺこりとお辞儀をする。ポニーテールを結ぶ紐が赤かった。
何を話せばいいのかわからないな、と巧は急激に不安になった。何も考えずに来てしまったのに大丈夫だろうか。
「では、行きましょうか」
猫実さんは、手際よくカフェに案内してくれた。
「ご飯、カフェで大丈夫ですか」
「はい、大丈夫です。」
「巧さんって少食ですか。」
カフェでサンドイッチとコーヒーを頬張っていると、猫実さんが聞いてきた。
「まあ、少食というよりちょっとでも割と満足できるんですかね。」
「高校生なんだから、もっと食べて欲しいです。」
猫実さんは、サンドイッチとケーキと飲み物で巧より豪華な感じだ。
「サンドイッチ一つあげます。」
「ええっ」
巧は、ありがたく断ろうとしたが、猫実さんの勢いも半端ではなく、ついには口に入れられそうになったので結局、食べることになった。おかげさまでお腹がいっぱいである。
食べた後は、そのまま席で会議が始まった。例のごとく、猫実さんはノートにいろいろ書き込んでいて、巧がそのアイデアを聴くことになった。
「文化祭ですが、お助け部は普通の部活と同じことをするつもりはありません。」
面白い。巧は、だんだん一緒にいたずらを仕掛けるみたいな気持ちになってきた。
「まずは、お助け部らしく、文化祭全般のサポートをします。仕事を見つけて積極的に動いて行きましょう。」
「それは、文化祭の実行委員みたいなことをするってことですか」
「ええ、でも当日の手伝いだけなので、どちらかというとスタッフに近いです。」
猫実さんは、文化祭については金子先生がよく知っているはずだから、手伝えそうなところを探すそうだ。
「で、当日までは、我々といっても二人ですが、お助け部の出し物を企画します。」
「出し物?」
「公開お悩み相談室です。ホールでやります!」




