第五十話 反抗 異次元のハンター
(フィオネ、サンデラルダロレドナ)
心の声で私は命じる。
(!・・・うん)
フィオネの心の声は弱々しいがしっかり頷いてくれた。
グルルルルゥ・・・ズッダーン!!
フィオネは私の言葉に従い技を繰り出した。
二体の精霊にそれが直撃した。
「!?」
シンジは目を見開いてその光景に見入る。
それもいたってゴク単純なリアクション。
私はその反応に納得する。
私は言葉を声に出していない。
心の声で命じたのだから。
二体の精霊は体に電気を帯びさせ苦痛で顔を歪ませる。
相手の二人は
「!!?」
「!!?」
シンジ以上の驚きを見せている。
(フィオネ、とどめにレオスラッシュ!)
私は心の声で言う。
(うん)
フィオネはうれしそうに頷く。
ウールルルゥ・・・スシャー
フィオネは本来の姿を取り戻し、
「アウォーン」
と、雄叫びを上げ雷を瞬時に発動させる。
シュシュッ
雷の刃が槍のように鋭くしゅりけんのように早い。
「レルガ、ファイヤ・・・」
えーと、あっちで誰かが叫んだのが聞こえた。
もう立ち直った??
さっきまでやられっぱなしだったのにどうして??
そう聞きたかった。
いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
ビリッ・・・ボォゥワ・・・・シュゥゥゥゥ
雷の刃は炎に包まれ消し去られた。
そしてその炎がフィオネと私に向かって襲い掛かってくる。
しかたない。
もったいないけど魔力を使おう。
そう心に決めた。
風の精、お願い、私を守って・・
「風よ、我の呼びかけに答えて!!」
私は叫んだ。
ホワンホワン・・・
私の魔力の大半は宙に浮き、風の精に助力を要請した。
〔分かりました。風に愛されし、あなたの頼みとあらば〕
風の精は私の魔力を通して私に伝えた。
ありがとう。
私は礼を言う。
やばい・・時間がない。
「ウィンディーフワフォルド!」
私は叫び、迫り来る炎に手をかざす。
フワーン・・・ズザーーーーー
フィオネの周りと私の周り、
そして有り余った炎がシンジに来ないように風の結界を張り巡らせ、
襲ってきた炎を結界は包み込んだ。
そしてその炎は赤から青へと変わった。
ブウゥオウ・・・シュシャー
青い炎はレルガの方へと戻された。
「グエっ」
「クゥウ」
レルガとロルガはその炎に見舞われた。
そして同時に瀕死状態に陥った。
「・・・」
「・・・」
私たちのほうも相手のほうも呆然とそれを見るばかり。
風の精さん、ありがとう。
私は再び、風の精に礼を言った。
〔いえいえ、どういたしまして。
ウィーミアを呼び寄せることができたあなたの頼みならいつでもいいわ。
ただ、呪文を唱えないとあなたの体が持たないわよ。
今のあなたは魔力が交流手段になってるから。
その間に攻撃されたらおしまいよ?〕
風の精にお説教を食らった私。
あはは。それもそうだね。
ご忠告ありがとう。
でもそれだと、あなたの声が聞けないよ。
私はにっこり笑って言い返す。
〔それもそうね、でも体には気をつけて。
でないと、いつ、そのお隣にいる方が激怒するか分かりませんよ。
では、そろそろ・・またよんでくださいね〕
うん、そうするよ。またね
私は苦笑しながら風の精に言った。
すると風の精の声は聞こえなくなった。
私の魔力があっちに持っていかれたからだろう。
「勝者、ルミルシンジペアです!!」
審判が勝敗を下した。
その声に私もシンジも相手のほうも我に帰った。
「シンジ・・帰ろ?」
私はシンジに笑いかける。
「・・」
シンジは何か言いたげだった。
だが、やれやれといった風に頷いてくれた。
そして私たちはホールから出た。
しばらく歩いた。
廊下を突き進んで自分たちの部屋が見えたときだった、異変が起きたのは。
視界がグニャっと歪み、周りが何かに囲まれる。
変な空間に閉じ込められたみたいだ。
そして私を閉じ込めた空間は異次元吸い込まれていった。
シンジはそのとき、私のいた空間をまじまじと見つめていた。
シンジには空間に閉じ込められた私が見えてはいなかった。
見えたのは 誰もいない廊下。
ルミルがその場にいたはずの廊下。
