40.婚約者一人と妻一人
5分後……。
「落ち着いた?」
「え、ええ。もう大丈夫よ、ありがとう。……で、なんの話をしてたかしら?」
「男の娘をどうやって消すかと男らしさを増させる方法ね」
「そ、そうだったわね。じゃあ早速……」
そして僕は称号の消し方と書き変え方を教わった。
消し方は至ってシンプル。
神力に消滅の性質を持たせ、可視ウィンドウ化させたステータスの上を指でなぞるだけ。
消しゴム感覚で出来た。
書き方も刻印の性質を持たせた神力で文字を記せば出来るらしい。
ただ、書き変えることは出来ても称号の創作は出来ないとのこと。
それと書き変えにおいても、元の意味とかけ離れたものを記すことは不可能だそうだ。
そういうわけで早速忌々しい称号、男の娘を消滅の神力でなぞってみた。
するとなんということでしょう。
男の娘が称号の欄から……消えた。
「やっっったぁぁああああ!!」
「うふふ、良かったわね」
「うん!あとは男らしさを増させる方法だけど……」
「それについては新しくサブ職業を用意しておいたわ!」
「なるほど!その手があったか!」
つまり男の娘というサブ職業と対になるサブ職業を新たに付加すればいいわけだ。
職業を増やしてくれたアルには感謝しないと!
「ありがとうアル!」
「うふふ、どういたしまして♪」
アルは僕にとって天使……いや、女神だ!
ってアルはもともと女神か。
じゃあなんて言えばいいんだろう?
…………。
考えておこう。
というわけで、ステータスオープン!
レイ・ヴァン・アイブリンガー(佐藤 黎) 半竜神
Lv.1004 男 13歳
ボーナスポイント:144600
称号:封印状態4/5 元天才軽業師 月の女神の友 竜王の孫 転生者 剣聖の息子 超越者 殲滅者 魔王を退治した者 竜神 皆の英雄 邪神殺し 神殺し シェヘラザードの想い
沈黙の魔竜 恨まれし者 リア充 特一級フラグ建築家
ワイルド王国公爵 第四王女の婚約者 カノンのおもちゃ☆
視る者
職業:魔剣聖Lv. MAX 殲滅者Lv.47 聖竜騎士Lv.MAX
男の娘Lv.MAX 究極殺しLv.43 漢気の申し子 Lv.1 沈黙の魔竜 Lv.1 氷竜王 Lv.1 竜神 Lv.1 鬼神 Lv.1 邪神殺し Lv.1 神殺し Lv.1 召喚師 Lv.1 使い魔契約者 Lv.1 付与術師 Lv.1
HP: 222607/222607 MP:1000000/1000000
STR:64243(+50)
DEF:64236(+50)
VIT:64121(+50)
INT:64254
DEX:64231(+50)
AGI:64314(+50)
スキル:
神力操作Lv.5
軽業Lv. 5
殺陣Lv. 5
体術Lv.5
片手剣術Lv. 5 (剣聖技、魔剣聖技)
両手剣術Lv.5
棒術Lv. 5
拳闘Lv. 5
竜の息吹きLv.5
気配察知Lv. 5
隠密Lv. 5
魔力操作Lv. 5
偽装Lv. 5
火魔法Lv.2
水魔法Lv. 5
氷魔法Lv. 5
風魔法Lv. 5
土魔法Lv.2
空間魔法Lv. 5
回復魔法Lv.4
生活魔法Lv. 5
召喚魔法 Lv.1 new
契約魔法 Lv.1 new
錬金術 Lv.1 new
詠唱破棄Lv.5
家事Lv.3
鑑定Lv.5
バッシブスキル:
異世界言語
異世界文字
竜の成長補正
女性成長補正
男性成長補正 new
身体強化Lv.5
成長限界突破
即死攻撃無効
神殺し new
邪神殺し new
ユニークスキル:
魔剣創成
水氷魔術
竜化
氷竜王化 new
竜神化 new
鬼化
鬼神化 new
竜語魔術
超解析
無詠唱
とりあえずサブ職業は10個追加しておく事にした。
本当はあと18個つけられるけどさすがに必要無い。
てなわけで説明、行ってみよう!
まずは漢気の申し子。
これはアルが僕のために作ってくれたサブ職業だ。
男の娘と真逆の効果を持つ職業だ。
だからといって打ち消し合うわけではない。
過去にも僕みたいな人は居たみたいだけどその人達は最終的に本来の性別に見えたそうだ。
つまり僕の場合は『女の子のように見える男の子』と判断されるようになるらしい。
それ男の娘と変わんないじゃんって?
