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第二話 魔法

「悠真~、ちょっと丸太割りを手伝ってはくれんか」


「はい。今行きまーす」


季節は冬。男たちは村の倉庫に集まり、丸太割りをしているようだ。対する女たちは暖かい家で編み物や昼飯を作っている。そして悠真はというと民家で女の子たちと温もり暖かいお茶を飲んでいた。だがそんな温もりに浸っていられたのも束の間。悠真はこの老人村長アモルのクリスタル付きの杖を売りに出そうと提案してからというもの色々と肉体労働を押し付けられるようになった。よっぽど大事な物だったのだろう。だが、今になっても悠真は後悔していなかった。魔法の杖か何かは知らないけどいくらクリスタル付きといえども杖一本と村人の命ではどちらの方が大事なのかは決まっている。


「おお!来たか。悠真、太い丸太は全て切ったから後の小さいのは頼んだぞ」


辺りには太くない丸太が倉庫内に無造作に置かれており、それらを一つ一つこの石台の上まで運び切り落とすまでのことを考えると切る前から疲れてくる。だが、どうやらここへ連れてこられたのは俺だけではなかったらしい。倉庫内には俺以外にも一人同い年位のやつがいて、俺同様にこの薪の量を見て面倒くさそうにしている。


ところで俺がこの世界へ転生してからというもの俺は大体の自分の状況が理解できた。その中でも一番に驚いたことは俺の顔つきと体が15歳の見た目になっていたことだ。つまりは大人に頼ることができ、楽することができる。次に俺は絶世の美男になっていた。黒髪に大きな目、鼻は細くて高く、口は女の子の唇みたいに柔らかい。あと、顔が異様に小さい!どのくらいのイケメンかというとまず現実世界では見たことのないようなアニメ、漫画、イラストなどで出てくるような主人公並びにヒロインもしくはBL(ボーイズラブ)のイケメンたちのような顔なのだ。これには正直驚いた。なんせこの村の中でも絶対に一番イケメンだと自分でも確証できるほどのものなのだから。そんな感じで俺は自分を自画自賛しながら丸太を運び切るの繰り返しをしていると後ろからもう一人の丸太割りの犠牲者から声が俺に声を掛けた。


「なあ、悠真、まだ太いやつがあったから手伝ってくれないか?」


「ああ。わかった」


「よし、じゃあしっかりと丸太を支えておいてくれよな」


「はーい。おーけー」


悠真は丸太の両サイドを持って固定し、もう一人はできるだけ丸太の中心を狙って思いっきり斧を振る。


パコーン


丸太は太く、まだ成長中の体である俺たちはこれを数回しなければ丸太を半分まで切ることはできない。本来、そもそもこのやり方は支えている側が危険なため大人には注意されてはいるが、一回この倉庫から出て極寒の吹雪が舞う室外へ出てもう一度大人を呼ぶのは面倒くさい。だから俺と俺の目の前に立つ少年ラフはここ最近はいつも丸太切りに呼ばれているためこうして切るのを忘れられた丸太がある時は共同作業で切ることにしている。


そして全てを細く切り終えた俺たちは地面に落ちた薪を集め今村の家に配る用のものは倉庫の出入り口に置き、残りは奥にある大量の薪の上に積み重ねる。


「悠真、そういえば例のやつ持ってきたぜ」


「マジで? ナイス―!」


「じゃじゃーん! これを見ろ、親父が村長からもらった炎初級魔法の書だ」


「おお!」


「早速、見てみようぜ」


ラフは背中とズボンの間に挟んで隠してあった本を取り出し、興味津々な様子で本を開けるがそこにはまるで前の世界で言う英語辞典のような見た目で読み方と発音記号が載っていた。ちなみにこの世界は何故か日本語が主流なため言語に苦労することは無かったが、魔法書というものはどうやら別言語のようだ。


「とぅーむるぜいふらる、、、ぃめらる、、、、、」


「んんんんん、、、」


「全然わからない上に呼んでも発動しねーじゃん」


「だな。もしかしたら発音とイメージが違うのかもしれないな」


「指を上に立て、詠唱後火を想像しながら丁度指の上に火を乗せるようにイメージする。で、注意点は指に直接火が灯るようにすると火傷をしてしまうと。なるほど。トゥームルラゼイフェィラルメルゼイメラル、、、、、」


ボッ


ラフの指の上には小さな火が灯り、それはラフはコツを掴んだのか一本から二本、二本から三本とそれぞれの指の上に火を灯していった。だが、火の威力はあまり変わらないようなのでせめて発火させる程度しか利用方法が思いつかない。だがそれでも魔法初心者の俺とラフにとっては新鮮な光景であり、ラフは魔法が使えたことに喜んでいる様子だった。そして次に俺も詠唱する。本に載っている通りの詠唱方法と火が灯るイメージを名一杯した。だが、結局それから30分しても発動できることはなく、俺たちは取り敢えず薪を村の家々へ運びに行った。


次の日。

俺たちはまた丸太切りを任された。そして作業を早々に済ますとまた魔法を試した。ラフは最初の火を灯す魔法は覚えたようで次の魔法を試しそれも成功させていた。だが、俺は一向に火を灯すことさえできる気がしない。この書の始めページには『魔法は魔力の量により、効果が変わる。しかし、想像が乏しければいくら魔力があろうとも魔法がより上手く使えるようには決してなれない。故に想像豊かに集中して使える場所で魔法を極めなさい』とある。確かに想像豊かになるような場所でなければ集中できるような気温でもないことは確かだけど現代を生きて来た俺がこの世界の村人の子供でさえ発動できる魔法を想像できないというのはあり得るのだろうか。ラノベなら異世界転生した人は想像力が異世界の人間の何倍もあるから魔法がめちゃくちゃ強力で自由自在に使えるとかなんだろうけど現実は違うってか? そもそも俺に魔力がないとかか? ラフは体の底からオーラのようなものが出てきてそれを指先に集めるような感覚がすると言っていたが、俺にはそれがまるで感じられない。諦めよう。


元の世界では三日坊主などと言われることがあるが全くその通りである。三日目も俺は何も感じることはなかったため、それからというもの俺は魔法の練習をすることはなくなった。

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