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世の中は多くのもので縛られている。
なぜ、人は何かを重んじなければならないのか。
なぜ、守らなければいけない事が多いのか。
それを守らなければどうなるか。
その先に何があるのか。
◼️
「これはどういうことだ。」
朝九時四十五分。九時から始業のはずなのに慈鳥と狸塚の姿はなかった。不思議に思いながらも自席に腰掛け、スマホを弄る。様々な情報が行き交い無限に溢れているソレは面白いようで退屈だ。そうして二人を待っていたが、慈鳥の怒気が含まれる声で意識がスマホから離れた。
目の前には難しい文字が並んだ紙ペラ一枚。
「なんすか、それ?」
顔を近づけ目を細めても読むことが出来ないその文字に首を傾げると狸塚は源が手に持っていたスマホの画面をトントンと叩いた。
「就業中は使用禁止ですよ。」
二人がいなかったから見ていただけなのに。少しだけ不満が顔に出ていたのか、狸塚は呆れ顔だ。
「で、なんて読むんすか?」
スマホの電源を落とし、スラックスのポケットにしまいながら尋ねると慈鳥は勢いよくデスクに紙を置いた。その音に驚いたのか、数人の職員が何事かとこちらを見ている。
「預託法具持出報告書、です。」
「よたくほうぐもちだしほうこくしょ。」
狸塚の言葉を繰り返すように呟けば、伺い見るように慈鳥と狸塚に目を向けた。慈鳥は目を覆い、狸塚は肩を竦めていた。
「勝手に管理をしていた宝具を持ち出したことへの抗議だ。」
「抗議って、怒られる系ですか?」
「怒られる系ですねぇ。」
えー!と自然と声が出ると深いため息が慈鳥から聞こえてきた。
「月に一度の点検の際に宝具が一つ足りないと報告がありましてね。」
狸塚は懐からスマホを取り出すと片手で操作をし始めた。狸塚の手の中にあるスマホをじっと見つめると唇を尖らせる。
「スマホは使用禁止じゃなかったんすか。」
「これ、機構のですので。」
視線はスマホの画面のまま、そう言われてしまえば不満が音となり口から出る。デスクに突っ伏すと起きろ、と慈鳥に叩かれた。
「法具管理室に設置されている監視カメラ映像です。」
デスクに顎を乗せていると、目の前にスマホの画面が広がる。再生ボタンを押すと、派手な髪色がズラリと並んだラックの前を行ったり来たりを繰り返している映像が流れた。
「俺っすねぇ。」
そう呑気に答えると狸塚に後頭部を鷲掴みにされた。これ、地味なようにみえてかなり痛い。
「俺っすねぇ、じゃありません。君、なんてことしてくれたんですか。」
指に力が込められ、骨に響く。痛すぎてデスクをバンバンと叩くも力を抜いてくれない。
「痛いっす、痛いっすよー!狸塚さんっ!」
手足をばたつかせていると、ふと、頭の痛みから解放された。見ると慈鳥が狸塚の手首を掴み、首を横に振っていた。
「これ以上、頭が弱くなったら困る。」
「ひどいっす!」
何気にぐさりとトドメを刺してくるのは慈鳥だったりするのだ。




