宮坂家の海だ〜 !! その3
フェリーはぽこぽこと、穏やかな海を進み、約20分、島の港に到着。
「あれ、もう着いたの?もうちょっと乗ってたかった・・・」
ちょっと残念そうな颯太君と一緒にみんなで下船。お父さんも軽トラを船からおろし、宮坂一家が島に上陸。
「あ、学。久しぶり」
港の駐車場から手を振りながら、背の高い細身の女性がやってきました。白のTシャツからは小麦色のスラットした腕が延び、長い脚にに洗いざらしのジーンズ、ボブカットの黒髪に誰かさんによく似た面差しの美人さん。
「あ、真由美姉さん。久しぶり。元気?」
それに笑顔で応える宮坂お父さん。
「ええ、元気元気」
このいかにも夏の海が似合う女性は、宮坂お父さんの一番上のお姉さん。お父さんより6歳年上。進学していた中京方面の大学で知り合った今の旦那さんと結婚し、旦那さんの実家を継いで、この島で家業の漁師をしています。もともと山国生まれの山国育ちでしたが、今ではすっかり、潮風の似合う女性になって、海の生活が板についています。
「お義姉さん久しぶり。今日はお世話になります」
ペコリと頭を下げる宮坂お母さん。小さい頃は宮坂お父さんとその兄姉妹と一緒に遊んでいたので、本当の姉妹のような気安い関係です。
今日は、颯太君が小学生になったと言う事で、宮坂一家そろっての初めての海水浴。それを聞いた真由美姉さんが、それじゃ家に来ればと誘ってしてくれました。
「真由美ちゃん、お久しぶり」
「久しぶり、元気そうで何より」
宮坂お祖母ちゃんとお祖父ちゃんも赤ん坊の頃から知っている真由美姉さんに挨拶。
「お義父さんにお義母さん。本当にご無沙汰しておりまして。しかし、お二人ともいつまでも若々しくてびっくりしましたよ」
お世辞でもなく本心で言う真由美姉さん。
「「「「伯母ちゃん、こんにちは」」」」
子供達もご挨拶。
「はい、こんにちは。文香ちゃんに陽菜ちゃんに美咲ちゃん、しばらく見ないうちに綺麗になったねぇ。それに颯太君、大きくなったね。前会ったときこんなに小っちゃかったのに」
思わず颯太君の頭をなでながら応える真由美姉さん。
お互い遠方に住んでいるため、早々行き会えず、実に3年ぶりくらいに会うので、子供達の成長にびっくりした様子です。
みんなが一通り挨拶を終え、
「さ、みなさん家の方へ行きましょう。学は姉ちゃんの車の後ついて来て」
真由美姉さんが島の知り合いから借りたワゴン車にみんなを乗せ、その後ろを宮坂お父さんがまた陽菜さんを乗せて軽トラでついていきます。
真由美姉さん一家が住むこの島、周囲はだいたい9キロメートル。細長い形をしていて、港の島を挟んで反対側の海岸には長い砂浜の海水浴場があります。本土からは船で来るため、日帰りの海水浴客は少なく、泊りで来る客ばかりなので、広い砂浜の割には空いていて、穴場の海水浴場となっています。海水浴シーズン以外も豊かな海の幸を目当ての釣り客で大いににぎわいます。
フェリー乗り場から車でわずか3分、島の反対側にある真由美姉さんの家の到着。網元だった昔から続く家柄で、島の中でも一位、二位を争うような大きな家。
前庭に車を止め、みんな降りると、
「あらあら、みなさんいらっしゃいませ。遠くからようこそ」
と、車の止まる音を聞いて、これまた良く日に焼けて、いかにも働き者そうな小柄なお婆さんが玄関から出てきました。
「あ、お義母さん、お久しぶりです。今日はお招きいただいてありがとうございます。いろいろお手数をおかけしますが、よろしくお願いします」
と宮坂お父さんがご挨拶。
「「「「「「「よろしくお願いいたします!」」」」」」」
他の家族も元気よくご挨拶。
真由美姉さんの旦那さんの、御年70歳になるお母さんが、日に焼けた顔を綻ばせながら、
