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ぜんうさ。  作者: 月白
7/13

7 芽生


 こはるが転校してきて数日……


 キーンコーンカーンコーン


 授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。


「やっと終わった〜」

「ねーねー今日放課後どうする?」


 ざわざわと賑やかになる教室。


 こはるは広げていたノートの上に、頭を机に突っ伏していた。


(所作で文字を書く練習はやったけど……


 勉強がこんなに大変だとは思わなかった………)


 授業中、なんとなく分かることもあれば、わからないことも多い。


 その度、根が真面目なこはるは、慣れない板書をしながら、置いていかれないよう必死についていこうとしていた。


 こはるの頭は、完全に燃え尽きていた。


 隣の席から、ふと視線を感じた。


「大丈夫?」


 雪斗だった。


「あっ、はい!たぶん大丈夫です!」


 慌てて身体を起こし、ノートを閉じるこはる。


 その勢いで、机の端に置いてあった自分の消しゴムが……


 コトッ


 机から落ちた。


「あ——」


 その瞬間。


 すっ


 ——気付いたときには


 こはるの手の中には消しゴムがあった。


「……え?」


 雪斗が目を瞬かせる。


「あぶなかったぁ……」


 落ちる前に消しゴムをキャッチしたこはる。


「よく取れたね……」


「え?そうですか??」


 少しだけ不思議そうにしながらも、雪斗は教科書を片付け始めた。



「ねえねえ、月城さん!」


 後ろから声をかけられる。


 振り向くと、そこには数人の女の子。


 転校してからの数日は、いろいろな人が……


「前の学校どんな感じだったの?」

「今まで、どんなところに住んでたの?」

「かわいいよねぇ!彼氏は?」


 などなど……


 基本臆病で人見知りなこはるは、毎回質問の嵐に困っていたのだが………


 そんな時に、


「はいは〜い、そうやって一気に質問しない。月城さん困ってるよ〜解散解散!」

「っていうか、普通に邪魔だよ」


 と、毎回助けてくれたのがこの2人。


 水瀬渚と成瀬紅葉である。


 2人が気にかけてくれたおかげで、今ではある程度落ち着いて学校生活を送れるようになっていた。


「これから暇?紅葉と商店街の喫茶店に行こうと思うんだけど、よかったらさ!一緒にいかない?」

「新商品のバスクチーズケーキ。これは一度食べておかないと」


 突然のお誘い。


 人見知りのこはるでも、この2人にはもう警戒心はほとんどなく、ある程度普通に接することができるようにはなっていたのだが……


「…え?」


 人間どうし、どうやって仲良くなればいいのかがイマイチ分からず、雪斗とですら学校で少し話をするくらい。


 当然、他の誰かと出かけた経験もなく……


 どうしたらいいのかが、よくわからない。


 こはるはフリーズしてしまった。


 そんな時、今度は雪斗の隣から陽気な男の子の声が。


「なになにどーしたの?」


 その声に気づいた渚は、相手を睨みつけた。


「あ?陽向には関係ないでしょ!」


 男の子の名前は橘陽向。雪斗の幼馴染らしい。


 雪斗と陽向、そして渚は幼馴染。


 紅葉は高校に入ってから渚と仲良くなり、この4人でよく集まっているとのこと。


「ん、商店街の喫茶店に行こうって話してたの」


 紅葉がさらりと陽向に言うと


「え?!まじ!!あそこ新商品出たらしいじゃん?甘党としては是非とも行っておきたいところ。俺も行く!」


 手を挙げながら笑顔で答えた。


「は?あんたは誘ってないんだけど!」


 渚の言葉を、陽向はさらりと受け流した。


「まぁまぁ、雪斗もいこうぜ!あそこのバニーケーキ好きだろ(笑)?」


【バニー】という言葉にぴくりと反応したこはるは、雪斗の方を見た。


 雪斗もその視線に気付いたのか、恥ずかしそうに


「む、昔の話!別に好きってわけじゃ……」


 雪斗の顔は真っ赤だ。


「え?まじ? あの、いちごでうさ耳みたいになってる可愛いケーキでしょ?(笑) ゆきとちゃんかわいぃ〜(笑)」


 急に陽向の話題に乗っかる渚。


「な?だから久々に食べに行こうぜ!行ってくれないと実はお前が………」


 陽向のその言葉を聞いた瞬間、雪斗は言葉を遮り


「わかったわかった!行くよ……」


 項垂れながら雪斗は答えた。


「ほぼ脅迫じゃん」


 紅葉がぼそっと一言。2人は笑っていた。


(雪斗くんも……行くんだ……)


 胸が、少しだけ高鳴るのがわかった。


 一瞬迷ったあと……


 こはるは勢いよく立ち上がった。


「わ、私も行きます!」


 にやっと笑う渚。


「そう来なくっちゃ♪」

「よかったよかった」


「それじゃ行こっか♪」


 渚を先頭に紅葉が続いて教室から出る。


 続いて教室を出ようとしたこはる。


 ——ふと振り返る。


 陽向に文句を言っている雪斗と目が合った。


 言葉とは裏腹に、どことなく嬉しそうな表情の雪斗。


 こはるは、小さく笑って前を向いた。


 その軽い足取りには、


 微かなビンキーが隠れていた。

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