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成長期に食生活は大事

 


変態眼鏡から、タダでもらった広大な土地を放っておくのも勿体ないので、私は牧畜など始めてみた。誰にも咎められることがなくなったので、国を渡り歩き、畜産に適した動物を仕入れ、旅先で拾った戦争孤児やら再び相見えた北部の移民を招き入れ、定住を促した。元々いる人間達だけでは、畑と牧場の管理ができずに、人出に困っていたところだった。畑には各国の珍しい薬草を育ててみたり、野菜や果物等の作物の品種改良に力を注いだ。なぜこんな真似をしているのかというと、この国の食事が貧しすぎるからだ。



私は、パンやクッキー、ケーキが食べたいんだ。

なんで女どもは、物で砕かないと食べられないクッキーをああも美味しそうにバリバリと食べれるんだ? しかもおしゃべりしながら、食っているぞ。そうか、お前らの歯は、鋼でできているんだな。さらにそれを上回るパンは、スープでふやかさないと食べられない代物だ。私を顎関節症にでもさせるつもりなのか? ゴリゴリ言っているぞ。こんなものパンと認められるかっていうんだ! パンって言うのはな。外側がパリっと香ばしく、中がふんわりとしているのをパンっていうんだ!



それに獣臭いチーズなど嫌だ! それになんでなんでもかんでも物を干すんだ。肉なんかスジだらけで、噛みちぎって食べるのが普通なのか? 魚さえも噛みちぎるのが普通なのか? ええっ? どうなんだ言ってみろ! ここに責任者を呼んでこいって言っているんだ! 



固形石鹸なるものの質が悪すぎる。なんで泥のような塊なんだ。おいっ。これなんか毛が入っているぞ。異物混入だぞ!ここが現代なら消費者センターに苦情申し立ての上、営業停止だ。 シャンプーだって、どうしてこうも青臭いんだ。お前ら歯だけじゃなくて、肌も鋼使用なのか? そうかそうなのか。それならば納得だぞ。が私は勘弁願おう。これでも私は現代っ子なんだ。ヒアルロン酸を欲するんだ。髪の潤いに煩い年頃なんだ! 髪が風になびいて、ドクダミ臭なんてもっての外だ!



ハアハア・・・・。

珍しく興奮してしまったな。



あれっ?

私は何をしているんだ?

自身の体の謎や、なぜこの世界に来たのかを知るために行動を起こしているのでは、なかったのか? なぜ生活を潤すための研究をしているんだ? まあいい、私のためでもあるのだからな。問題はない。あれから数年が経った。相変わらず、姿形が少女のままだったので表舞台には、生真面目青年を立たせた。ああでも、もう青年といえる歳ではないな。生意気にも可愛らしい奥さんと二人の子どもまでいる。いい大人だ。



無口青年は、まだ独身を貫いている。今度、お見合いパーティーでも企画しようか? と真面目に言ってやったら、ものすごく睨まれた。なんだ。結婚したくない理由があるのか? なんか病気持ちとか女性が対象外とかなんかなのか? と聞いたら、げんこつを喰らった。上司に対しての横暴な行いに文句を言ったら、生真面目青年、いやオヤジに「それは、なずは様が悪いです。」と言われた。なんだか、難しいお年ごろとでも言うのか? 大変だな。ああでも役には立っているぞ。ナンタラ国の残党と変態メガネの国から、私を狙う輩ワンサカいるので、ボディガードをしてもらっている。が大丈夫だというのに、寝室まで入り込んで、ちょうど居合わせた銀縁眼鏡と剣を交わしていたな。それにしても変態め。どうやって潜り込んだんだ。あいつの侵入技術も神技になってきたな。神官など辞めて盗賊になったほうが、稼げるんじゃないのか? 



銀縁眼鏡は、案外あっという間に死んだ。

国を統一した数年後、病気であの世にいった。あいつのことだから、人に刺されて死ぬとか毒殺されるとか、ろくでもない死に方しかしないと思っていた。いや案外しぶとく、ヨボヨボの爺になるまで生きているかと思った。ほら、よく言うだろ? 憎まれっ子世にはばかるだったっけな。あれだけ裏で非道な事をやらかしてきた癖に、穏やかな死を迎えるなんて、なんだか納得できないな。



ああ、もちろん奴とは結婚しなかったぞ。

だれが銀縁眼鏡変態野郎と結婚するものか。私の恨みは根が深いんだ。

あれだけ人に愛を告げまくったくせに、奴は結婚をして子どもまで作ったぞ。それでも人の私室に入り込んで「本当に私が愛しているのは、なずはだけですから。」とほざきやがった。奥さんが可哀想だ。あまりにも不憫だ。子どもにあの変態が遺伝していないことを祈ろう。私は、銀縁眼鏡変態ロリコン野郎に砂粒の一欠片さえ愛情を抱いたことは一度もない。何度でも言う。変態は嫌いだ。ただ人間としては嫌いではない。むしろ好きなほうだと言える。欲望に忠実で、それを実行し実現する力も決断力もあった。何のかんのと言いつつ、私との約束は最後まで守ったしな。



奴は、世継ぎを作る必要があった。いくら国王派を根絶やしにしたからといっても、いつ何時、どこぞの人間を担ぎだして「市井の人間に産ませた王の忘れ形見」なんて持ち出される可能性もある。ナンタラ国との戦争が終わったばかりで、内乱で国内を騒がしたくないヤツは、自身の血族が必要だった。「漆黒の巫女、魔女」に守護を受けている子どもがな。



なんて言う奴なんだ。どこまでも人を利用しようとするところが気に食わない。誰も憎たらしい銀縁眼鏡の子どもなぞ、守るなんて一言も言っていない。それでも周りの国や奴の国の人間は違う。奴の国の端に私が住んでいることだけで、国全体が「漆黒の巫女、魔女」に守られているという意識を植え付けさせた。




どこまでも嫌な奴だ。

 

その後の話が続きます。

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