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死んでしまった僕は君を見つめ、君は僕を見つめ返す(馬9)  作者: 蔵前
三 場をしらけさせるのは僕の専売特許でしょう?
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人の実家をディスらないでください

 居酒屋と言っても個室ばかりの、それも昭和の和室のような造りをした少々広い個室に、僕と女性四人が納まっている。

 畳敷きの和室の中心には黒光りする長方形の座卓が構え、あとから参加する男性三人が座るにも十分な大きさだ。

 また、部屋の隅に仕立てられた床の間には、小さなブラウン管テレビとこけしが設置されており、壁には昭和初期の香りがするポスターが貼られている。


 僕達が座り込んでいる座卓が昭和の和室にはない掘り炬燵タイプであるが、そんなことは小さなことのように、この部屋は昭和を演出していた。


 さらに思い返せば、この和室に辿り着くまでの長い廊下などは、廊下の端々におかしな地蔵や神仏のオブジェがあったりとしたではないか。


 つまり、このお店は居酒屋言うよりもテーマパークに紛れ込んだようで、僕はここの物珍しさによって楽しい気持ちでとてもとても高揚していた。


「ねぇ、クロの青森の家ってこんな感じなの?」


 目を輝かせて僕に酷い台詞を放ったのは、結婚したばかりの旧姓が今泉の髙杏子たかきょうこである。

 彼女は鋭角的な顔立ちの美人だが、笑顔になると涙袋が目元にできて、それはもう柔らかい顔立ちの優しそうな美人になる。

 そして、美人なのに最近まで男性の影が無かったのはオカルト大好き不思議ちゃんだったからに過ぎない。


 オカルト好きの彼女にしたら僕が興味深いオカルト物件だからといっても、人の実家をお化け屋敷に似ているとはひどい言いがかりだろうと、僕は一瞬頭が真っ白になった。


「え?」


「だってさ、かわさんがちびの家みたいな居酒屋があったって大喜びして教えてくれたのがここなんだよ。それで皆が来たいって言うからここに決まったの。」


 今泉の代りに首を突っ込んで説明してくれたのは、癒し系な水野である。

 確かに楊は数週間前の僕の里帰りに勝手について来て、面識のない青森の武本本家に一泊して神奈川へ帰って行った男だが、帰った先の神奈川で武本家の悪口を言っていたとは知らなかった。


「かわちゃんったらひどい。確かに、変な間取りの家だけど。ねぇ、他にかわちゃんは何て言っていたの?青森の武本本家ぼくんちのこと。」


「あら、かわさんは凄く良い家だったって、また泊まりたいって褒めていたのよ。まるで雀のお宿風のオコジョの巣みたいで楽しかったって。」


「わぁ!ひどい!」


 佐藤の朗らかな返しに僕は声を上げて両手で顔を覆ったが、武本家は飯綱使いの家系で、呪い除けにアメリカのウィンチェスターハウスを真似て建て増しが行われていた家なのだから、実はお化け屋敷そのものなのかもしれない。

 一般の人から見れば。


「ねぇ、藤枝ふじえださんも見てみたいと思わない?」


 今日の飲み会は新人の藤枝ふじえだたまき巡査と後から合流する加瀬かせ聖輝まさき巡査の歓迎会だった。

 そこに僕が呼び出されたのは、僕が特対課の人達と懇意にしている関係だろう。

 以前は彼等に警護され、そして今では特対課の抱える案件の特異性で僕や良純和尚が捜査協力することも間々あるという関係だ。


 加瀬巡査は現場へと駆り出されたメンバーと行動しているため不在だが、初めて会った藤枝は、なんというか、昔の僕を思い起こさせる人である。


 ずっと頭を下に下げて、盛り上げようと頑張る水野達の話題に少しも乗る気配など無いのである。

 明るい髪をキャバ嬢のように盛っているからか、下げた頭でも髪の毛はもこもことして、ずっと無言だからかぬいぐるみが座っているかのようだ。

 僕は彼女の様子を眺めているうちに、少し前まで頭を下げていた自分が、たとえその行為が自分を守ると頑なに信じていたとしても、僕を気に掛ける人全てに不快感を与えていたのだと身に染みた。


 ぱしん。


「痛いです。」


「お前まで頭を下げんなよ。」


 僕の頭を叩いて乱暴な言葉遣いをしたのは、誰よりも人には丁寧なはずの佐藤であった。


「あ、さっちゃんが酔っていないから危険になっている。ぽん酒、ぽん酒、熱燗で!早くお願い!」


 佐藤の親友である水野が、個室の襖を開けて店員を呼ぶその物凄く慌てだした様子に、僕はかなり驚き、座卓を挟んで僕の正面に座る目の座った佐藤を脅えながら見返した。

 彼女は手に持つグラスのビールをぐいっと飲み切ると、上半身を僕の真ん前へと乗り出して来た。


「おい。酒のつまみに、山口とのことを話せ。」


 ひいい。

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