忽然と何の前触れもなくルミルは消えたのだ。
「!?」
シンジはその場に立ち竦んでしまった。
ルミルは異次元に連れて行かれ、辺りを見回した。
どうやら、私を狙って誰かが仕掛けた罠のようだった。
そして私の目の前に誰かが現れた。
「あなたは・・だれ?」
私は聞いてみた。
「あんたが、天寿の力を持つ者 なのか?」
そいつに逆に質問された。
そこに現れた人は・・黒髪で黒い瞳を持つ黒い衣を羽織った青年だった。
この人の言葉・・妙に違和感を感じる。
「そうだと思ってあなたは私をこの維持現に無理やり連れてきたんでしょう?」
私は言い返した。
青年は眉をひそめ、
「・・気の強い女・・」
と、呟いた。
言葉自体に違和感はない、だが、その口調が妙に違和感を覚えさせる。
そんなことより、
きっと私に聞こえぬよう呟いたとは思うけど
私はなんたって地獄耳。
「気が強いかぁ。昔よく言われたなぁ。」
私は相手に聞こえるように大きな声で呟く。
「!」
青年は目を見開く。
「それはそれとして、あなたは誰?」
私は話を元に戻して聞く。
「俺はハンターだ。
ほしいものは全て狩る。」
誰?と聞いたのにその答えに全く関係のない言葉が飛び交う。
「あなた自分を偽ってる。」
私は呟くように言った。
さっきから妙にこの人に違和感を感じる。
「偽る・・確かに偽っているな。」
青年はそっけなく言い放つ。
よし、こうなったらこの人の心の中覗いちゃえ。
そう思って、青年の目を見つめた。
闇を宿らせるその瞳から何が分かるだろう?
そんな疑問をはせて、心を覗いた。
(こいつ、やはり天寿の力を宿らせている。
だが、魔力が異常だ。
なぜだ?今も減退して・・!?)
青年は驚いて私を見る。
このひとよくわかったなぁ、私のこと。
私は妙に納得して、心を覗くのをやめた。
「あなたは私に何の用??」
私は聞く。
「!!・・・俺はハンターだといったはずだ。」
青年は私を凝視して言う。
この人・・私の怪我に気づいた。
ハンター・・・そんな人が何故私を狙う?
私は考える。
ハンターは世に珍しいものを集める職業だ。
狩る仕事もその類に入ってはいるが・・・。
私は戸惑う。
これからどうすればいい??
この人の目的は明らかじゃない。
かといってここでにらみ合いしてる場合でもない。
シンジをあっちに置き去りになってる。
だからここで時間をつぶせない。
やはり、きついがあの手でいこう。
私はここから脱出することを決めた。
「私はあなたに用はない。
だからここから出てくよ?」
私はそういって呪文を唱え始めた。
唱え始めたのは空間を破壊する呪文。
「!?やめろっ!!その呪文はこの空間には効かないっ
下手するとお前は・・・・」
青年は私の呪文内容を理解し声を荒げる。
ビリビリィッ!!
「くぅっ!!」
体に電気が走った。
呪文が中断される。
イッ・・イタイ・・
私は自分自身を抱きしめながら思う。
青年は苦しむ私を見下ろしている。
「くぅっ。・・効かないわけじゃない・・。」
私は痛みに耐えかねながらも言った。
そして私は呪文を再び、再会させる。
「やめろ、無駄だ、そう簡単にはこの空間は壊れない」
青年は静かに言う。
くぅっ!
また電気が体を突き抜けた。
さっきよりも痛みが強まった。
ビリビリビリッ
体に電気が帯びる。
その苦しみに何とか耐え、詠唱を続ける。
やばい・・魔力が足りない・・
次、中断させたらもう・・・
私は非常にやばい状況の中必死に呪文を唱えていた。
しばらくすると空間にひびが入った。
ピキッ
「何!?」
青年は驚きの声を上げた。
「そうはさせるか。」
青年は次の瞬間そう言って呪文を唱え始めた。
中和の呪文だ。
このままじゃ私の呪文の効果は薄れていく。
そうすると脱出は不可能だ。
シンジ・・・。
こんなやばい状況の中でシンジの姿が頭をよぎる。
考えちゃいけないのに、呼んじゃいけないのに。
こんなときに考えたら集中力が途切れてしまう。
こんなときに呼んでしまったら私は弱くなってしまう。
なのにどうして抑えられない。
シンジ・・・シンジ・・・
でも・・そうやってシンジを考えられるから力が湧き出るのかもしれない。
絶対シンジの元に帰ってやる!!
