菫様の違和感
皆さんこんにちは。裏紙をうまく利用できると達成感で満たされるタイプの六歳、遠藤菫です。
今もお母様に見守られながら失敗した折り紙を正方形に戻し、裏紙にするために折り後を伸ばしている所です。
あ、端の方がちょっと破れた。まぁこのぐらいは大丈夫、気にしたら負け。
「菫ちゃんは自分のお名前を書けるようになったって昨日教えてくれたけど、お母さんも菫ちゃんがお名前かいてるのみてみたいなぁ」
お母様はきれいにお化粧された目をキラキラさせながら私にお願いをしてきました。そんなお母様はかわいらしいという言葉が似合ういつまでも少女のような女性で、ふわっと巻かれた髪に家事なんてやったことないようなきれいな手とネイル。お母様に頼まれたのならしょうがない!!この菫様が書いて見せましょう!!私はできるだけきれいな字で『えんどう菫』と大きく書きました。
私だってもう小学生。自分の字ぐらいかけるもんね!!と自分の中でなるべくきれいな字で名前を書いていきます。でも鉛筆が大きくて、いや、私の手が小さくて思うように鉛筆を使いこなせていないのか。
「ほんとは、すみれは本当はもっとうまく書けるのよ!!」
「まぁ、そうなの?でも菫ちゃんはもう自分の名前を漢字で書けるなんて天才だわ!!お兄ちゃまだって書けるようになったのはもうちょっと後だったもの。」
お母様はとびっきりの笑顔で喜んでくれました。手のひらを胸にあてて喜ぶ様子はまるで舞台女優のようです。
お母様はいつもとりあえず私を褒めまくります。褒めまくりながらギューっとしたり、頭をなでてくれたり、お母様に怒られたことなんて一回もないんです。こんな時ってうれしい気持ちとなんだか寂しい気持ちにもなります。素直にうれしいと思えないのは何でなんでしょうか。
「でも菫ちゃん、隣に新しい折り紙ならたくさんあるじゃない。わざわざ頑張って作った折り紙を崩してしまうなんてもったいないわ。菫ちゃんはあんまりモノを欲しがらないし、もっとわがまま言っていいのよ?」
「んーでも、これはしっぱいしちゃったからいいの。おり紙きれいでしょ?なくなってほしくないからちょっとづつ使うます。」
「うふふ、使いますね。頑張って丁寧な言葉を覚えてて頑張ってるのね。えらいわ!!やだー、お母様悲しい。成長が悲しい!!」
お母様はまた私をギューっと抱きしめて、もっと折り紙を買ってあげると約束をしてからお部屋を出て行かれました。お母様に褒めてもらえてよかったぁ。いっぱい練習したかいがありました。
でもやっぱり私の中であるひとつの疑念が確信に変わりました。
私、たぶん病院に行かなきゃ行けないと思います。頭の中に埋め込まれたチップをとりだすために。だって今も私は「使います」って言おうとしたのに、上手くいえませんでした。頭の中ではすらすら出てくるのにおかしいです。それに、私は教わったことのない難しい単語の意味も分かるんです。でも、いざ声に出そうとしたらなかなか言えません。なんだか誰かに抑え付けられている気分になります。たまに同じぐらいの年の子に会っても、皆はそんなことなさそうだし、正直ちょっと幼く感じます。周りをみてもそれが普通のようですし、私は周りより少しずれているようです。これはきっと宇宙人に頭の中にチップを埋められたからに違いありません!!
私は大人になったらきっと宇宙に連れて行かれてしまいます。そう、かぐや姫の様に!!なんてことでしょう。早く抜かないといけませんが、お兄ちゃまに相談したら爆笑されたので二度といえません。
折り紙をけちけち使って遊び終わったとき、お兄ちゃまが私に大きな箱を渡してくれました。薄い長方形の箱を開けると中には制服が!
お兄ちゃまは三ノ宮小学校に通っています。私も受験をし、なんとかギリギリ受かりましたので4月から三ノ宮小学校の1年生です。正式に言うと三ノ宮大学付属小学校。つまり小学校に入ってしまえばエスカレーター式で日本のトップ校である三ノ宮大学に行けるんです。その代わりにまぁそれはお金が必要なわけですけど、私の家はありがたいことにお父様が頑張って働いてくれているおかげで二人とも小学校から通うことになりました。
「菫の代は三ノ宮家の息子がいるらしいから気を付けろよ。すみれ馬鹿だし、あんまり関わらないようにな。」
「な、ばかじゃない!お兄ちゃまはわたしの言うこと信じてないのね。私はチップをほんとにうめられたの。」
思わずお兄ちゃまを睨みつけ、戦闘態勢に入ります。ボクサーのような体制を取り前後ろに軽くジャンプ。確り脇を閉めて隙がないようにしながらも、軽いフットワークを見せつけいつでも殴れるというアピールです。
「なんでいきなり飛び跳ねてんだ?あ、もしかしてボクシングの真似?おもしれーけど、そんなことしたら一瞬でいじめられそうだからやめろよ。」
お兄ちゃまは私の威嚇をものともせず欠伸をしながらどこか遠くを見ています。三ノ宮家はもうわかると思いますが三ノ宮大学を建てた家系です。超お金持ちです。さらに天皇家にも勉学を教えており、昔から天皇家を支えてきたと言われております。
「私はそのうち宇宙に帰らなきゃ行けないので、あんまり友達は作らないでおくから多分大丈夫よ。だって私が月に帰ったら皆悲しむでしょう?」
私の言葉を聞いたお兄ちゃまは深いため息をついてから私の鼻を思いっきりつまんできました。
「菫その話誰にもするんじゃないぞ。確か三ノ宮家の次男は相当自由人だったからな。」
「はなー!!息が!!息ができない〜!!
……あ、私、くちこきゅう出来ますわ。スーハースーハー。」
「すみれだけじゃなくて皆口呼吸出来るだろ。そういう所が心配だよ。お兄ちゃんは。」
鼻が!鼻が潰れてしまう!高くなるならいいですけど潰れてしまうのは嫌です。お兄ちゃまが手を離してから急いで部屋の鏡で顔を確認します。
目はいつもどうりほぼ幅のない二重です。鼻は高くもないですけど形はシャープなままで良かったです。唇もいつもどうり薄いです。はい、いつもの幸薄い顔!!髪の毛はお母様がいつも乾かしたり、なにかのオイルなどをつけてくださるので茶色でサラサラです。
兄はぱっちり二重なので呪いましょう。
「ん?なに睨んでんだよ。まぁ俺もぎりぎり6年だから同じ敷地内だしなんかあったら助けてやるから来るんだぞ。あ、授業中は来るなよ。」
「行きませんよ!すみれはもう1人でなんでもできるのよ。小学校1年生だもの。」
「って言いながらいつも来るんだよなー。」
さすがお兄ちゃますみれのことをよく分かっています。結局小学校1年生の時は最低週に3回はお兄ちゃまの元に行ってました。




