第251話 卒業式
お待たせしました。
昔のことを思い出しながら書いてます。
エリーのお屋敷でパーティな訳だけど、今更ながらにビビってる。
だって、平民である私の快復祝のパーティをエリーとアイリ共同のもと個人的に開くって手紙でやりとりしてたじゃん?
ささやかでいいからねってお願いしたので、その通りだと思うじゃん?
それが会場に着いてみたところ、大変なことになっていた。
「エリー。アイリ。会場あってる? 私、間違って来ちゃったってこと無いよね?」
「ええ、間違っておりませんわ」
「いい加減諦めなさい。これもアンタのためなんだから」
「うー、分かった」
そう言われちゃったら仕方ない。
「私のため」って言葉は言外に「私を守るため」って意味があったりすると思うから。
平民の私が公爵令嬢のエリーや男爵令嬢のアイリと懇意にしてるってことは割と周知の事実。
エリーたちが卒業してからの2年間、私は全く姿を見せなかったことから、第三者からすると関係が途切れたと思われそう。
だから学校卒業後も繋がりがあり、暗に後ろ盾であることを知らしめるってことなんじゃないかな。
そうでなければ、私があんまり目立ちたくないってことを知ってるのに、わざわざこんなことまでしないはずだもん。
こんなことは学校で政治的な授業を受けなければ分からなかった。彼女たちの裏の意図を理解できるようになったからこそ申し訳なくなる。
まあここまで準備をしてもらってる状況で断るなんて選択肢は既にないんだけど。
もう考えるのが面倒くさいので素直に好意に甘えちゃおう。ちゃんとお礼できれば良いんだし。
「と言うわけでフランが覚悟完了したみたいだし、最後の準備をするわよ、エリー!」
「ええ」
「なになに、なんかまだあるの?」
「もちろんですわ。フランがいなければ始まりませんもの。スー」
「こちらに」
「ビクッとするフラン可愛いかよ」
確かにそこにいたけど、突然現れたように感じるんだよ。周りに溶け込むスキルが獣人の私からしてもヤバいんだから仕方ないじゃんアイリ。
「予定通りに」
「かしこまりました。それではフランシェスカお嬢様」
あ、何をされるのかわかった。
「お、お手柔らかにね?」
スーパーメイドことスーさんを筆頭としたメイド部隊にドナドナされる私。
そして制服をひん剥かれ、お風呂に放り込まれ、その後マッサージやエステによって磨きに磨かれる。
「むぁ〜気持ちいい〜。ありがとね〜」
エリーの家にお泊りした際、色々して貰うんだけど、今日のはいつにもまして念入りにしてくれてとても気持ちいい。
思わずとろけた声が出ちゃうのも仕方ないよね。
「恐れ入ります。ですが我々ではこれ以上フランシェスカお嬢様のお力になれず悔しいです」
「元が良すぎて衣装と髪型くらいしか手を出す余地が無いんですよね……」
「いったい何を食べたりケアをしたらこんなモチモチお肌やサラサラな髪に……本当に羨ましいです」
それは魔法のスキンケアに魔法のコンディショナーをしてるからだよ、文字通りの。
シャボンの実はボディだけじゃなく洗顔や洗髪にも使える優しい石鹸代わりになるものだけど、やっぱり多少はパサついちゃうしね。
とはさすがに言えないので
「うーん、1日3食美味しいごはんをいっぱい食べて、十分な睡眠時間をとってるから? あとは、ごはんの栄養バランスは偏らないようにとか清潔に保つとか?」
なんて月並みのことしか言えないけど。
「やはりそうですか……分かってはいるのですが、中々実践できずもどかしいですね」
「そうですよね。同じ女として羨ましい限りですが、それもフランシェスカお嬢様の努力の賜物。どうかこれからも我々にお世話をさせてください」
「うん、機会があったらぜひお願いします」
本来は平民の私より身分が上の彼女たちにお世話されるなんてありえないんだけど、そういうのは気にしないでと昔から言われ続けて今日に至っている。
だから素直に好意に甘えちゃう。
でも、たとえお仕事だとしても、お世話になってるのは事実なので、アイリと共同開発したハンドクリームなどをテスターとか理由をつけてプレゼントさせてもらってる。
こういうのは気持ちが大事だもんね。んふふん。
「フランシェスカお嬢様、そろそろお着替えを」
ですよね、スーさん。
エリーのお屋敷にはなぜか私のドレスが何着も用意されている。
今更お高級なドレスを着ることに臆したりしないけど、いつになってもドレスは苦手だ。
だってコルセットがきついし、ヒールで歩きづらいし、TPOをわきまえたお上品な所作が求められるからとても窮屈なんだもん。
猫獣人だから仕方ないよね。
いやまあお屋敷で開催するお茶会では都度着てるから慣れたって言えば慣れたのかもしれないけどさ。
それでもね、大変なものは大変なんだよ。
お高級ドレスで着せ替え人形されるんだもの。
まあそんな感じでめちゃくちゃドレスした。させられた。
スーさんを始めとしたメイドさんたちはニッコリ。
私はぐったり。
それでもようやく着替え終わった。
その服は、なんと学校の制服。
え、なんで!?