そんな思いが私の心を満たした。
私は呪文の詠唱を強化する。
ビリリッ!!!
体に電気が走り、体中が苦痛に襲われる。
くぅ”ぅう
苦しいけど辛いけど必死に呪文をつむぎだす。
ピキッ・・ピキキキ・・
空間がわれ始めた。
「くそっ。なんて力だっ」
青年は怒りを込めていった。
私は呪文を必死でつむぎだす。
そして・・
パッキーン!!!
空間が割れた。
やったっ・・・
よろこぶのもつかのまま、
その瞬間、青年のこぶしがみぞおちに入った。
「グッ」
お腹に激しい苦痛が襲ってきた。
私の体は空間の壊れたほうへ倒れていった。
青年はにやりと笑って私の腰に手を回そうとしたが、
シュッ!!!
何かの矢にそれを阻まれ私はそのまま空間から落っこちた。
どさっ!!
私はさっきいた廊下に落っこちた。
落っこちた私は廊下でばたっと倒れる。
「おいっ!!」
シンジが私に駆け寄った。
シンジが私の腰に手を回し首を支えて抱き起こした。
途端、お腹に激しい痛みが襲った。
「うぅっ!」
私はお腹を手で押さえた。
「おいっ!!何があった!?」
シンジは叫ぶ。
シンジ・・・。
私は痛みで目が潤み視界がかすんだ。
ぼやけた視界の中シンジの姿が目に映る。
「おいっ!」
シンジの動揺はいまだにおさまらない。
シンジは激しく動揺していた。
私はお腹を押さえ、
「・・・だいじょうぶ・・だから・・」
と、言いながら立ち上がった。
体はまだ電気が帯びていて、立ち上がるのもやっとだった。
シンジも立ち上がる。
私は痛みに耐えながらも部屋のドアノブに手を伸ばした。
シンジは私のしようとすること察してドアノブを回しドアを開けた。
ガチャリ
私とシンジは部屋の中へ入った。
その後すぐに扉は閉められる。
そのドアにもたれかかって私は座り込み、お腹を押さえてうずくまる。
「うぅっ」
「おいっっ!」
シンジは声を荒げひざを突いた。
シンジの手が私の背に触れた。
ビリッ
シンジはとっさに手を離す。
シンジは目を見開いて私を見る。
ビリリ・・・
私は腹痛と体に帯びている電気に苦しめられていた。
それがシンジにも伝わったんだと思う。
シンジは・・あの時、あの青年に矢を放った。
私を助けてくれたんだと思う。
何がなんだか分からないまま。
「おいっ!しっかりしろっ!!」
シンジは私を無理やり抱き起こした。
「くぅっ!」
私はその衝撃でうめく。
シ・・ン・・・ジ・・・・。
私は狭くなった視界でシンジを見上げる。
そうでもしないと意識が遠くなりそうだったからだ。
「おいっ!!」
シンジは声を荒げて私の体を揺さぶる。
「・・だいじょうぶ・・だから・・・シンジ・・れいせいに・・」
私は必死に言葉をつむぎだす。
「・・っ!?・・冷静でいられるかっ、バカがっ」
シンジは目を見開いて言い放つ。
バカ・・確かにそうかもしれない。
私は妙に納得した。
こんな状況で冷静でいられないよね・・・誰でも。
そんなに心配してくれてるんだ。
「っ・・・。もうだいぶ痛みは・・引いたから・・・・っ」
私は立ち上がろうとしたがシンジが放さないからバランスを崩した。
前へと私の体が倒れこむ。
それをシンジがまたもや支えた。
「お前はほんとにバカだな。
バカとしか言いようがない。」
シンジは半分あきれたように言う。
「ん・・?」
私は首をかしげる。
「お前、その自覚すらないのか・・?
自覚しろ。それと無茶するな」
シンジはあきれ返りながらも静かに怒りを込めた声で言う。
やっぱり・・そう思ってたんだ。
あぁ、これからシンジから隠し通すのむりだなぁ。はぁ。
と、私は半ばため息をついた。
五十話を突破しました。
今回は少し長めに書いてみました。
少しどころではないかもしれないけれど・・。




