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ぜんうさ。  作者: 月白
5/13

5 転生


 寒い。


 とにかく寒い。


 ハッ!


 目を見開いたこはるは、身体の芯まで凍りつくような寒さに、思わず肩を振るわせた。


 目の前には………


「あけましておめでとう〜」

「今年もよろしくね〜」


「えーおみくじ大吉じゃん!いいなぁ〜」


 たくさんの人達がワイワイ楽しそうに過ごしていた。


 そんな中、あまりの寒さに手を息で温めながら、周りの状況を確認するこはる。


(ここは………神社……かな?)


(えっと、確か初詣だっけ?新しい年を楽しく迎えられますようにって、みんなが神様にお願いをしにくる……だったかな?)


(それにしても………)


 つい先程の出来事を思い出し、ため息をつくこはる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【月ノ城】


『さて、もう間も無く時間じゃ。準備は良いか?』


 帝釈天は杖を構えた。


「はい!大丈夫です!」


 ようやく雪斗に会える。


 その想いから、今にもビンキーをしそうなのだろう。足元がソワソワしている。


 その様子を見て、ついつい呆れながらも笑みが溢れる帝釈天。


『今のお主を見ておると、雪斗とやらに会ったときにどうなるか不安で仕方ないのぉ』


「大丈夫ですよ!私がはるだって言ってはいけない……約束はちゃんと覚えてます!」


『うむ、それならよい』


 天真爛漫のように見えて、大切なことはしっかりと覚えている。


 この3年間一緒に過ごし、意外と要領が良かったことを思い出した帝釈天。


 転生のための条件の一つを忘れていなかったことに安堵した。


『向こうで必要な最低限の知識は、お主の頭にすでに入れてある。必要な時に出てくるはずじゃ。』


 そう言いながら、帝釈天は手元の杖の持ち手についたボタンを押した。


 ポチッ


『主の願いが叶うことを、しかと願っておるぞ』


「……ポチッ?」


 その瞬間、こはるは後ろに気配を感じた。


 振り向くとそこには、竹刀をもったAI天ちゃんならぬ、自動魂魄選定機が。


「え?」


 一瞬の静寂。


 スパーーーーン!!!


 視界が真っ白に弾ける。


 何も聞こえなくなった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(雪斗くんのいる地上にこれて嬉しいんだけど……)


(なんかもっとこう……転生!!って感じのかっこいいものかと思ったのに……)


(まさか天ちゃんロボに叩かれるなんて……)


 こはるは空に輝く月を恨めしそうに眺めた。


 しかし帝釈天の言った通り、この神社がどこの神社なのか――そして、自分の帰るべき家が何処にあるのか――


 その情報が、自然と頭に浮かんでくる。


 知らない知識が湧き出てくる不思議な感覚にモヤモヤしたが、一刻も早くこの寒さから逃れるために、自分の住む場所へ帰ることにした。


 鳥居をくぐり、階段の下へ向かう。


 すると、ひとりの少年が座り込んでいた。


(……あの人、どうしたんだろう?)


 少しだけ迷う。


 けれど――


(困っている人は助けなきゃダメだよね)


 こはるは小さく頷き、少年に近づいた。


「……どうかされましたか?」


 その瞬間……


 ふわりと、懐かしい匂いがした。


(……あれ、この匂い……)


 少年が顔を上げる。


「いや、大丈夫です。」


 心臓が大きく跳ね上がる。


 聞こえてきたのは――


 今までで1番聴いてきた声。


(……え……?)


 息が、止まりそうになる。


 少年がゆっくりと立ち上がり、こはるの方へ向き直った。


「友達と連絡がつかなくて……多分寝落ちですっぽかされちゃっただけなので(笑)」


(……ゆき……とくん……!?)


 心臓が大きく跳ね上がる。


 ――ずっと会いたかった人。


 気づけば、視界が滲んでいた。


(あれ……どうして………)


「……そ、そうだったんですね!」


 目をこするそぶりをしながら涙を拭き、とっさに言葉を飲み込む。


「……今日は寒いですし……てっきり体調でも悪いのかと……」


 自分でも何を言っているのか分からない。


 それでも、必死に平静を装った。


「お気遣いありがとうございます」


 変わらない声。


 変わらない仕草。


 ――何も変わっていない。


 胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。


「い、いえいえ!それでは……また!」


 こはるは軽く手を振る。


 振り返らないようにして、その場を後にした。



 少し歩いたところで、足を止める。


 こはるは空を見上げた。


 そこには、静かに輝く月。


 ――ありがとうございました。


 誰にも聞こえないように、そっと呟く。


 まさかこんなに早く会えるなんて。


 きっとこれは、天ちゃんからのプレゼント。


 そう思うと、自然と笑みがこぼれた。


 軽い足取りで、スキップをしながら歩いていく。


 その足取りは――


 先ほどまでの寒さを、全く感じさせないほど……軽やかなものであった。

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