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84、見舞い(ノリコSide)

「誰?」

「え・・・もしかしてリノちゃん?」


内容はよくわからなかったけれど、言い合いをしている声が聞こえてくる病室のドアをノックし、はいという返事があったのでドアを開けると。

テレビでよく見ているかわいらしい顔の黄田さんが、私を見るなり怪訝な顔をし。

緑川さんは目をパチクリとさせた後、どうやら私だとわかったようで、ほぼ同時にそれぞれが声を発した。


「初めまして、変装メイクをしていないのでわかりにくいと思いますが、正真正銘の風町リノです。黄田さん、お加減いかがですか?」



鎌倉のディナーショーの翌日の午前、私は黄田さんのお見舞いにやってきた。


昨日はあれからミッチーとヤスシで気絶した父親の弟を東京から呼んだという車に乗せ、どこかへ連れて行ってしまった。

緑川さんは春川さんが運転する車で、東京の自宅まで送っていくということになり、

ディナーショーやホテルの後片付け等は南川社長と真矢さんで行って、戸田さんが私を家まで送ってくれた。

つまりあれからすぐ、詳しい話もせずに解散ということになったのだ。

早朝にミッチーから電話が入り、詳しいことは一切説明がなくとりあえず片付いたと言われ、私の方は大丈夫かと聞かれた。

私の方は大丈夫だけど、ヤスシは・・・と聞くと、浜田ジョーや銀座で見かけた神崎命のことが気になるようで、偶々土曜日で休みだからそっちを調べるということになったそうだ。

せっかく午前中空いていたし、ヤスシと少し会えるかと思ったのに・・・と心の中でガックリときたけれど。

元は私の家の事が原因だ、仕方がないと思い直したら、ふいに緑川さんの事務所の事情が頭に浮かんだ。

それで、かいつまんで移籍の話をすると、ミッチーが私に黄田さんのお見舞いに行けと言い出した。

自分も後でそこに合流するからと。

緑川さんはいいけれど、初対面の黄田さんのお見舞いにいきなり行くのは正直ためらわれたけれど、これも何かの縁だと思い行くことにした。

でも、流石に1人では行きづらくて、マサルについてきてもらうことにした。

有名人のしかも若い男性のお見舞いに女1人で行くのも気が引け、仕方がないので風町リノとわからないよう、化粧をしないで高校生カップルを装い訪ねることにしたのだ。




私の『変装メイク』というワードにクスクス笑う緑川さんと。


「『変装』じゃないじゃん、『詐欺メイク』だろっ!」


と、初対面でいきなり毒を吐く黄田さん。

今までイメージとしてとらえていた天真爛漫さは、完全にキャラだと気がついた。

隣のマサルが瞬時に、黄田さんの言葉にムッとするのが分かった。

マサルは気が弱いけれど、私が学校でいじめられたり酷い暴言を吐かれたりした時は、へっぴり腰ながら躊躇うことなく誰であろうと怒ってくれた。

まぁ、それで逆にいじめられて、私が助けるっていうパターンも多かったんだけど。

流石に昨日の父親の弟の件で内心落ちていた私は、そんなマサルの私を庇ってくれる変わらない態度に、密かに救われた気持ちになった。

だから、私はにっこりと笑って。


「『詐欺』は酷いですよ。化けて粧うって書いて『化粧』なんですから。先に『化けるって』宣言してます。つまり、変装です。化けてません、装っていません、これ素顔ですって言ったのなら詐欺ですけど。化粧って言ってますから・・・決して、騙していませんから。」


と、思いっきり屁理屈をこねてやった。

すると、黄田さんはふんっと鼻を鳴らし。


「変な女!」


と、一言。

なんか、嫌われたっぽいな。

これじゃ、うちの事務所に移籍したいっていう話もうまくいかないんじゃ・・・と、正直思った。

だけどまぁ・・・せっかく来たんだし、とりあえずお見舞いの品を渡しておこうと思い、家の近所の和菓子屋さんの餅入りどら焼き15個入りの箱を差し出した。

それと、マサルんちの店で売っている高級甘酒350mlの4本セットを1パック。

私が、気持ちばかりですけどお見舞いですと、それらを差し出したけれど。


「何だよ、どら焼きって。田舎臭いな。それに、甘酒って・・・どういうチョイスだよ。しかも、4本セットって・・・病人に4って数字、不吉だとか思わないのか?まったく、デリカシーのない女だなっ!」


虫の居所が悪いのか、それともやっぱり私が気に入らないのか、凄いとしかいいようのないこじつけの難癖を、見舞い品につけてきた。

私はあきれを通り越して子供みたいなヘソの曲げ方に、少し面白くなってきたけど、マサルは元々繊細でこういう暴言に対してはまともに受けてしまう気質があり・・・つまり、冗談がきかないタイプなのだ。

私はきっと、叔母ちゃんちにひきとられるまで暴言を吐き続けられたせいなのか、これくらいのこと何でもない。

だから、マサルが早々に黄田さんの言葉にキレてしまい。


「悪かったな!田舎臭くて!だけど、ここの店のどら焼き旨くて地元でめちゃめちゃ人気があって、早々に売り切れるから、ノリコは開店が朝8時なのに、6時から店に並んで1番人気の餅入りどら焼き買ってきたんだよ!俺だって、昨日のディナーショー、スゲェ良かったから・・・今度は、2人そろって早く歌ってほしいって思ってるんだ!元々『オリーブ』のファンだったし、ノリコが甘酒は点滴と同じくらい栄養が高いから、うちの人気商品の甘酒セットにしようって提案したし、電車で運ぶの重かったけど、栄養取って早く良くなってほしいって思いながら来た俺たちの気持ちなんか、田舎臭いとか、デリカシーがないって言葉で否定されるんなら、ノリコ!もう帰ろう!」


マサルが真っ赤な顔で、感情的に一気にしゃべった。

あっけにとられる黄田さんと、あっ・・君、昨日の!とマサルを指さした緑川さん。

そういえばまだマサルの紹介をしていなかったと気が付いて、慌てて私の幼馴染だと紹介した。


「昨日はありがとう、ギターが壊れてどうしようかと思っていたら、リノちゃんが一番前の席の君に、ハーモニカもってる?っていきなり聞き出して吃驚していたら、君がハーモニカだすし・・・だけど、結果アカペラで歌うことに決めて、そのハーモニカの音で、音程を取ったんだよねぇ。そっか、君家族と一緒だったし、応援がそこのテーブル凄かったから知り合いだとは思ったけど・・・本当に、仲がいいんだね。」


緑川さんが、私とマサルを見比べながらそう言った。

すると、さっきの暴言がまったくなかったことのように、黄田さんが話しかけてきた。

マサルに!


「その、甘酒って・・・君の家の店の商品なのか?確かに、鎌倉からだとこれ持ってくるの大変だったよな・・・そんな気持ち考えずに、勝手な事言って悪かった。」


さっきまでの態度が嘘のように、悪かったと頭を下げた。

そして、黄田さんがニコニコを笑顔になり、甘酒旨そうだな・・・ありがとうと礼まで言い出した。

マサルに!

マサルだけに!!




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