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往時から方今へ

「久しぶりの客人ですよ、陛下」

「何用で来た」

アルスは片膝を地に着け頭を下げながら口を開く

「いきなり申し訳ございません。実は一つ質問したいことがあり本日訪問させていただきました。」

2人の男と1人の女がいる空間は真っ黒く光は刺していないはずが、不思議と「もの」を見ることができる。

周りを見渡すとどこまで続いているかわからない空間が続いている。そして、どこまでもどこまでも黒い。

「お前の言いたいことはわかる。あいつらの記憶を変えたことだろう?それはこいつの仕業だ。」

男は横にいる女を指差す。

「はい、それは私が。あの息子にとって、あの記憶とあいつに対するあの感情は無駄に等しい。持っているだけで無駄、必要性を感じなかった。」

「だ、そうだ。お前の魔法のタイミングが良かったんだろう。良い判断をしたな。さすが元側近だ」

「面目もございません。ですが………いえ、助かりました」

1人の男はアルスに対して冷たい目で見ている。

「お前の心は未だに読めないな。なぜずっと魔法をかけている。我らが信じられないのか」

「い、いえ!私が魔法を自分にかけ続けている理由は戦闘で心を読まれないようにするためであって!」

「いつでも戦闘をする覚悟が出来ているのですね。では、貴方にお願いがあります。もしあの子があの女と再度会うことがあったらここに来させなさい。この手で関係を破壊してやるわ」

「それは良い。あのバカ息子が死んでもコピーを作り出せば良いことだしな。アルス、どんな手を使ってでもここへ連れてこい。」

「仰せの通りに」

男は片膝をつけて圧倒的な力に屈する。





「全く、頭を下げれば誰も彼も信じるからな。誰がこんな世界を作ったんだか」





扉が開く音がする

「アルス、どこに行っていた」

「どこでも良いだろう?それで、なんの呼び出しかな」

扉を閉めてゼストの目の前へ行く。

「人間どもがこちらの世界へ来るかもしれない。軍事体制を整えろ。いつまで続くかわからない。戦いの才がありそうな子供を探しておけ」

アルスは驚く

「子供まで巻き込んでも良いの?」

「子供たちは戦場に出さないさ。保険にするだけだ」

「これだから魔王様は怖い怖い」

「何を言っている。俺も戦うからな、それなりの覚悟が必要だろう。」

「それなら僕もサポートするよ。」

「背中は任せる」

「任せてよ」

ゼストは一瞬だけ顔を上げてアルスの目を見て

「あぁ」

と言った。



芳蘿はハイナの方を見ながらぶつぶつと呟いていた。

「由良花、由良花だ。この子の名前は由良花だ。良い行いをもたらす花のようになるんだ。

苗字は、そうだな。紗奈葉にしよう。麗しい果実についている葉のように気高く立派に生きるんだ。


君の名前は紗奈葉由良花

起きて、由良花」


芳蘿がそういうと、由良花は目覚めた。

「芳蘿さん?おはようございます?」

「あぁ、おはよう。気分はどうですか?」

「気分?まぁまぁですよ。というか、いきなり敬語になってどうしたんですか?」

「いや、大丈夫。大丈夫。」

芳蘿は由良花に抱きついてしまった。

「ちょっと、なんですか」

(少なからずハイナへの愛は本物だ。実験していたとしても愛情を込めて育ててきたつもりだ。

彼女がいなくなってからの損失感は、本物だった。)

「ごめんなさい、出会った頃を思い出してしまって。」

「出会った頃…あなたがあの施設から救い出してくれた」

「施設…そうですね、由良花様も小さかったですし助けずにはいられませんでした」

「様?」

「いえ、由良花」

芳蘿の心は少し戸惑っていた。

(ハイナ、いえ、由良花。あなたは私の知っている、私の愛している少女なのですか)

「芳蘿さん、少し今日おかしいですよ。私はそんなに小さくなかったはずです。10歳も超えていたはずですよ」

「そうでし…そうだったね。私からすると由良花はずっと小さい少女だから」

由良花はポカンとする。今まで芳蘿は完璧人間だと思っていたからだ。なので自分の名前に敬称を付けるなど言語道断だった。

「とりあえず今日は仕事で忙しいんだ。大人しく部屋にいてくれるかい?」

「は、はい。仕事もほどほどにして疲れも取ってくださいね。」

「わかってる、ありがとう」

芳蘿は由良花の頭をポンポンと叩いた。 




「アルス様!ハイナ様の記憶で何をどうしたか教えてください!」

「大体分かったんじゃないの?」

「そんなにすぐわかりますか!私はあなたのように心を読むことは出来ないんです!」

2人はスピーカー越しに会話をする。

「わかったから、説明するから。一回で覚えて。

あの子の記憶の10歳以前のものは全てないことになってる。そして、君があの子を施設から救い出したことになってるよ。

実験のことは覚えてない。

あの子の記憶を呼び出すのは僕しか出来ないからね。

それと、あの子にとっての悪を用意した。そうだな、先生だね。君の元側近の愛理沙だよ」

「私とハイナ様の共通の敵を作ってくださったんですね」

「そう、感謝してね。

君もあいつの名前を出すのは嫌だろうからね」

「ありがとうございます。これで排除しやすくなりました」

「今まで君の力では不十分だったけど、あの子の力を使えば確実に排除できるだろうね。」

「そうでしょう。感謝いたします。」

「そうだな、今はこれぐらいかな。君が人間側に付くのか魔界側に付くのかは知らないけどそろそろ決めておいた方が身のためだよ。あの子のためにもね。」

「心に留めておきます…ありがとうございます。

私はそろそろ仕事をしなければならないのでここで退出させていただきます。次は定期連絡の際に」

「わかった。ハイナによろしくね」

アルスはそう言って腰を椅子に下ろした。

会いに行きたい気持ちを抑えて机に積んである書類に目を向ける。

「神にこんなことするから、敵に回すんだよ」

普段とは違う声色で愚痴をこぼした。


芳蘿は電話が終わると積んである書類に目を向ける。

(私の罪は消えない。だが、私は罪を償いたいとは決して思わない。あの悪魔には決して頭を下げない)

とぶつぶつ呟いた。

芳蘿は知っている、いずれハイナとゼストが再び出会うことを。だが、芳蘿には知り得ないこともある。それは、ゼストとハイナが再び出会ったとき、ゼストがどのような対応をするかだ。だから芳蘿は決めた。

ハイナを、由良花を、自分の愛娘のように育てることを。


由良花が自分に依存するように育てるんだ。


「絶対に、渡さない」

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