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クリエイト!(その3)  作者: 大塚
夏が始まる
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耐えられなくて、目をそらした。巧は、俯いて、両の手で足の皿をつかんだ。

考えることは、巧にとって慣れないことではなかった。小説を書くということは、自分の考えを書く、ということである。

自分と同じ名前の主人公。そして、自分と同じものを背負う主人公。その気持ちを、文にして、物語にした。誰かに読んでもらった。

だから今、ここで先輩に話すのも同じようなことだろう。

初めて小説を完成させた時、何かが変わると思った。ひとに見せた結果は「まあまあ」だったけど。

「善く生きる。っていうのは、、、」

書くという方法を見つけた時、これでなんでも書けるのだと思っていた。けれども鉛筆を持って、原稿用紙に向かってみると思い通りにいかない。むしろ、かけないことの方が多いのだ。

書く、そして伝える。その単純な行為に僕は、どれだけの時間をかけなくてはいけないのだろう。

巧はいつも、目の前にある未知の大海に打ちのめされる。それでも、目をそらすよりかは、ましなのだ。

「一生懸命、生きることじゃないですか。たとえダメでも、頑張ることじゃないですか。」

すみません、願望です。

小声で付け加えたのだが、先輩は相変わらず、考えるポーズをしたままだった。

「君は、いつも苦しんでいるように見える。」

先輩は、ただ言葉で風景を描写するみたいだった。

「だからいつも一生懸命なのかな?」

何も言えなかった。その時の自分が一生懸命だったかなんて、誰が決める?自分しかいないのではないか?それは自己満足ではないのか?

ドアが開く音がした。

「こんにちは」

猫実さんが、いつもより上がった声で挨拶をした。そのところだけ夏のひまわりのようなやけに黄色い空気が、漂い始めた。

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