悠樹&莉奈【完】
最終話です。
【悠樹視点】
あれから3年が経過し……俺は二十七歳になった。
あかりとはあの水族館デートから交際を始め……去年の春に籍を入れた。
結婚式は派手さこそなかったが……両親や友人達が集まって、俺達を祝福してくれた。
父と母は特に、ようやく立ち直ってくれたと涙を流して喜んでくれていた。
俺にレンタル彼女を紹介してくれた木村も来てくれた。
『俺のおかげでこんな可愛い子と結婚できたんだ、末代まで俺を称えろよ?』
若干、恩着せがましいことを言われたが……まあこいつのおかげであかりに会え訳だからな。
『へいへい、ありがとうな』
俺なりの感謝だけは伝えといた。
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「ふぅ……朝はやっぱりコーヒーだな」
今日は休日で、リビングのソファでコーヒーを飲んでいる。
キッチンからは味噌汁の匂いが漂ってきて、あかりが朝食を作りながら鼻歌を歌っているのが聞こえる。
味噌汁とコーヒーなんてアンバランスな気もしなくはないが、俺は昔からはこの組み合わせが好きなんだ。
「悠樹さん、もうすぐできるよ」
「あぁ、いつもありがとう」
結婚したばかりの頃は、あかりの後ろ姿に、莉奈の後ろ姿が重なっていた。
俺に背を向け、レンタル彼氏の元へ走っていったあいつに……。
まあ、今はあかりしか見えてないがな。
今こうして振り返ると……あのつらい日々が遠い昔話のようだ。
「悠樹さん、聞いてる?」
「あ、ごめん。なんだっけ?」
あかりの声でふと我に返った。
なんか、いつの間にかテーブルに料理が並び始めていた……少し振り返りすぎたな。
「今度の連休、温泉行く話。お義母さんも誘ってもいいかなって」
「おう、いいんじゃないか。 母さんも父さんも喜ぶと思うよ」
「じゃあ、これ食べたら行き先決めよっか?」
「そうだな!」
あかりが笑い、俺も笑う。
それが俺の日常であり、俺の宝物だ。
あかりがそばにいてくれたから……莉奈にボロボロにされた俺の心に温もりが甦った。
そんなあかりが……俺は好きだ。
これからも彼女と幸せに向かって頑張っていきたい。
レンタルから始まったこの気持ち……だけどこの気持ちは嘘じゃない。
それだけは……胸を張って言える。
【莉奈視点】
あれから3年の月日が流れ、私は27歳になった。
たまの休日だというのに、私は今日も部屋でスマホの画面とにらめっこしている。
もちろん、周りには誰もいない。
SNSには幸せそうな投稿が溢れかえっている。
その中でも目を引いたのは、私を騙した颯斗君の投稿だ。
『祝! 嫁のお腹に新しい命が!』
あの結婚詐欺師は結局、例の浮気女と結婚し……子供までできたらしい。
SNSには他にも幸せそうな颯斗君と浮気女の写真がずらりと並んでいた。
颯斗君は今でも、私を裏切ったことを何とも思っていないんだろう。
「地獄に堕ちろ」
私の中に残った恨みが、幸せに満ち溢れた颯斗君と浮気女の写真に呪いの言葉を送った。
だけど……なんだか空しい。
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私の人生は狂ってしまった。
ただ……狂ったのは私ばかりじゃない。
私にレンタル彼氏を紹介した張本人である美咲だ。
『ねぇ知ってる? 莉奈にレンタル彼氏を勧めたのって美咲なんだって』
『聞いた聞いた。 ありえないよね?』
『美咲って、ちょっと抜けてるところがあると思ってたけど……ここまでくると異常よ』
『私、あいつとよく遊びに行くからさ……旦那にレンタル彼氏利用してるんじゃないかって疑われたんだよ? マジで最悪』
『あの子と関わるのやめよ? こっちまで非常識だと思われる』
私の転落話が広まっていくのと連動して、美咲が私にレンタル彼氏を勧めたことまで掘り起こされた。
美咲は周りから”無責任に人の人生を狂わせた最低女”と責められ、今では誰からも距離を置かれているらしい。
そのストレスから、ますますレンタル彼氏に貢ぐようになり……親からも呆れられていると風の噂で聞いた。
そして私を捨てた悠樹も結婚したと聞いた。
きっと例のレンタル彼女だろう。
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私の前から去っていった悠樹と颯斗君……そして私から2人を奪った泥棒猫共が幸せを手にし、私だけ不幸のどん底に沈んでいるのが不公平でたまらなかった。
でもそんな私に……新しい出会いがあった。
半年前、私はマッチングアプリで知り合った大輔さんという人と付き合い始めた。
彼は優しくて仕事もちゃんとしていて……私を大切にしてくれた。
やっと幸せになれる、そう思っていた。
そう思っていた矢先……。
大輔さんから話があると近くのカフェに呼び出された。
「莉奈、ごめん。別れてほしい」
「……え?」
開口一番、大輔さんの口から耳を疑う言葉が飛んできた。
「好きな人ができたんだ。 だから莉奈とはもう付き合えない」
「すっ好きな人? 大輔さん、浮気してたの!?」
「浮気なんてしてない。 彼女はレンタル彼女だ。
俺、1ヶ月くらい前から友達に勧めてもらったレンタル彼女を利用してたんだ。
最初は癒してほしかっただけだけど、気が付いたら彼女のことが本気で好きになっていたんだ。
もちろんレンタル彼女だから、手を繋ぐ以上のことはしてない」
「は……はぁ!? なによレンタル彼女って! やっぱり浮気じゃない!!」
「馬鹿なこと言わないでくれ。 レンタル彼女相手とデートして、浮気になる訳がないだろう?」
「私達、半年付き合っていたじゃない!