いやいや女の子と最初から判断されるよりは随分マシだよ!
これでやっと胸を張って男として生きていけるよ。
沈黙の魔竜だけど、これは無詠唱で魔法もしくは魔術を使った時に、威力や効力が大幅にアップするというものだ。
氷竜王は氷竜王化というスキルを手に入れることができる。
氷竜王化は名の通り氷竜になれるらしい。
今度試してみよう。
竜神、鬼神はただ単にスキル化しただけだ。
職業になる前からやってたことが効率的かつ迅速に出来るようになった。
邪神殺し、神殺しは邪神や神と戦う時、全ステータスが1.5倍になるようだ。
これは強い。
召喚師は召喚魔法を取得し、行使することが出来る。
召喚魔法は消費した魔力にみ合った魔物や聖獣、武器や防具まで召喚できるらしい。
ただ、召喚にはバカみたいに魔力が必要なので一般の方には馴染みのない職業のようだ。
これは面白そうなので取っておいた。
使い魔契約者は契約魔法を取得し、行使することが出来る。
契約魔法は生き物と契約し、契約した生き物を使い魔として使役できるようだ。
レベルが上がれば使い魔の能力もつかえるようになるらしい。
これも興味が湧いたので取った。
付与術師は付与魔法を行使することが出来るようになる。
付与魔法は物に魔法、魔術、レベルが上がればスキルまで付与することができる。
これ僕が使ったら大変な事になるよね。
ただ、あまりに付与するものが強力過ぎると素材が耐えられず、最悪周りにまで被害をもたらすということだ。
慎重にやろう。
こうして見るとつくづく自分の異常さが分かる。
これもうチートなんてもんじゃないよね?
まあ強くなるぶんにはまったく問題無い。
守りたいものが増えたからむしろちょうどいいかもしれない。
そして僕は自分のステータスをもう一度よく見直して、小さな引っ掛かりをおぼえた。
「ん?これは?」
違和感の部分を指でなぞる。
そこに書かれているのは【月の女神の友】。
「レイ?どうかした?」
アルが心配そうに僕を見てくる。
「ねえアル。なんかここ違和感を感じるんだけど……なんでかな?」
「っ!?え、ええ?わ、私は何も感じないけど!き、きっと気の所為よ!」
なんかやたら焦ってるような声を出すアル。
「……やっぱり気の所為じゃないよ。これはおそらく書き直された後だ。」
「……どうしてそう思ったのかしら?」
「ここだけ不自然な神気を感じる。称号を消した時もこんな感じがした。これは間違いなく書き直されてるよ」
称号を消す時には神力に消滅の性質を。
書き変える時には刻印の性質を。
だったら神力の性質を利用すれば元にだって戻せるかもしれない。
そう思った僕は元に戻すための性質について考え始めた。
「う、嘘でしょう。こんな短時間で神気の流れにまで気付くなんて……まだ教えてから数十分程度よ?なのにそこまで上達するなんて……」
なんかアルが考え事をしているみたいだけどとりあえず思いついたことを実行してみる事にした。
「よし!とりあえず……」
神力に僕は復元の性質を持たせて指でなぞってみた。
そこで僕のやってることに気付いたのかアルが声を上げる。
「だ、だめよレイ!それをしたら……」
しかし既にその声は遅かった。
じわじわと文字が浮かんできたのだ。
ゆっくりと浮かんできた文字を驚愕のあまり僕は声に出してしまった。
「……想い……人……?」
そこに記されていたのは――――――――――――
――――――――【月の女神の想い人】というものだった。
僕は一瞬頭が真っ白になった。
「アル、これは……いったい?」
アルに視線を向ける。
アルは赤面して俯いていた。
「だから、だからだめだって言ったのに……。も、もうしょうがないから言うわ。私は貴方を、レイを――――――――」
そこでアルが顔を上げた。
その顔はりんご病かと思うくらい真っ赤だったけど……とても綺麗で魅力的だった。
「―――――――どうしようもないくらい愛しているのッッッ!!!」
僕はガツンと頭に何かぶつかったかのような錯覚を受けた。
自分は今告白されたのだ。
誰にだ?
月の女神アルテミスにだ。
どうしよう。
何も考えられない。
何も考えられないくらい……嬉しい!
