第9話:蹂躙
今回わ少し長いです。後、ブックマークが20件超えてました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
「うう~。紅、ほんとにお別れなの?」
「グスッ、分かっていても悲しいよ~」
ミレイ、レイラ、二人とも私と別れるのを悲しんでくれてる。『感情感知』でそれがわかる。
「私も悲しいけど、エルフの寿命は長いし、生きていればまたどこかで会えるよ」
「そうだね、別に死に別れじゃないもんね」
「絶対会いに行く、だから待ってて、紅」
「ミレイ、レイラ、私たちはずっと友達、いや、親友だよ。だからきっといつか会える。たとえ、何十年、何百年たったとしても。だから、またね」
「またね」
こうして別れるつもりだった。なのに・・・
「死ね、ダークエルフ」
Aの声がしたと思ったら、突然弓矢の雨が襲い掛かった・・・のを『未来視』で視た。
「二人とも伏せてーーーー!」
こうして何とか矢をかわしたと思ったら、二人のエルフがミレイとレイラを拘束した。
「ごめん紅。油断した」
「くっ、抜け出せない」
「何で二人が?どうゆうつもりだ!答えろーーーー!」
「ふん、教えてやろう。それは「よい、わしが言う」長老!」
Aのセリフをさえぎって、別のやつが話してきた。
「儂が、この村の村長じゃ。さて、どうしてこんなことをしたか、それはおぬしを殺すためじゃ!」
「なぜ!ダークエルフは8歳の時に追放するのがルールのはず」
「事情が変わったんじゃよ。おぬしの力は強すぎる。今はまだ子供じゃが、このまま成長すれば村の・・・いや、世界の害悪になりかねん。そして、その友を名乗る二人にも同じ処分を下す!」
「ふざけるな!種族の違いがそこまで大事なのか!私だけでなく、同じエルフを殺すほど大事なのか!」
「もうよい。貴様と話すことなど何もない。殺せ!」
瞬間、ドス黒いものが私の心を支配した。
(ああ、覚えがある、この感情。これは・・・殺意。ああ、殺してやる。お前ら全員。一人残らず)
「「ダメ!紅!」」
「!」
(そうだ、殺意にのまれるな。冷静になれ)
「その二人は人質じゃ。殺されたくなければおとなしく・・・」
『サンダーアロー』
雷の矢が、二人を拘束したエルフに直撃する。
「もともと殺すつもりなのに人質?そんなの意味ないし、殺される前に助ければいい。これ以上私を怒らせるな。殺したくなる」
「くっ、皆のもの。矢を放て!」
「やめて!」
エルフが放った矢は、一本も私たちには当たらなかった。
「なぜ!なぜ当たらん!貴様、いったい何をした!」
「精霊にお願いした。あなた達に手を貸すなと」
この8年で分かったこと。それはコイツ等の弱さ。
コイツ等は狩りの時、必ず精霊魔法を使う。そんな事で弓がうまくなるはずがない。しかも、狩り以外、普通の生活で魔法が必要な時も精霊に頼るのだ。
何が言いたいかというと、こいつらは自力が低い。精霊がなければ何もできない。
「精霊が使えないのに、まだ殺そうとするの?」
「黙れ!何かの間違いじゃ!ダークエルフのほうが精霊に愛されているなど、あってはならん!」
「「「「「光よ、その汚らわしいものに裁きを、『ホーリーエリア』」」」」
(『ホーリーエリア』は一定範囲内のものに光魔法でダメージを与えるもの。あの人数で詠唱されたものが当たれば、ただでは済まない。まあ、当たれば)
「身体強化」
無属性魔法、身体強化。魔力をその体に纏い、身体能力を上げる。
(背後に回り込んで、仕留める!)
『サンダーレイン』
私が放った雷の雨が。エルフたちに直撃する。残ったのは五人。長老とAと、その他三人。
「「「くそ!魔法が無理なら」」」
その他三人が私に殴りかかってくる。その判断はあながち間違っていない。私のステータスは、魔力に比べて身体能力が圧倒的に低い。コイツ等よりも。だが・・・
「ふ!」
動きを見切って、それぞれ一本背負い。そもそも、身体能力が低いのは日本にいた時も同じだ。
女子の中ではともかく、男子の中では中の上といったところ。だから、武術も殴る蹴るより、相手の力を利用する柔術を中心に鍛えてきた。
もちろん、全く殴れないわけじゃない。いじめっ子には殴って対応していた。そのほうがスッキリす・・・効果的だからね。
『サンダーショック』
三人を雷魔法で気絶させる。『サンダーショック』は、雷で相手を気絶させる、スタンガンみたいな魔法だ。殺傷能力は低い。さて、次は・・・
「身体強化」
「グ八ッ」
Aを思いっきり殴る。もちろん一発じゃ済まさない。タコ殴りにする。
「さて、これで残りは、村長一」
「ヒーーー!来るな!化け物!」
「そのものに与えるは偽りの、しかし、本物の痛みを凌駕する。闇魔法『幻痛』」
「ギャーーーーーーーーーー」
闇魔法は、空間や精神に影響を与える。『幻痛』は、脳の痛覚神経に影響を与え、偽物の痛み、幻肢痛のようなものを与える。
頭に触れないと使えないし、イメージしづらく、まだ私の実力では、咏唱しないといけない。けど、苦しみを与えるにはピッタリの魔法だ。
かなり魔力を込めたから、二、三日はこのままだろう。
(本当はAにもこうするつもりだったけど、『感情感知』でAが後悔しているのがわかったし、まあいっか。けど、Aはなんで?もしかして、私と一緒にいるうちに心変わりでもしたかな?)
「ぐぁぁ、やめ・・痛い。早く、この痛み・・止めて・・」
(村長もあれだし、一件落着かな。圧勝だな。私)
「すご!」
「こんなに強かったのね、紅」
「違う」
「「?」」
「私の名前はアカネ。アカネにする」
〈名前をアカネに設定しました〉
前世と同じ名前。今更決めたのは、きっとまだ、誰かが自分に名前を付けてくれると期待していたからだろう。
「「!!!」」
「どうしたの?そんなにビックリして?」
「「ねえ、赤城紅音って名前、心当たりない?」」
「!!!」
なぜ二人がその名前を知っているのだろう、それは・・・
「あたし、西野マリア」
「私は、東野ツグミ」
「「久しぶり。紅音(ちゃん)」
「えええええぇぇぇぇぇ!!!!」
なんと。前世の親友の名を名乗ったのだった。