80:仲間
どっちが大人だったんだろうね?
「と・も・か・く!はーちゃん僕は怒っています!」
「はーちゃんが強いとか、どう考えてるのかはわかんない!」
「僕らに何か隠し事しているのも今は考えないようにする!」
「僕以外にも優しくするのも寛大なんで目を瞑ってあげる!」
「だからこれから仲良くしよ?」
こちらに向かって手を差し伸べるルナ。さっきまでの表情と異なり慈愛に満ちた笑みを浮かべている。
「み~んな誰だって秘密がある。僕だってあーちゃんだってさきっちだって悩みがある」
「だったらはーちゃんが秘密があってもおかしくないじゃん」
「今は秘密でもいつかは教えてもらえるようにこれから仲良くしようよ」
「・・・もう怒ってないのか?」
「怒ってるって言ってるじゃん!でもはーちゃんは友達だし仲間だもん!嫌いになるわけないじゃん!」
笑えるな。俺の方が大人なのに今はルナの方がずっと大人に見える。
理屈じゃなくて感情で喋る言葉はずしりと重く俺の心に突き刺さっていく。
「そうですね。お兄さん・・・今はユイちゃんかな?お世話になりましたし頼りにしてますからね」
アカリが俺の後ろから抱き着きながらそう呟く。
「ま、ルナの言うことも一理あるわな。言ったろ?お前は妹分みてーなもんだって」
さっきまで赤面していたサキが笑いながら俺の頭を撫でる。
「にっしっし、はーちゃんは人気者だからにがさないかんね~」
俺の頬を掴んでルナは自分の額と俺の額をこつんと当てあう。
なんだろうなこの光景は。言葉にするのにこれだけ苦労する状況なんてものは今まで一度たりともなかった。
普段は水と油のように混ざり合うことのない俺と((彼女))の感情がここだけは一つに重なる。
「っ・・・う・・・」
ぽたりぽたりと地面に目から零れ堕ちる涙が落ちていく。本当に涙もろくなってしまった。
俺たちはどこかでルナたちを憐れんでいた。ラクーンのことを言い訳にするつもりはないが、誰にも知られないで戦う彼女たちのことを弱者だとどこかで思っていた。
だが現実はどうだろうか?今目の前にいる彼女たちのどこが弱者なんだろうか?
色眼鏡をかけ、勝手に思い込んで自分の行動に自己満足していた俺はなんなんだ?
他人を思いやり、自分勝手な行動をしている俺を受け入れている彼女たちのことを俺は勝手に悲劇のヒロインだとばかり思い込んでいた。
そんなろくでもない思想に支配されていた俺にとって彼女たちの行動はまぶしすぎた。
サキに聞かれて後悔してまた俺は間違った行動をとっていた。
どれだけ俺は間違えれば気が済むのだろうか。どれだけ俺の行動が彼女たちを傷つけていたのだろうか?
「はーちゃんは泣き虫さんだね。」
そしてそんな上でまだ俺は彼女たちに隠し事をしないといけない。それがとても苦しい。
「今まで頼ってばかりだったのでこういう時は頼ってください」
そんな優しい言葉をかけないでくれ。
「はん、まだまだおこちゃまだな」
俺のことを・・・受け入れないでくれ。
鈍く光る鎖が一つ解けて消えていく。そのことに気づくことはない。
俺はただ後悔と少しの嬉しさの中で泣き続けている。
こうしてようやく彼女たちは本当の仲間として一歩進み始めた。
彼じゃないとダメなんです。彼女たちにとっても彼にとっても必要なのは。
物語の主役は彼ですが、真の主役はルナなのかもしれませんね