「じゃ、じゃあまたね。返事待ってるから!」
と言ってアルはそのまま僕に背を向けて消えようとした。
「待った!」
だから僕は彼女、アルテミスのか細い腕を掴み引き止めた。
そして無理矢理こちらを向かせ、その朱がさしたプックリとした唇に自らの唇を躊躇い無く重ねた。
「ふわぁっ!?」
「っ!」
ゆっくりと唇を離し、アルの潤んだ瞳を見上げる。
「僕も君が、アルテミスが好きだ。愛してる。だからずっと一緒に居てくれないかな」
そして僕も告白をした。
いや、もう告白をすっ飛ばしてプロポーズをした。
アルはとても嬉しそうに微笑んだ後、
「よろこんで」
と答えてくれた。
「ありがとう」
そして僕達は瞳を閉じ、再度唇を重ねたのだった。
「そ、それじゃあまた会いに行くわ!」
まだ若干顔が赤いアルが名残惜しそうに別れを告げてくる。
なんだこの可愛い生き物は。
「うん。楽しみに待ってるよ!」
そして微笑みながら踵を返したアルだったが不意に足を止めた。
「どうしたんだい?」
僕が声をかけるとアルは少しだけこちらを向き、寂しそうに言った。
「妻、何人増やしても構わないわ」
「え?」
この答えは予想外だった。
既に僕にはロゼリーナという婚約者がいる。
だからなんとしてでもロゼリーナとの一件をアルに認めてもらおうと思っていたが、まさかこんなにあっさり快諾してくれるとは、こう言ってはなんだが拍子抜けだった。
しかも何人でもとアルは言った。
これはどういうことなのだろう?
「誰だって自分の娘には幸せになって欲しいじゃない」
「……そういうことか」
アルはこの世界の主神だ。
ゆえにこの世界の人々は皆アルにとっては我が子も同然なのだろう。
だからこそ、アルは皆に幸せになってもらいたいと考えているのだろう。
そこまで考えた上で僕は結論を出した。
「確かに僕は妻を複数娶ることになる。けど……」
そこでアルを後ろから抱きしめる。
「……一番は君だよ。アル」
「レイ……」
「そうだ!いいこと思いついた!」
「?どうしたの?」
「アル、悪いけど少し待ってて」
僕はステータスを開き、ボーナスポイントを使って錬金術、付与魔法のレベルを一気に最大まで上げた。
そして亜空間からミスリル、オリハルコン、アマンダイトの塊を取り出す。
その全てからまず不純物を取り除き、純度100%のインゴットにする。
それを今度は錬金術を使い、一番硬度が高くなるように合金を作り上げ、さらに圧縮し、形を整える。
しかし、このままではとんでもなく重いので、付与魔法を使い、風魔法を付与し重みを無くした。
さらに亜空間から金剛石を取り出し、神力でスキルを付与した。
そしてそれを先ほど作ったものにくっつければ完成だ。
出来たのは銀色に輝く二つの指輪だった。
その片方の指輪をアルの左手の薬指に嵌めた。
「これ、は?」
「プレゼント。結婚指輪だよ」
そして僕ももう片方の指輪を嵌めてアルに見せる。
「リングにはミスリル、オリハルコン、アマンダイトの合金を使用したから強度に問題はないはず。そしてこのダイヤモンドだけど、中に金色の光が見えるでしょ。これは【神通念話】っていう、まあ要するに念話の神力を使うスキルだね。それを付与したからどんなに離れてても会話が出来るはずだよ。美的センスに自信がないから装飾がないのは勘弁してね。どうかな?気に入ってもらえた?」
「ええ、とても気に入ったわ!」
「ありがとう!これは僕なりの誓いだよ」
「誓い?」
「生涯でこれを渡すのは後にも先にも君だけだ。いわばこれは僕が君を一番に考え、君を一番に愛してる証なんだ」
「レイ……」
そしてアルは……静かに泣き始めた。
「え!?アル、どうして泣いてるの?僕何か傷つけるようなこと言った?」
「うふふ、いいえ。嬉しくて泣いてるのよ。そう、私が一番……」
アルは僕の唇に軽く唇を押し当てると、
「ありがとう。私も一番、この世の誰よりも貴方を愛しているわ!」
その場から姿を消したのだった。
「……さて、僕もそろそろ現実に復帰しますか!」
未だに驚愕の表情で固まっているカノンの顔をもう一度確認し、水晶にそっと触れた。
再び閃光が部屋全体に行き渡り、時間が回り始めた。
そしてしきりに閃光が迸ったことについての理由を尋ねてくるカノンをのらりくらりと躱しながら学園にある寮の自室へと戻った。
この日僕に婚約者が一人と妻が一人できました。
婚約者は第四王女ロゼリーナ。
妻は月の女神アルテミス。
さて、お姉ちゃんにどう報告しようか。
左手の薬指に嵌まっている指輪を見て現実逃避しながら考える。
僕は結局そのことに全く触れずに手紙を書いたのだった。




