37 雪の結晶
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あと半月で王立学園の入学式が行われる。
フィリティの私室には、学園で着る制服がクローゼットに収められていた。
学園への準備をしながら昨日のことを思い出してた。
*
ジョーカスに呼び出され、学園での注意事項を聞いていた。
『学園では、第二王女という立場を隠して、一生徒として孝平に勉学に励む様に。爵位はこちらで用意しているから安心しなさい』
『…はい』
『学園までは、ここから通いなさい。その方が毎日どんなことがあったのかこちらも把握しやすいのでな』
『わかりました』
『ふむ。話が変わるが明後日に急ではあるが、婚約者のアルドルト・ジョルテクス殿下が来訪されることになった。初顔合わせだな』
『えっ……』
『なんだ?その浮かない顔は。ははっ緊張しているのか?』
『おっお父様!私はっ!』
スッっとジョーカスが手で発言を制す。
その先は、言わせてもらえなかった。
『フィリティよ。予はそなたの幸せを一番に考えている。まずは明後日、アルドルト殿下にお会いしてからその先の話を聞かせてくれぬか?』
『っ!!』
ジョーカスは、あえて愛称ではなくフィリティと呼んだ。
慈愛に満ちた声音で、終わってから聞かせてほしいと。
ツンッと感じた時には瞳いっぱいに涙が溜まっていた。
ジョーカスの顔がよくわからない。いつもよりも優しい顔をしていたように思う。
フィリティは、一礼したのち父の私室の扉を閉めた。
扉が閉まるまでジョーカスは娘の背中を見つめていた。
* * *
(もう明日なのね)
ツィツィピィー
ルーが私の肩に乗って鳴いている。覗き込まれているような感覚に思わず笑みがこぼれる。
「ルー心配してくれてるの?ありがとう」
コンコンコンッ
部屋の扉が叩かれてルーから視線を外した。
「フィリティ姫様、よろしいでしょうか?」
侍女のエリーが明日の装いについて打ち合わせに来た。扉が開く前にルーは、私の肩から定位置の窓際の止まり木に戻った。
(私に用事ができたと察したのかしら)
私はどうしたいいの。
もうどんなに悩んでも明日は組まれてしまっている。
その事実が苦しい。
そこでふと、アルから贈ってもらった髪留めが入った化粧箱が目に入る。
「エリー、ちょっといいかしら?」
「はい、なんでしょう?姫様」
クローゼットからひょいっと顔を覗かせるエリー。彼女ももう五十歳近い年齢で幼い頃からずっと私付として勤めてくれている。机の前に行き、化粧箱から髪留めを手に取る。
「この髪留めを明日、使ってほしいのだけれど…どう思うかしら?」
「失礼します」
エリーが私の隣に寄って化粧箱の中を覗き込む。
「まぁ!素敵でございますね。姫様の瞳の色にそっくりですわ。んん?これはこれは」
「エリー?どうしたの?」
「いえいえ。姫様にとってもよくお似合いになるなと。贈られた殿方をこのエリー敬愛いたしました」
「…それはどうして?」
「失礼ながら、姫様にそのような仕草やお顔をさせる殿方は、きっとその贈り主の殿方しかいらっしゃらないのではないかと。…少々エリーは、言葉が過ぎましたね」
「……っ!」
無意識のうちに頬を緩ませていたらしい。
自覚して、頬がみるみる紅潮するのがわかる。
「エリーも姫様の幸せを願っております。では、この髪留めに合わせたドレスに致しましょう。そうですねぇ~」
エリーがまた奥の方へ行ってしまった。少しして「ありましたありました」と持ってきたドレスをみて、ハッとした。
「ふふふ。どうでしょうか?」
「エリー…ありがとう」
エリーが手にしていたのは、淡い水色のドレスにエメラルド色の刺繍の入ったドレスだった。
刺繍の柄には、雪の結晶がデザインされていて、その上に蝶が止まっていたり羽ばたいていたりと落ち着きがあるのに華やかだ。
これはお母様のお気に入りのデザインだ。
成長するたびにドレスや隠れ家で着るワンピースに注文していた。
(お母様が冬が好きっておっしゃって、なんで好きなのか尋ねたのよね)
《結晶が綺麗でね。この世界では、簡単に見ることが出来ないけど、本当に綺麗なのよ》
幼いころに絵をたくさん書いてくれたことがあった。
(あ…そういえば、お父様が冬生まれだったから?冬が好きって言っていたのかしら?……今ならわかる。私も冬が好きになりそうだから)
「…では、こちらに致しましょうね。髪型は…ハーフアップにして髪をそちらの髪留めでまとめ上げましょう」
「ありがとう。そうして欲しいわ」
「かしこまりました」
そういってエリーは部屋から退出した。
* * *
扉を音なく閉めて、私、エリーは歩き出す。
あの髪留めの細工術は、私の間違いでなければ、ジョルテクス王国王宮彫金師のミハエル様の作品かとお見受けいたしました。
なんとなく、口にしてはいけないことのように感じましたから、姫様の前で変なごまかしになってしまいました。私もまだまだでしたね。
明日、姫様を最高に着飾って殿方をアッと言わせてみせましょう。
私も腕がなりますねぇ。




