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魔術の授業2

手渡された本を開くと、「魔術入門」という文字が目に入った。

いかにも「教科書」というタイトルだ。

これまでに習ってきた教科で渡された本は、ここまでしっかりとした教科書ではなかった。

なんというか、辞典、図鑑、もしくは学術書のような雰囲気なのだ。

歴史と地理はまだわからないが、さすがは魔術。

魔術といえば、みんなが習いたがるものだ。

専門学校があることもあってメソッドが確立されているのかもしれない。


メリー先生が指示したのは目次の次のページだろう。

「魔法と魔術 基礎知識」という章タイトルの下に、細かい字で何か書いてある。


「開けましたか。では本文を読んでいってください。まずルルさん。」

「はい」

ルル姉さんが指名され、音読を始める。

その間、私は「記憶」スキルを使いながら文章を読み進めていく。


魔術と魔法の違い。

まず魔術は自分の魔力で自然界にある魔力に干渉していろいろな現象を起こすもの。

次に魔法は、自分の魔力で直接現象を起こすものだ。

色々と回りくどく書かれているが、要約すればこんなものだろう。


要するに、魔術は元あるものを利用して使うので常識の範囲内のことしかできないが、魔法なら自分の魔力で直接現象を引き起こすため常識外れのことでもできるということだ。

例えば、無から有を生み出すというように。

ただし、魔術は魔力さえあれば普通の人にも使うことができるが、魔法は専門のスキルがないと使えない。

ルル姉さんの「結界魔法」は魔法のスキルなので、常識外れのことができるという訳だ。

とはいえ、私を落下物から守ってくれた時以来、姉さんの魔法は見ていないのだが。


「はい。ルルさん、いいですよ。わかりましたか?ですから、魔法は無から有を生み出すことで、これから私がお二人に教える魔術は自然にあるものを魔力を媒体に利用する術なのです。」

「先生、質問をしてもいいですか?」

少し気になったことがあったので、先生に声をかけてみる。

この世界に「手を挙げて質問をする」という習慣はないので、手は本を持ったままだ。


「どうしましたか、ルナさん。」

「魔法のスキルは、具体的にどのように魔術と違うことをするのですか?」

なるほど、と先生は少し考えてから言った。


「そうですね。例えば、魔術では木を伐り倒して家具を作ることはできても、何もないところから作り出すことは出来ません。たとえ出来たとして、自然にある魔力・・・あとで出てくる言葉で魔力子というのですが。そこに干渉するのに莫大な魔力が必要となります。それを普通の魔術と同じくらいの魔力で出来てしまうのが魔法なのです。」


魔法は強大な力で、地味なものでも世界の均衡を崩してしまうことに繋がりかねない。

よって、魔法のスキルを持っていても隠している人は多いのだという。


それなら、姉さんのスキルは隠す方がいいだろう。

聞いておけてよかった。

姉さんの安全を守らなければ。


「ルナさんは好奇心旺盛ですね。いいことですよ。」

そう言って笑った後、先生は今度は私を指名して教科書を読ませた。

子供用に易しい言葉で書いてあるので、この世界の言葉をあまり知らない私でもつっかえずに読むことができる。

読書好きの矜持として、人に読み方を教えてもらうのは嫌なのだ。


しかしこれを読んでいれば、「言語理解」のスキルレベルが上がるかもしれない。

これ以上にレベルを上げるには他の言語の勉強をしなければならないかもしれないと思っていたので、これは嬉しい。


魔術を使うには、自然界にある「魔力子」と呼ばれる魔力に自分の魔力で干渉しなければならない。

その干渉の手立てが、呪文や魔法陣だ。

呪文の言葉や魔法陣を描くインクに自分の魔力を乗せて送り出す。

魔法陣は特に、魔術の効力を長期間持たせたい時に使うらしい。

熟練した魔術師ならば、自分の魔力をそのまま放出して魔法陣を描くことも可能だそうだ。


「例えばこの、『ウォーター』ですね。」

この魔術はただ水を出すだけというシンプルなものなので、呪文がこれだけ短くても発動する。

出す水の量は放出する魔力の量で調節するのだ。

逆に言えば、魔力の量を調節できないのならもっと長い呪文を唱えなくてはならない。

短縮詠唱に魔力操作は欠かせないのだ。


「『ウォーター』という言葉には、水を出す魔術を成功させるように魔力の干渉を制御する力があります。」

先生は机の隅に置かれていたからのガラスコップを指差して、『ウォーター』の魔術を使って見せてくれた。

「先生は今、使う魔力の量以外、何も考えずにこの魔術を使いました。呪文はこのように魔術の方向性を決めるものなのですが、それはやってみなければ理解するのは難しいことです。それでは、実際に試してみましょう。」


初めて使う魔術では、何が起こるかわからない。

ということで、私たちは先生の指示で庭に繰り出すことになった。



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