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精霊使い  作者: 黎奈
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第三話 シンジのやさしさ

シンジがまきを取りに行ってから少したつ。

 私の意識は朦朧もうろうとしていた。

頭痛がする。体が寒くて震える。視界がぼやける。息苦しい。

頭痛やほかの苦しみに耐えながら思う。

今までの疲れが雨を体が受けたのがきっかけで、限界だといっていることを。

でも、耐えなければならない。シンジに・・迷惑をかけちゃいけないんだ。

ただでさえ、足手まといな存在なのだから。

そう強く思ってもいずれ限界が来ることは知っている。

でも、せめてぎりぎりまで、迷惑はかけたくない。

まだ、平気。大丈夫。

そう自分に言い聞かせた。

シンジの言うとおり、精神力を使うようなことをしなきゃ良かった。そうは思いたくない。

私は私なりに精霊を接したい。

シンジは、勝つことにとらわれすぎている。

とらわれすぎて、周りが、精霊の意思が見えていない。

そんなのにはなりたくない。

そう思ったとき、ふいに視界が歪んだ。

「うっ”」

私はうめいた。そして体が前に倒れこむ。

ここで私は意識を失った。



このころ、シンジは湿っていないまきを探すのに苦労していた。

手で触って湿っているか確認して手に取る。

シンジはその動作を何回か繰り返しながら思った。

あいつは・・ルミルは・・俺とは違う。違うのは当たり前だが・・・

守れといったものの大半は守らないことが多い。

俺と考え方が明らかに違う。それはあいつを見ていて分かる。

なのに反論はしてこない。守らないのにだ。

そう思いながら、だいぶ集まったと思って、洞窟に向かった。

雨のせいなのか、時間帯のせいなのかやけに薄暗い。

洞窟はもう目の前。

ルミルの座り込んだ姿が見えない。

薄暗くても見えるはずだ。なのに・・。

俺は急いで向かった。

洞窟の中に入った。

「!?」

姿が見えなかった理由がよく分かった。

俺はまきをおいて火を灯す。

そして洞窟の中は照らされ少しは温まることができるようになった。

俺はルミルを抱き起こし揺すった。

ルミルの呼吸は浅く、寝ているには呼吸が速すぎた。

「・・おいっ、・・おいっ。」

言葉を投げかけながらルミルの体を揺する。

「んっ」

ルミルはまぶたを少し開けた。

視界にはシンジの姿が映っている。

「・・・大丈夫か?・・」

シンジの声でルミルははっとして、

「だ、大丈夫・・・だから・・っ」

シンジからはなれようとした。

心配かけちゃだめッ!

その思いが私に意識をはっきりさせた。

「お、おいっ。」

シンジは、はなれようとする私をつかもうとする。

私はシンジの手を振り払ったとき、頭痛とめまいが襲った。

体はバランスを崩し倒れこむ。

シンジはとっさにルミルを支えさっきと同じような形に戻す。

シンジはようやくルミルの異常に気づいた。


さっきの時点で気づけ。と突っ込みたい人もいるだろうが、とにかく今気づいたのだ。


ルミルは意識がもうろうとしているようでさっきのような抵抗を全くしない。

呼吸がさっきよりも速く、それと体が震えていた。

シンジはルミルの額に手を当てた。

        ーーーーーーー熱いーーーーーーー

熱がある。おそらく雨と今までの疲労のせいだろう。

さっきの反応からして、俺に何も知られたくなかったようだった。

俺は後悔した。

ルミルと旅を始めてからの生活が脳裏によぎる。

 

旅を始めてから今までの間、毎晩、ルミルは呼吸を乱していた。

『どうした?』

『・・・だいじょうぶ・・だからぁ。』

『?』

『熱はないし、少し疲れただけだから・・心配しないでぇ。』

俺はどうしたと聞いたのに熱はないとか疲れたとか言う。

ここでおかしいと思うべきだったんだ。


そうだ、気づけ。といいたい人。言いたくても我慢。


俺はとりあえずルミルの震えがなくなるまで、火のそばで暖めていた。

その後、寝袋にユウナを寝かせた。

 まだ雨が降っていた。

俺は竹の筒をリュックから取り出し、雨のしずくを入れる。

竹の筒に、入れれるだけ雨水を入れる。

そして、俺は右手の中指にはめているリングに向かって、

「アーウィル」

といった。

すると俺のパートナーである精霊、アーウィルが現れた。

「どうしましたか?シンジ様。」

アーウィルが言う。

「この筒に入れた雨水を、飲み水にできるか?」

俺は問う。

「お安い御用ですが。なぜそんなこと聞くんですか?あなたは、戦い以外で呼ぶことなんてないに等しかったのに・・。」

俺はその言葉にどう答えればよいものか考えた。

そして、俺は俺の後ろで眠るルミルをあごで示した。

「かわいらしい娘ですね。確か前にはいなかった気が・・。あぁ。分かりました。この者のためにシンジ様は・・・」

「いいからやれ。」

「はい。あなたはそういう人だから契約したんですけどね。」

アーウィルはぶつぶついいながら雨水を飲み水に変えた。

その後、アーウィルは帰っていった。

俺は汗拭きタオルサイズの布に今さっき、替えてもらった水を少しかけて湿らせた。

その布をルミルの額におく。

そして、俺も自分の寝袋の中に入って寝た。



朝、シンジが目を覚ましたときにはすでにルミルも起きていた。

「シンジ、起きた?もう、朝食作ったよ。」

シンジに向かってルミルが元気よく言う。

「・・・熱は?・・」

「ん?熱?・・もう・・・ないよ。ありがとね、シンジ。」

シンジの問いかけにルミルはびっくりした。

 でも正直に言うとまだ少し微熱はある。

でも、頭痛もしないし、めまいもない。少しだるいことは言わないでおく。

それを隠すために、シンジに笑いかけた。

「・・・・。」

シンジは疑い深い視線を送ってきた。

「さ、さぁ、朝食にしよ。森で取れたものばかりだよ。さぁ、どうぞ。」

 あたしは朝食をシンジの目の前に置く。

木の実に果物、そしてきのこ。いろいろ野菜が詰まった野菜炒めってかんじの朝食。

「・・・。」

シンジは黙って朝食を食べはじめる。

手を止めず黙々と。

シンジは

・・・・味は悪くない・・・・。

と思いながら食べた。

ルミルは笑った。

 無口で冷静で頭もいいと思えるようなシンジはなんかどこかしら鈍いところがある。

シンジに迷惑をかけてしまった。もう、迷惑をかけたくない。

 少し鈍いシンジであることに少しほっとするルミルだった。










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