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第19話 『“正妻”とは何か──歩美と舞香、正面対決』

その空気は──

「戦争」としか、言い表せなかった。


 


春の午後。校舎裏の誰もいない中庭。

なぜかそこに、俺・久慈川幸喜は“人質のような扱い”で座らされていた。


 


目の前には、立ち並ぶ二人の少女。


──袋田歩美

──舞香・アシュレイ・カールトン・リーヴス・天城


 


そう。

この場所は──正妻頂上決戦の舞台だった。


 


「……説明してくれる?」


俺は喉を震わせて聞いた。


「なぜ俺が中庭で縛られてるのかを……!!」


 


歩美「足止めよ。逃げられたら困るから」

舞香「勝手に走ってフラグ倒されても困りますから」

歩美「ていうか、お前が原因なんだからね? 何もせず見てなさい」


舞香「“私たちの気持ち”を、受け止めなさい」


 


──死ぬ。


俺、これ絶対どっちかに殺されるやつだ。


 


けれど、ここで逃げることは──“作品に失礼だ”と思った。


(……見届けなきゃ)


 


 


 ***


 


歩美が、最初に口を開いた。


「ねぇ舞香。あんたさ、いつも“未来”だとか“運命”だとか、言ってるけどさ」


 


「……ええ。事実よ? 私は“彼の初恋”で、“再会”して、“一緒に未来を作る”って、決めて来たもの」


 


「でもね──私から言わせてもらえば、それって“過去の奇跡”にすがってるだけじゃない?」


 


「私は、“毎日”を積み重ねてきたの。

笑って、怒って、心配して、支えて──

……ずっと、見てきたの。幸喜の全部を」


 


舞香の目が揺れる。


だが、すぐに鋭く細められた。


 


「……“見てきた”だけで、何も変わらなかったじゃない。

彼は、あなたと手を繋いでない。

キスもしてない。

未来の話もしてない」


 


「私は──未来を見てるの。

“作家としての彼”と、“一人の男としての彼”。

両方を、隣で支える覚悟があるわ」


 


歩美「……未来ばっか見て、足元の幸喜が苦しんでることも気づけないくせに」


 


舞香「過去ばかり見て、変われないままのあなたが、彼の何を変えられるの?」


 


──バチィッ!!


目に見えない火花が、ぶつかり合う。


 


空気が震えた。


言葉が、ナイフより鋭かった。


 


俺「ちょ……ちょっと待って!? なんか、ほんとにヤバい空気じゃん!? そろそろ止めよう? 一回深呼吸しよう!?」


 


けれど二人は、止まらない。


 


歩美「私はね、ずっと、“選ばれない覚悟”で隣にいたんだ。

でも──もういい加減、ちゃんと伝えたかった。

“私は、あんたの隣に立ちたい”って」


 


舞香「私も、“また出会えた意味”を、証明したい。

子供の頃の想いが、“本物だった”って証明したいの」


 


俺「だからそれを俺にぶつけんなぁぁぁぁ!!!!!」


 


限界だった。

精神的にも、胃袋的にも、恋愛イベント的にも。


 


二人の真剣な想いが、本当に真っ直ぐすぎて。


その重みに、耐えきれなくなった俺は──


 


──がくっ。


 


視界が、回る。

耳が遠くなる。

世界が白く、静かになる。


 


「えっ!? こ、幸喜!? 嘘でしょ!?」


「……え、ちょっと、本当に気絶してるの!? 本番で!?」


 


──落ちた。


俺、完全に、気絶しました。


 


 


 ***


 


気がついたとき、保健室の天井が見えた。


その隣に──四人の影が、並んでいた。


歩美。舞香。幸香。玲奈。


どの顔も、心配そうで。

だけど、どこかで“譲る気がない”ってことだけは、俺にも分かった。


 


「……俺ってさ……一体、どうすればいいんだろうな……」


 


誰にも聞かれずに呟いたその言葉は、

ただ春の風に、流れて消えた。

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