「なんのなんの。ゆっくりしていってください。ささ、上がって上がって」
とみんなを家に招き入れます。
「お邪魔します!!」
みんな家にあげてもらい、大きなお座敷に通されます。
持って来た、宮坂家の地元で採れたとれたての夏野菜やらスイカやらのてんこ盛りのお土産を渡し、お座敷にとりあえず落ち着き、真由美姉さんから出されたお茶を飲み、みんなで一息。
「あれ?義兄さんとお義父さんは?」
宮坂お父さんが真由美姉さんに聞きます。
「ああ、二人とも山国から来るみんなに、自慢の海の幸を食べてもらうんだって、朝早くから張り切って漁に出てるわ。もうすぐ帰ってくると思うけど」
真由美姉さんの答えに
「いや、そんな大層にしてもらわなくてもいいのに」
と、恐縮する宮坂お父さん。
「なになに、二人とも人をもてなすのが大好きな人だから。久しぶりのお客さんが嬉しくてしょうがないのよ」
と真由美姉さんのお義母さんがにこにこ答えます。
「千夏ちゃんと千穂ちゃんは」
宮坂お母さんが聞きます。
「二人なら、部活で高校に行ってるから、多分お昼の船で帰ってくると思うわ」
と答える真由美姉さん。
真由美姉さんの双子の娘、千夏さんと千穂さんは高校2年生。半島の方にある高校に通っていて、毎日船で通学しています。
「さて、これからの予定だけど、あなたと父さんはピーチパラソルとか準備して、子供達をとりあえず浜で遊ばしてあげて。私と母さんはこちらでお昼の準備のお手伝いをするわ」
と宮坂お母さんが段取りを決めます。
今日のお昼は、真由美姉さんの家が獲ってきた新鮮な魚介類と、宮坂家がクーラーボックスに詰めて持って来た地元産の牛肉と夏野菜を使い、浜辺でバーベキュウをすることになっています。
「了解」
と宮坂お父さんとお祖父ちゃんは、軽トラから荷物を降ろして目と鼻の先の浜へ道具の設営に行きます。
「さ、子供達。こっちの部屋へおいで。水着に着替えよか」
と真由美姉さんのお義母さんが子供たちを隣の部屋に連れて行き、海水浴の準備をさせます。
「うん、これだけしっかりしてれば、大丈夫だろ」
宮坂お祖父ちゃんは、立てたピーチパラソル2本の強度を確かめ、満足したようです。
「えーと飲み物の入ったクーラーボックスはこれで、食材のはこれ。ごみ袋はこっちが可燃物でこっちが空き缶入れ。砂遊びの道具も大丈夫と。あ、後はバーベキュウセットを用意しないと」
宮坂お父さん、子供たちがすぐに遊べるよう準備を整えます。
穏やかな海から、小さな波が打ち寄せる浜辺。水平線の近くには、大型の船がゆっくりゆっくりと航行しているのが見えます。
「海、青いですね~」
「ああ、そうだな」
準備が終わり、子供たちが来るのを待っている宮坂お父さんとお祖父ちゃん。設営したビーチパラソルの下で、手持無沙汰気にぼーっと海を眺めています。
「ここは思ったほど、混んでませんね」
「ああ、空いているくらいだな」
シーズン真っ只中なのに、なぜか空いている砂浜を不思議に思う二人。
身長180㎝超えの筋肉質の体躯で、ワイルド系イケメンの宮坂お祖父ちゃんと、どちらかと言うと細身の正統派イケメンの宮坂お父さん。その二人がピーチパラソルの下、並んで座ってぼーっと海を眺めている絵図らは、一部お腐りになったご婦人たちの妄想をかきたてるようなもの。。
なぜか、そこそこに人が混んでいる砂浜が、宮坂家のビーチパラソルのそばだけは、妙に空いているという状況になっています。
そんな事とはつゆ知らぬ宮坂お父さんとお祖父ちゃん。子供たちが準備を終え来るまでしばらく、並んでぼ~と海を眺めるのを楽しんでいました。
つづく。
なかなか、海水浴シーンにたどり着けない。




