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「いいか、源。」
少し真剣味を帯びた声で慈鳥に名を呼ばれる。あ、これはきちんと聞かないといけないことだ。慈鳥の声色の変化は、少し分かってきた。
「法具は扱いが難しい。壊れたら簡単には修復は出来ない。だから機構で管理、保全をしているんだ。」
慈鳥の眼差しは、ただ厳しいだけではない。こちらがしっかりと理解できるということを分かった目だ。でも。
「慈鳥さんは修復、出来るっすよね。」
「私が特殊なんだよっ。」
間をおかずにそう返されると同時に脳天に痛みが走る。痛みが残る場所を手で押さえると恨めしそうに慈鳥を見上げた。
「しかも今回、持ち出したのは機構が一時的に預かっていた法具ですからね。」
と狸塚はわざとらしくすらりと長い指を額に置いて、演技がかったため息を吐いた。
「賠償金、いくらになるんでしょうか。」
まるで悲劇のヒロインかのように天を仰ぎ、真っ白なハンカチを取り出すと出てもいない涙を拭いた。慈鳥は狸塚の馬鹿げた様子に呆れ顔を浮かべている。
二人のことをじっと見つめながら、映像を頭の中で繰り返し再生する。
「そもそも俺、法具管理室なんて行ってないっすけど。」
首を傾げて見せると、二人は動きを止め顔を見合わせた。再びこちらに視線が向くと慈鳥は眉間に皺が、狸塚は口に手を当てて可哀想なものを見る目を向けた。
「ここまでとは。」
ため息混じりの慈鳥の言葉はどこか疲れている。
「お母様のお腹の中に記憶機能を置いてらっしゃったんですね。」
頷きながら憐れむように狸塚が肩に触れる。
「野中さんの時に使った小道具を探したとこには似てるっすけど。」
間髪入れず声を揃えて、そこだよ!と言われれば目を丸くしてしまう。すごく息が合うなと思ったら、それが顔に出ていたのか狸塚が掴んでいた肩に力を入れた。