「会場の準備が整いましたのでご案内いたしますね。フランシェスカお嬢様、エントランスホールで皆様と合流し、合図ののちに中庭の広間へお進みください」
「え? うん、分かりました??」
わざわざ新品の制服に着替えさせられたり、なんだか分からないけど、とにかく行けばわかるっぽい。
そんなわけで勝手知ったるエリーのお屋敷のエントランスホールまで案内してもらうと、広間には制服の生徒たちが集まっていた。
「え!? なんでみんなが!?」
思わず上げた声が聞こえてしまったためか、一気に注目されてしまい、ちょっと、いや、だいぶ緊張する。
思わず変な体勢で数秒止まっちゃったけど、後退して隠れなかった私を褒めてほしい。
「見て! フランシェスカお姉さまが来ましたよ!」
「フランシェスカ先輩だ! あの可愛らしさと美しさ……素敵だ!」
これは、今は最終学年の後輩たちかな?
これって卒業式が始まる感じだよね?
みんなが集まったのって、もしかしなくても私のためっぽい?
どうやら私が色々とセットしてる間に準備が終わったらしい。
「フランシェスカお嬢様、最前列へどうぞ」
執事のスチュアートさんに促されるまま最前列に加わる。
後輩に並ぶ形だと留年したみたいでちょっと恥ずかしいけど、ちゃんとした理由だから全然変じゃないよね?
我慢我慢。
「お久しぶりです」などの挨拶には笑顔で対応する。
挨拶は大事だもんね。
「もふもふしたり、なでなでしたり、吸いたいわ……」
「俺を獣人萌えにした人……嫁に来てくれないかな……」
だけど欲望駄々漏れな目線を感じたり、声が聞こえてきたけどそちらはスルー。
ほどなくすると外から聞き慣れた声、エリーの声が聞こえてきた。
「皆様、長らくお待たせしました。それではこれよりサンライト王国 クロスロード国立学校の卒業証書授与式を執り行いますわ」
やっぱり卒業式だ!
なんとなくそうだとは思ってたけど嬉しい!
エリーの引き締まった美しい声による司会進行が行われているみたいだ。
学校じゃなくファーレンハイト家の中庭で行われているのか謎だけど、それも次の言葉で納得。
「今回の式は学校より特別に許可を得て当家にて開催させていただいております。司会進行を承っております私エリザベスよりファーレンハイト家を代表し、まずは関係者の皆様にはお礼申し上げますわ」
そうだ! 関係者!
お父さんとお母さんを呼んでないじゃん!
って、エリーたちが私に内緒で進めていたこの式で、私の両親呼ばないなんてありえないか。ちょっぴり不安だけど大丈夫だよね。
「それでは卒業生の皆様ご入場です。盛大な拍手をもってお迎えくださいまし」
「皆様、それでは中庭の中央広場へお進みください」
スチュアートさんから合図があり扉が開かれる。
ちょ、ちょっと!
早いよ!
別のこと考えてたから心構えが!
緊張する!
後ろがつかえるので逃げるわけにもいかず……ちょっとびくびくしながらエントランスホールを出ると、その光景に圧倒される。
「むぁー……!」
中庭を埋め尽くす人がたくさんいるのでそれはそれで緊張するけどそれはさておき、いたるところが飾り付けられておりとってもきれいだ。
それと、お父さんとお母さんは……いた!
良かった!
リンも一緒だ!
目があったけどさすがに手を振るわけにもいかないので、しっぽの先だけでゆらゆら合図だ。
後ろに続く人に当たらないよう注意だけど、こういう時は獣人って便利だよね。
ちゃんと両親やリン(妖艶な大人のお姉さんバージョン)がいた事で自分でもニッコニコなのが分かる。
いい感じで緊張もほぐれ、壇上前の最前列に到着。後続に続く後輩たちも全員揃った。
「卒業生が揃いました。これより卒業証書授与を執り行いますわ。それでは校長、ご準備を」
卒業式の運営は生徒会の在校生が主導となって行い、生徒会メンバー以外の在校生はいない。
私は初等部の頃に生徒会メンバーだったから事務局として対応したことあるから分かるけど、例年と違うことをするのってすごく大変なことなんだよね。
そんなわけで、今年度の生徒会はエリーの実家であるファーレンハイト家と連携したりと「凄い頑張ってるんだなあ」なんてしみじみ感じちゃう。
「校長のオズ・アーヴィングじゃ。それでは栄誉卒業生、並びに卒業生代表者は名を呼んだら壇上へ上がってくるのじゃ」
栄誉卒業生?
そんなのできたんだ。
首席が卒業生代表として呼ばれるんだけど、栄誉卒業生って一体誰なんだろう?
なんて油断してたところに声がかかった。
「栄誉卒業生、最終学年生、フランシェスカ」
…え?
「は、はいっ!!?」
き、聞いてないんだけどっ!?!?!?
説明っぽさが入ると冗長な感じがしてしまうんでしょうが、あまり気にせず入れてたら文字列が増え、少々遅れ気味に。
こんなことしてるからずいぶんと延びてるんでしょうね。。




