第35話 『アニメの妹が脱ぎすぎ問題』
──ある夜、TV画面の中で、妹が脱いだ。
それは、唐突で、過剰で、あまりにも妹だった。
そして──翌朝。
ネットは、燃えていた。
#妹脱ぎすぎ
#パンツの履き替え5回
#放送コードとは
#規制が消しきれてない
「──なんでこうなったんだよ!!!!!」
俺・久慈川幸喜は、頭を抱えていた。
画面には、アニメ『俺はプロラノベ作家なのに、青春ラブコメの中にいた』の第5話。
その冒頭5分。
“妹キャラ・サチカ”が、
「お兄ちゃんのパンツどこだっけ〜?」と全裸で風呂場から登場し、
その後も、1話内で着替えシーン3回+添い寝2回という、
まるで“妹フェス”のような展開を繰り広げていた。
──深夜枠でなければ打ち切られていた。
それほどまでに、ギリギリだった。
俺「……これはもう、謝罪案件だろ……」
そこへ──背後から声が飛ぶ。
「──謝る必要なんてないよ?」
振り返れば、当然のように妹・幸香がいた。
しかも、パーカー姿。しかも、そのパーカーの下、明らかに何も着ていない。
俺「なぁああぁぁああああああああ!?!?」
幸香「第5話、観たよ〜。最高だった♥
特にお風呂シーン、あれ、あたしの再現度95%ってところかな?」
「本人による再現発言が一番やばいんだよおおおおお!!!!!」
***
学校。昼休み。中庭。
今日もヒロインたちが集まっていた。
だが、その雰囲気はいつもと違った。
重い。明らかに、空気が殺気立っていた。
原因は、ひとつ。
「──“妹が脱ぎすぎ”事件」である。
舞香「……あのアニメ、何をどう監修したらああなるのですの?」
玲奈「深夜アニメという枠を悪用した、“倫理のアウトロー”です」
歩美「“パンツ履き替え5回”って、もはや性癖を通り越して儀式よ」
幸香はと言えば──
ベンチにどっかり座り、パンをかじりながらこう言い放った。
「──これが“正史”だよ♥」
静寂。
歩美「……殺す」
舞香「母国なら問答無用で処刑案件です」
玲奈「倫理委員会にかけましょう」
幸香「待って待って、落ち着いて!
だって、“実際にあったこと”をアニメにしただけだし?」
歩美「だったら放送するな!」
舞香「いやもうそれ、自白してるようなものでしょ」
玲奈「実写とアニメの境界線、妹が一人で越えていくの怖すぎます」
***
放課後。アニメ制作会社・編集部から電話が入る。
担当編集・渋谷からだった。
渋谷「第5話……視聴率すごいぞ」
俺「うん……なんとなく想像はついてる」
渋谷「で、“妹ルート”をこのまま本格的に軸にしていく案が出てる」
俺「ちょっと待ってくれ!!!」
渋谷「原作超えてきたな、ってプロデューサー泣いてたぞ?」
俺「泣くな!!!戻れ!!正気に戻れ!!!!!」
***
夜、帰宅後。
妹が風呂上がりにバスタオル姿でリビングに現れた。
TV画面には、録画された第5話の妹登場シーン。
幸香「あー、ここ。ここ完璧だよね~♥
このお風呂の湯気の透け感。
制作さん、マジありがとうって感じ♥」
俺「……幸香」
幸香「ん?」
俺「お前、アニメになって“脱ぎすぎ”だって、ネットでめちゃくちゃ言われてるぞ。
このままだとマジで、妹キャラの限界を超えることになるぞ」
幸香は、にっこり笑った。
「──だったら、“限界”ごと、壊しちゃえばいいじゃん♥」
──その目は、冗談なんかじゃなかった。
本気で、“妹という概念の革命”を起こそうとしていた。
俺(誰かこの国に、“妹の倫理基準法”作ってくれ……)




