表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
PR
72/91

第70話 Story about スパルタクス 14

「間違いなく会談に参加すると、声を掛けた全ての部族から返答があったぜ」

 ドラヴァレットの得意気な報告に、ポフダンが満足気に頷いた。


「アールパード族を中核とした、50を超える部族が統合された緩やかな連合国家の樹立が、目前のところまで来ている。


 ニーシャプールやバーラーブやトクマクといった有力な都市を含み、ニーシャプールとサランジュが抱えていたような歴史的反目も沈静化され、安定的な国家の樹立が見通せるようになった。


 そして何より、帝国が威圧的な外交方針を転換し、諸勢力の事情を斟酌して融和的に振舞うようになってくれた。


 こうなれば、残された不安材料はバクトラ王国のみだ。

 あの国の、略奪を基本する姿勢をどうにかできれば、生まれようとしている連合国家の前途を扼するものは、無くなると言っていい」


「で、そのバクトラ王国を何とかするのは、マゼーパ族の仕事ってことになるわけだな」

 ポフダンとドラヴァレットを交互に見ながら、スパルタクスが言った。「もとは構成部族の1つであり、バクトラ王家の血筋を引いてもいる我らこそ、これを成さねば。


 それに向けて、まずは現在のバクトラ王国構成部族の中で、我々に味方してくれそうな部族に会談を持ち掛けて、了承されたわけだな、ドラヴァレット? 」

 話しながらスパルタクスは、自身の存在が劇的に拡大して行くことへの興奮に、人知れず打ち震えていた。


 培養奴隷としてロードに使役されるだけだった自分が、今ではマゼーパ族の幹部として、一族の命運を担う会議に参加している。

 その一族は、ロードも属している航宙民族の連合王国に対し、思い切った行動を仕掛けようとしている。


「ああ、そうさ、タック。全体の2割強である14の部族が、バクトラの変革に向けての会談に、参加を表明した。

 王国の足元を揺るがすのに、十分な数と言える。


 これらの部族は、我らが事を起こせば追随するものと期待できる。

 それ以外にも、日和見的な部族がいくつかあり、半分近くを味方にできる可能性もある」


 ドラヴァレットに続いてポフダンも、前向きな発言をする。

「我らに賛同しない部族の中にも、命を懸けてまで大王の一族を守ろうとは、思わぬ部族が少なからずあるから、王国の変革に向けての行動は、十分に勝算がある」


「いよいよ、大勝負の時がやって来たな、族長」


「そうだな、ドラヴァレット。旧帝国エクパティアに対抗する必要から、周辺にいた12の航宙民族が結託したことに端を発し、和解と臣従、反抗と対決、逃亡と襲撃などを、旧帝国とも新帝国とも、何度も繰り返し、その中で徐々にでも着実に勢力を伸ばしてきたバクトラ王国に、これまでになかった変革を経験させてやれそうだ」


「困難な事態になれば、アールパード族の後ろ盾も期待できるのだろう?

 ロカレーンが、その点は任せておけと言っていたからな」

 スパルタクスが、ポフダンとドラヴァレットのどちらにともなく問いかけた。


「うむ。極力手を焼かせたくは無いが、ロカレーン殿は、いつでも頼れと言っている」

「今のところは、マゼーパ族だけでやり遂げるつもりだが、アールパード族の後ろ盾を考慮に入れなきゃ、決断できなかった行動でもあるな、正直なところ」

 ポフダンは重い口調で、ドラヴァレットは明るい口調で、それぞれ答えた。


「より万全を期すなら」

 口をはさんだのは、セシリアだった。「宇宙保安機構にも、後ろ盾を依頼しておくべきだわ。機構の実力は、あなた方も聞き及んでいるでしょ? 」


「そうだな」

 ポフダンは素直にうなずいた。「バクトラ王国の底力も侮れぬものがあるし、事の成否は生まれ来る連合王国の、何千万人もの命運に影響することだ。

 個人的なプライドにこだわっている場面ではないからな。


 セシリアの名を出せば、ロザリオという青年が動いてくれて、話が早く進みそうなのだから、宇宙保安機構の支援も、状況によっては要請することにしよう」


(セシーはきっと、純粋にポフダンたちの決断の成功を願って言っているのだろう)

 スパルタクスは、頭ではそう考えていた。

 だが心の片隅では、地球系に戻ることへの布石を打っているのではと、訝ってしまっている。そんな自分を、自覚していた。


 セシリアは既に、地球系に戻りたい気分になってしまっている。自分の吐いた言葉のせいで。傷つけたせいで。

 けれど、一旦はここに残ると言い切ってしまった手前、にわかにはそれを表出させられないでいる。


 だから、戻ると言い出せるタイミングをつくるための、布石を打っている。今の発言はその一環なのだ。

 こんなイメージが、心底に固着してしまっている自分が、スパルタクスには情けなかった。


 その為にできてしまった、セシリアとの間の見えない壁も、未だに彼を苦しめている。


「別に私もロザリーも、そんな重要な決定に影響力を発揮できる立場じゃないわよ」

 彼の想いを置き去りに、セシリアは話を進めていた。「私の名前なんか出さなくても、略奪が基本の王国より、共存共栄を求める人々の味方をするものなのよ、宇宙保安機構は。


 だからマゼーパ族として依頼しても大丈夫だと思うけど、地球系の私の名前を出した方が話しやすいと思うなら、そうしてもらっても構わないわ」


 この会話の十日後には、ポフダンとドラヴァレットとスパルタクスは、会談の場へと出立した。

 バクトラ王国領内で、同志の部族と密かに落ち合う予定だ。


 久しぶりとなる王国の領内へと、彼らを乗せた連絡船が侵入して行った。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/12/16  です。


 バクトラ王国の名が久しぶりに出てきました。忘れてしまっている方もおられるでしょうか?

 スパルタクスとセシリアが身を寄せるマゼーパ族は、バクトラという部族連合王国から逃げ出し、ロカレーンの率いるアールパード族と同盟し、新たな部族連合王国を誕生させようとしています。


 マゼーパ族の現状は、バクトラ王国に追われる身であり、正面からぶつかり合えば勝ち目のないくらい勢力規模に差があります。

 アールパード族が部族連合王国を創ることも、いずれ間違いなく阻止しようとして来ると思われます。


 そんなわけで、バクトラ王国というのが、遅かれ早かれ何とかしなければならない課題として、積み残されたまま物語は進行していました。

 他にも積み残された課題はあります。


 セシリアがしばらく滞在していたプルシャプラという天体都市での人権状態や、マラカンダという別の天体都市への従属状態なども、解決しようとしたけど後回しにしてしまっています。

 ロザリオたちにとっては積み残された課題であり、物語としては回収すべき伏線です。


 こんなことを後書きで書くなんて、相変わらず無粋な事をしていると我ながら思いますが、忘れられてしまってたらどうしよう、という不安から、性懲りも無くまた書いてしまいました。

 そして、物語の縦軸となっている最大の課題=ロザリオとセシリアはどうなるのかも、さすがに忘れられはしないと思っていますが、注目し続けて頂きたいです。


 不安から余計な事ばかりしている作者ですが、なにとぞご寛容願います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