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83、強い女は最高(ヤスシSide)

小さなノリコを虐待した理由を問いただしたら、反吐が出るような答えが返ってきた。

あぁ?順番だぁ?ムカついただぁ?八つ当たりだぁ?ふざけてたぁ?挙句の果てに、おもしろいって何だそれ・・・。


俺は、そいつの言葉があまりにも酷くて、一瞬頭の中が真っ白になっちまった。

だけど、すぐに腹の底から怒りがわいてきて、こいつを殺してやると本気で思い、足を踏み込みかけた時。


ドンドンッ!!


すんげぇ勢いで、入り口のドアが叩かれた。

そう、ノックなんて可愛いもんじゃなく、ドアをぶっ壊すんじゃねぇかっつうくれぇの勢いだ。

一瞬、こいつの仲間が来たんじゃねぇかと思ったが、広瀬がそこらへんは厳重に注意してロビーに人員を配置してるから、そういうんじゃねぇとすぐに考えを打ち消したが。

ミチルが低い声で戸田に出ろと支持をしてから、ガンッと男を座らせているソファーを蹴った。

ミチルも俺と同様腸が煮えくり返ってんだろうが、その衝撃で革張りのすげぇ高そうなソファーに穴が空いた。

やっぱ、ミチルは唯もんじゃねぇ。

部屋の中の空気が、ミチルの怒りでビリビリとしている。

途端に大人しくなる、男と戸田。

その空気に戸田はビビリ、酷く敏速にドアを開けた。

そして、ドアを開けるや否や、ノリコが部屋に飛び込んできた。

ショーが終わったままというシンプルだが、綺麗な黄緑色のドレス姿で。

そういう色も似あっていて、綺麗だなと素直に思ったが。

ノリコの顔は、酷く強張っていて・・・つい今しがたの会話がノリコに聞こえてしまったんだと、ノリコを傷つけてしまったんじゃねぇかと後悔した。

だけど、ノリコはやっぱノリコで。

男の前に仁王立ちになり、大きく息を吸い込むと。


「殴られて育ったから、下にもそうするって、馬鹿じゃないのっ!!そんなことしたら、いつまでたっても、誰も幸せになんかなれないじゃない!私は、殴られていっぱい煙草で火傷の痕つくられたけどっ、私の子供にはそんなことしない!愛されなかった分、人の倍、自分の子供を愛して、可愛がって、幸せにして、私も幸せになるんだからっ!」


ノリコなりの啖呵を切った。

その啖呵が、すんげぇノリコらしくて、すんげぇ格好良くて。

すんげぇ切なくて・・・すんげぇ泣きたくなるほど必死で。

そして、腹の底から、俺がこいつを幸せにしてぇって思った。

そう思ったら、俺はたまらなくなって、男の前に足を震わせながら必死で立つノリコの腕を引き、思いっきり抱き込んだ。

ノリコの体が震えるのを抑えるように、必死で抱きしめる。

だけど、なかなか震えが止まらなくて、どうしてもやれない俺が情けなくなった時。


「ヤスシ、泣かないでよ。私は、こんなことで今更傷つかないよ。大丈夫だから・・・。」


ノリコが俺の腕の中でそう言うと、俺をギュッと抱きしめ返してきた。

そこで初めて、体が震えているのがノリコではなく、自分自身で。

あの男の言葉に傷ついたのが、俺自身だったと気がついた。


「おめぇは、やっぱ強ぇな。強くて・・・俺には勿体ねぇくらい・・・最高だ。」


ノリコが踏ん張っているのに、自分の様を顧みて情けねぇと自嘲するようにそう言うと、ノリコが首を横に振った。


「違うよ。私が強くなれるのは、皆が私を大切に思ってくれるからだよ。ありがとう、ヤスシ・・・ミッチーもありがとうね?」


そして、そんな風にけなげなことを言いやがるから、ミチルまでクシャリと顔を歪め。


「ノリコだって、俺の事大切に思ってくれるじゃん。俺、だからスゲェ幸せなんだよ。エミちゃんだって、史子ママだってそう思ってるよ。だから——」


そこまで言うと、男に向かって目を吊り上げ、男の胸ぐらをつかんだ。


「いいかっ、酷い虐待をうけたって、ノリコみたいに真っすぐな心の人間だっているんだっ。さっきのお前のノリコを虐待した理由は、単なる言い訳だっ!!」


そう言って、掴んでいる自分の腕を高く上げ、男の足が床から完全に離れている状態になった。

つまり・・・。


「ゲホッゲホッ・・・は、はなし・・・て・・・いき・・で、き・・・・。」


いや、どう見ても細いミチルが腕一本で、ガタイのいい男を高く持ち上げて、窒息させようとするなんて、どんなバカ力だよと呆れかえっていたら。


「ミッチー、流石に人殺したらシャレになんないから。しかも、緑川さんに迷惑かけるし。」


冷静な声でノリコがミチルを止めた。

つうか、緑川って誰だよ?そう思って、ドアの方を見たら。

ノリコのドレスとおそろいの生地のシャツを着た男が、俺を見ていた。

何か、その男に見覚えがあるなと思ったら。


「え、『オリーブ』?・・・ノリコなんで、ここに『オリーブ』の片割れがいて、おめぇとおそろいの服着てんだ?」


よく考えりゃ、ノリコはステージ衣装なんだから、そいつもステージ衣装で、今までノリコのショーに出ていたことがわかるはずなんだけどよ。

何か、そいつがいい男で、妙にノリコと並んでそん色ないっつうか、雰囲気がしっくりきてるっつうか・・・・まぁ、完全にやきもちやいたんだけどよ。

カッときちまったものは、しょうがねぇし。

しかたがねぇから、俺はミチルの腕から男を横取りすると、とりあえず腹をけり上げた。

男の腹に膝が上手く入ったのに気を良くし、俺はだんだん調子が出てきて。

縛ってたんじゃつまんねぇから、縄を解いて男が咄嗟に逃げようとしたところを、回し蹴りして。

崩れそうになったところを、腹に3発ぐれぇパンチをいれて。

顎があがったところで、アッパーを綺麗に決めた。

そうしたら、気絶しやがった。

まだ、30秒もたってねぇじゃねぇか。

そう腹ン中で毒づいて、舌打ちをしたら。


バシッ!!


そこらに置いてあった雑誌を丸めて、ノリコが俺の頭を思いっきりはたいた。


「ヤスシッ!また、あんたはこんな無茶してっ!ここ広瀬さんの部屋なんだろっ!あんたが無茶するから、部屋ン中グチャグチャで、ゲロだらけじゃないかっ!どうするんだよ、これっ!!」


やっぱ、強ぇノリコは最高だと、雑誌で殴られた頭をさすりながら俺はクスリと笑った。

すると、革張りのソファーに穴をあけたのがミチルだと知り、ミチルも丸めた雑誌ではたかれて、俺と同様クスリと笑っていて。

きっと、俺と同じこと思ってやがるなと、ますます可笑しくなった。


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