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第一話 冬しのぎ

 目が覚めると悠真は自分が立っていることに気づく。周りからは心地よくそよ風が吹き葉が揺れる音がまた悠真の仕事で溜まった精神的な疲れを癒す。そう、悠真は大自然の中で立っていた。


「ってここどこ! え? 異世界転生って言ったら町とか都市とか神殿とかで目覚ざめたり赤ちゃんとしてお父さんお母さんがこっちを覗き込んだ景色から始まるとかじゃないの?」


 周り一帯は草木が茂っており悠真は森林の中に立っていた。地面は落ち葉で埋め尽くされており足の半分が埋もれている。とそこで一人の女の子が悠真に近寄ってきた。


「ゆうまぁ! もうここにいたの? 今日は父さんが町から帰ってくるから早く戻ってきなさいって言われたの忘れた?」


 少女は悠真にムッとした顔で怒ると悠真の手を取り歩き始めた。何故、この子は俺の名前を知っているのだろうか?少女の見た目はアニメやゲームに出てくるような美少女であり、ツンとした顔が可愛らしい。服装は予想していた通りの異世界の村人のような恰好、つまり布生地でできた服上下に皮靴。そして特に目立つのは彼女の紅色の長い髪の毛。こんな髪色の子、異世界しかないよな~。


「あの、君は誰かな?」


「ん? 悠真の妹だけど、、、え? どういうこと?」


 いや、どういうこと?と、悠真も頭の中でツッコミを入れた。自分でも精一杯考えたが、やっぱり意味がわからなかった。この少女は俺の妹と当然のように言っているがそれはおかしな話だ。それは今まで俺と共に生活してきたと言っているようなものなのだから。だがいくら考えてもこの状況が理解できないため取り敢えずこの子の兄とした態度でいようと思った。それにどうせあの自称神のことだから適当にそこらの人間に俺を乗り移させるとかしてそうだし。


「いや、何でもない。変なこと言ってごめんね?」


「う、うん」


 あ~、癒される~。もう何でもいいや。取り敢えずこの子可愛い。と、俺は口元を緩め歩いていると森から抜けたようで今度は周り一帯には田んぼで埋め尽くされていた。まるでそこは実家に戻ったかのような錯覚になるがここは決して元の世界ではないという確信がある。何故なら。


 悠真は天を見上げる。それからは太陽が差しており日を反射する雲からの光がとても眩しい。だがそんなことはどうでもいい。寧ろ悠真の目が釘付けになったのはその雲より向こうにある赤、黄色の惑星。二つの惑星は月より近く、とても大きく見えた。だがそれも悠真を興奮させる一部の素材でしかなかった。何故なら悠真の手を引いて歩く少女の後ろにはリスのような大きな尻尾が生えており、会話内容によって様々な動きをしていてとても可愛いのだ。


「おーい!カインのおっちゃん!もう父さん戻ってるー?」


「ああ。リズの実は後は俺がやっとくから早くクラフトさんのところへ行ってあげな!」


「うん!」


 田んぼを歩き続けること20分、デスクワークか車でしか営業へ行ってなかった悠真はそろそろ足が疲れてきており、休憩をしようとこの子に提案しようとしていると村が見えてきて、鍬を持った中年の男が門の前に立っている。村に入ると戦国時代の村々で出てきそうな丸太を存分に使った家がそこにはあった。


「父さん、お帰りなさい!」


「ああ、リーア。父さんがいなかった間、ちゃんとお母さんの手伝いはしていたのかい?」


「うん! 悠真はいつも通りうろうろしてただけだけどね!」


「ほう。なるほど!頑張ったな~よしよし」


 俺って期待されてないのな。というかいつも通りうろうろって俺、どういう設定なの?この年になってもまだ俺ってば何もしない設定なの?


 悠真は心底、自称神の適当さを実感しながら村の村人たちを見る。皆、元の世界だと美男美女に該当するような容姿をお持ちのようだが、ほぼ全員やせ細っていて栄養不足なのか顔色も良くない。俺の妹リーアはやせ細ってはいないが、服は砂や泥で汚れており裾が伸びている。


 俺が思うにここは普通の村よりも貧乏な村というものに該当するのではないだろうか。少なくとも普通の村っていうのはやや金欠気味だが食糧なら畑からの食材で乗り切ることができるような感じだと思うのだが。


「クラフトさん、村の工作と稲はどうだった?」


「ああ。売り上げはそこそこって感じだな。今年も冬は厳しそうだ」


「そうか。どうしたもんかのう」


 村の家々から村人がクラフトと呼ばれた俺の父?であろう男の周りに集まっていく。そして彼は幌馬車の後ろから積み荷を降ろしていくが、それら全てが服や干し肉などだった。クラフトの隣にはクリスタルの付いた杖を持った老人が立っており、クラフトは積み荷を降ろしながら何やら話している。


「この量では足りぬなぁ。もって2か月というところか」


「せめて狩りが出来ればようのじゃが、この村は運動神経の悪い者ばかりじゃからな。瞬発的な動きや動物を見つけるのも得意じゃないからのう」


「はぁ。。。」


 村人たちは一斉に溜息をつく。皆、やせ細っているのにそのうえ冬が越せないとなればますます心配だ。特に村長と呼ばれるクラフトの隣を立つ老人はかなりやせ細っているというより骨に皮があるだけのような見た目がよりこの村の深刻さを物語る。


「じゃあ、どうするの?」


クラフトと手を繋いだリーアは上を見上げ不安そうに父の顔を見るが


「いや~全く参ったな~! まあ、大丈夫だ。いざとなったら父さんがお願いして(土下座して)他の村に交渉(物乞い)してくるさ!」


「ふむ。クラフト、お前がそういうなら何も問題は無いじゃろう」


 いや、問題あるわ!というか小さい声で村長に土下座だの物乞いだの聞こえてんだよ。

大丈夫なのだろうかこの村。悠真はこの村の村人の一人になったことを残念に思う。まさか転生早々にこんな貧乏村へ送り込まれるとは誰が予想だにしただろうか。何が「金持ちへの些細な手伝い」だ。これでは金持ちどころかあと数か月で死にそうだ。あの自称神め。手伝いどころか逆に足引っ張られているような気がするのは気がせいだろうか。


 結局、クラフトは再び町に出て他の村々と交渉へ行くことになったが、結局交渉に成功した村からは冬を越すための食材を手に入れて来たのだがそれでも足りなかったため悠真の提案の元、村長の持っていたクリスタル付きの杖は売られ村は今年の冬を越すだけの食材を手に入れることに成功したのだった。


あと悠真が知る由もないのだが、この村から一番近いミストの町では今年も土下座のおっさんが町中を駆けていたと噂になったようだ。

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