なのに、たった1ヶ月デートしただけのレンタル彼女を取るの!?」
「付き合った時間とか関係ないだろ? 俺は莉奈に冷めて、彼女のことが好きになった。
それが全てだ」
「ふっふざけたこと言わないで!!」
そう責め立てると、大輔さんはなぜか乱暴にテーブルを叩いた。
「ふざけてんのは莉奈だろう!? 莉奈はいつもいつも仕事で、なかなか俺と会ってくれなかったじゃないか!!
それでどれだけ俺が寂しい思いをしたと思っている!!」
「そっそれは仕方ないじゃない! 私、生活が苦しいんだから!
大輔さんにもそう言ったでしょう!?」
それは本当だ。
颯斗君との件で、私の貯金はほとんど底をついていた。
このまま大輔さんと一緒になったら、彼に迷惑が掛かる。
だから私は、バイトを掛け持ちして……少しずつ貯金していたんだ。
もちろん、会えない分……こまめに大輔さんと連絡を取り合っていた。
「無理はしなくていいって……俺は大丈夫だからって……大輔さん、いつも言ってくれていたじゃない!!」
「そんなの強がっていただけだ。
本当は会えなくてすごく寂しかったんだ、そんなことも察せられないのか!!」
なによそれ……そんなこと一言も言っていないのに、察せられるわけがないでしょう!?
私はあなたのお母さんじゃないんだから!
「莉奈には悪いけど、俺は彼女と本気で一緒になりたいんだ。
もう1度言う、俺と別れてくれ」
大輔さんはそう言い残すと、さっさと私の前から去っていった。
1人取り残された私は呆然としていた。
そしてふと、悠樹に婚約破棄を突き付けたあの時の光景が脳裏に蘇った。
『何度でも言う。 悠樹……あなたとの婚約は破棄する』
あぁ……そうだ。
今わかった……大輔さんに別れを告げられてから感じていたデジャヴのような感覚。
大輔さんが私にした仕打ち……全部私が悠樹にしたことだ。
そうか……悠樹もこんな気持ちだったんだ。
パートナーのために一生懸命、頑張って来たのに……”寂しい”の一言で全てぶち壊した。
あの時は、颯斗君のことばかり考えていて全く気が付かなかった。
でも……悠樹と同じ立場になってようやく理解した。
私が悠樹にどれだけひどいことをしたのか……あの時の悠樹がどれだけ傷ついたか。
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しばらくして私はアパートに帰り、ベッドに倒れ込んだ。
「えぐっ……」
悲しくて涙が止まらなかった。
大輔さんに捨てられたことじゃない……悠樹との将来を自分の手で台無しにした後悔と愚かだった今までの私に対する怒りだ。
やっとわかった……やっとわかったよ、悠樹。
6年間……私を愛し、プロポーズしてくれた悠樹。
私が本当に求めていたのは……悠樹だったんだね。
”なぜ悠樹は結婚できて、自分は結婚できなかったのか”
今までわからなかったその答えがようやくわかった。
だけど、もう遅い。
全てが手遅れだ。
悠樹は私以外の女と結婚し、幸せに暮らしている。
もう……私の幸せは帰って来ない。
私が何もかもぶち壊したんだ……。
「悠樹、ごめんなさい……ごめんなさい」
どんなに謝っても……悠樹には届かない。
いや、届いたところで彼は何も思わないだろう。
「……」
ふとベッド脇の引き出しから写真立てを取り出した。
それは悠樹に復縁を申し込むきっかけを作った悠樹と私が最後に撮った写真だ。
粉々になった写真立てのガラス……私がぶち壊した悠樹との6年間を暗示しているようだ。
「ねぇ、悠樹……お願い。
嘘でもいい……嘘でもいいから……私にもう1度、プロポーズしてよぉ」
写真の中の悠樹に、私は懇願した。
我ながらみっともないお願いだと思った……でも。
”もう1度、あの頃に戻りたい……”
そんな叶いもしない願いが口から漏れてしまった。
だけどいくら願っても、過去にはもう戻れない。
悠樹との6年間の愛を捨て、ひと時の癒しを提供してくれるレンタル彼氏を取った私に残ったのは……楽しかった思い出と、後悔だけだった。
ようやく完結させることができました。
AIにほぼ任せるつもりでしたが、気がつくと毎話7割くらい改善&修正してました。
もちろんAIが元の文章を書いて、チェックする分は以前よりも快適に思えました。
AIも良い改善だと褒めてくれてました。
また何か思い付いたは書いてみます。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。




