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43、番組終了後(ノリコSide)

歌の後のトークに、私は参加できなかった。

CMに入った途端、怒った顔の番組プロデューサーに腕を引っ張られ、私の服装が汚らしいからこれ以上画面に映るなと、スタジオから出されてしまったからだ。

焦る真矢さんと、憮然としているミッチーにも、段取りが滅茶苦茶だとプロデューサーは怒っていて。

私はその様子を眺めながら、どうせ事実を話したところで豪徳寺さん贔屓のようだから聞き入れてもらえないだろうと、早々に諦めていた。

まぁ、予定と全く違うことをしてしまったことは事実だし仕方がないかと、私は楽屋に戻って着替えることにした。



番組プロデューサーの怒りを買ってしまって何となく居心地が悪くなり、私は化粧を落とさず着替えだけをさっさとすませ荷物をまとめていたら、戸田さんが尋ねてきた。


「ノリコちゃん、何でトークでなかったんだ?番組終わったけど、スタッフが焦ってさがしていたぞ・・・そうだ、足、大丈夫だった?」


戸田さんは私の足にホットココアがかけられたことを思い出したようで、まだ裸足のままの私の足の甲に目をやった。


「げっ、赤くなってるぞ。つうか、右足水膨れできてないか?」


ジンジンヒリヒリしていたけれど、本番前と慌てていた事ですっかり忘れていて、今頃になって痛みがぶり返してきた感じだ。

しかも、裸足でスタジオを動き回ったから、足の裏を擦ってしまったようで、更にそちらも痛くなってきていた。


「今頃、痛くなってきました。でも、咄嗟に戸田さんに水をかけてもらったからこれですんでいるのかもしれませんねぇ。」


あまり心配をかけたくなくて、できるだけのんびりとした口調で言ったのだけれど。

戸田さんが車で来ているから、近くにある知り合いの病院へ行こうと言い出した。


「いやいや、大袈裟ですって。水膨れのところはアロエ塗っておけばきっとだいじょうぶですよ。」


と、言ったのだけれど・・・電話をしに行っていたミッチーが戻って来て、このまま帰ったらエミちゃんが怒るぞと言うもんだから、仕方がなく病院へ行くことにした。

だけど、スタッフの人が困った顔でやって来て、番組プロデューサーが呼んでいるから会議室へ来てくれと言われた。




会議室には、番組プロデューサーとディレクター、そして豪徳寺さんと豪徳寺さんのスタッフらしき年配の女性がいて、皆怒りの表情を浮かべていた。


私の方は、真矢さんと何故かまだサングラスをかけたままのミッチー、そして流れでなのか戸田さんまでついてきた。

その戸田さんをみて豪徳寺さんの目が吊り上がり、関係ない人は出て行ってそもそもあなたは私の方のスタッフでしょう何でこの子に花を用意したの誰が指示したの?花の代金は番組に請求してもムダよと捲し立てた。


あんなに品のよさげな女性がこんな風になるなんて、私は開いた口がふさがらず。


「ノリコ、口・・・空いてる。おもしろいけど、一応芸能人だから・・・クククッ。」


ミッチーが笑いながら、そう私に指摘した。

その、豪徳寺さんを気にしないミッチーの態度に、番組プロデューサーが不快そうな顔で。


「君、一体誰に断って、伴奏をしたんだ。風町リノの伴奏は、今日ずっと通しで弾いてもらえる奏者をたのんであったんだ。それを勝手に・・・しかも、あんな滅茶苦茶な演奏をして、一体この責任はどう取ってくれるんだっ!風町リノッ、お前ちょっとデビュー曲がチャート入りしてるからって、いい気になるなよっ。お前なんか、消すの簡単なんだぞっ!」


と、怒鳴り散らした。

まぁ、言っていることの前半は勝手なことをした私の方・・・というか、ミッチーにも非があるから、言われても仕方がないんだけど・・・私、いい気になってないし・・・というより、テレビ局のプロデューサーが私を消すって、そんなに簡単にできるものなのだろうか。

私がそんな疑問に首をかしげていたら、突然会議室のドアが乱暴に開かれた。


「馬淵プロデュサー、一体どういうことなんだっ。君の担当の番組に、視聴者からのクレームと問い合わせが殺到しているんだが!」


そう言いながら飛び込んできたのは、スーツ姿の年配のちょっと偉そうな男性。

という印象をもっていたら、やはり偉い人だったようで。


「きょ、きょ、局長!?」


さっきまで私を簡単に消すとかなんとか言っていたプロデュサーは、突然大人しくなってしまった。




結果的に、私と豪徳寺さんのセットがあまりにも違って、視聴者からいくら新人だからって酷いという電話がテレビ局へ殺到したらしく。

最初はコンクリートの壁が演出だと思われていたそうなのだけど、私がシャウトしてスタジオ内を動き回ったせいで、セットではなくただのスタジオの壁だとカメラに映ってしまた。

セットが豪華なことがこの番組のウリでもあるのに何だこれは、それに新人歌手が足に怪我をしているように見えるが大丈夫なのかと、電話がなりっぱなしだそうだ。

あっという間に処理しきれなくなり、局長にまで話が届き慌てて事情を聞きにやってきたところで、会議室からプロデューサーの暴言が聞こえてしまった。

すかさずミッチーが事の経緯を説明し、私の火傷やケガまで話すと豪徳寺さんにこれはイジメと傷害だと言い放ち、あっという間に事態は逆転。

しっかり、謝罪を受けた。




『やっぱなー、俺が言った通りだったろ。豪徳寺性格悪すぎだな。しかもそのプロデューサーとデキてるだろ。』


夜中の12時の電話。

テレビ局にそれだけ電話が殺到したとなると、ヤスシもきっと心配しているだろうと思い、事の経緯を説明した。


「えっ、だってあのプロデューサー、50歳くらいだよ!?まさか、豪徳寺さんがそんなこと・・・。」


驚く私に、おめぇはわかってねぇなぁと笑われた。


「だって、ヤスシは本人たちを見てないからそんな飛んでもないこと———『わかったわかった。それよりも、今日の詫びに、こんど1人で出演させてもらえるんだろ?すげぇじゃねぇか。おめぇ、ホントタフだよなぁ。転んでもただじゃ起きねぇって・・・クククッまぁ、今日の歌滅茶苦茶よかったしよぉ。シャウトもすげぇ格好良かったから、実際視聴者の評判良かったと思うぜ?今度は、意地悪ババァ気にせず思いっきり歌えるじゃねぇか。よかったな。』


そう、嘘みたいな話だけど。

実は、今日の件で局長さんに平謝りされ、病院代も戸田さんが持ってきた高そうなバラの代金も出してくれるって言うし、おまけに1か月後にリベンジということで、その日はゲスト1人での出演が決まってしまったのだった。

まぁ、ミッチーがかなり怒っていて、今後この番組だけじゃなく、この局では自分の作った曲は使わせないと言い出して。

そこで初めて、私にずっとついていたサングラスのギター弾く男の正体がわかったようで。

大騒ぎになった。

そりゃあ、数々のヒット曲を世に送り出してきたミッチーが、自分の曲を使わせないとなったら、大ごとだもんね。


で、とうとうテレビ局の社長まで出てきて謝罪。

こんな大の身分のある男の人が、こんな小娘に頭を下げるってこっちとしても居心地がわるくて、もういいじゃんとミッチーに伝えたら、私1人で今度番組出演の条件を出した。

しかも、今後豪徳寺さんとは共演NG・・・速攻で、テレビ局側はそれを承諾して、次の仕事も決まってしまったのだった。

本当にびっくりだ。






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