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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第39話 Story about スパルタクス 4-2

「ぬうっ、帝国に庇護を求める定住民など、皆殺しにしてしまえっ! 」

「そうすれば、我らが利用できる定住民が、いなくなりますな。

 自分たちで必要なもの全てを生産できぬ我ら航宙民族は、定住民から物資を獲得せねば、生き永らえられません。


 略奪によるか、交易によるか、いずれにせよ我らは、彼らの作り出す物資を必要とします。

 そんな彼らを皆殺しにしては、自分の首を絞めることになりましょう」


「ならば、絶対的な恐怖を植え付けて、決して逆らえぬように・・・・・・・」

「それをやって来た結果、多くの定住民が帝国の庇護下に入ってしまい、存立を脅かされる危機を招こうとしているのですぞ、大王」


「くっ・・・・・・では、どうせよと」

「抑圧を止め、彼らと友好を結び、対等の立場で取引をすれば良いのです。


 我らは交易路の護衛や物資輸送を請け負い、その対価として彼らの生産物を頂く。

 双方ともに納得のいく条件での、継続可能な交換を行うのです」


 このポフダンの提案に、大半の部族長が怪訝な顔になるのを見て取るのと同時に、スパルタクスは、ごく僅かにだが、頷いて同意を示す部族のあることに気付いた。


「馬鹿なっ! あんな下等人種と、我ら誇り高き航宙民族が、対等など・・・・・・。

 ヤツらは我らに、支配され、搾取されるためだけにいるのだ」


「彼らの生産物が無ければ、我らは生きて行けぬのですぞ。

 一方彼らは、我らの存在など無くとも、生きて行くのに困難は無い。


 彼らを下等と見なすのは、そんな彼我の状態からくる、劣等感の裏返しに過ぎませぬ。

 こんな稚拙な感情論は脇において、冷静に客観的に事態を見れば、定住民と友好関係を築く方が、王国の為になります」


「言葉が過ぎますぞ、左覇星王殿」

 大王が饒舌な間は静かにしていた進行役が、ここに来て声を上げた。「大王のお考えを、劣等感の裏返しなどと、あなたが大王一族と血縁関係にあるマゼーパ族の長でなければ、即刻重罪に問われている発言ですぞ。


 定住民どもを略奪と搾取の対象として見下すのは、我ら航宙民族の誇りの礎だ。

 それを守り抜こうとする大王の崇高なお考えが理解できないなら、たとえ大王の血縁と言えども、バクトラ王国の一員たる資格を疑わなければならぬ。

 ガウベラ帝国ごときに恐れおののいて、おかしな考えに惑わされぬように願いたい」


 ポフダンは沈黙した。黙したままじっと進行役を見つめ、たっぷりの間をとった後、小さなため息に続いて言葉を繋いだ。


「私の考えが惑っているとおっしゃるなら、もうこれ以上は何も言いますまい。

 帝国におののいていない方がおられるのなら、その方々に帝国への対応はお任せしましょう。


 このまま定住民を虐げ続ければ、必ずや敵に回すことになる帝国と、いったい誰が率先して対峙するのか分かりませんが、私の発言はここまでとしましょう」


 この直後には進行役も、次の発言までにたっぷりの間を要した。

 ポフダンに向って、何かを言うのを諦めるのに要した間だと、スパルタクスは感じた。


「損な役回りから、上手く距離をとったわね、このポフダンっていう人。

 怖いものを怖いと素直に認めた人から、距離をとれるってわけだわ。

 それに今頃気付いて、他の人たちはポカンとしているのよ、きっと」


「全くだな、セシー。定住民を虐げる者と帝国と繋がる者を、上手く追い詰めた」

 言いながらスパルタクスは、進行役が視線を大王に転じ、問いかけるようにつぶやくのをモニター上に見つめた。


「では、ガウベラ帝国に対応する役を負う部族を、決めておきましょうか? 」


「その前に、ガウベラの臣下や傭兵に成り下がっている者を、炙り出せ。徹底した調査を実施せよ。

 帝国にも定住民にも、一切すり寄ることは許さぬ。


 航宙民族にあるまじき行為を完全に止めさせた上で、帝国に率先して対峙させるのだ。

 それらの任を負う部族を、今この場で決めよ」


「調査の件ならば、われらマゼーパ族が引き受けましょう。

 帝国の戦跡から、多くの証拠品を入手しておりますからな」

「うむ、この左覇星王の言には、理があるな」


 さっき眼を泳がせた族長たちは、今度の大王の発言に、なお一層激しく眼を泳がせている。脂汗まで浮かべている者もいる。


「では、最初の調査対象は、バイルク族とさせて頂きましょう。

 使役している培養奴隷の数に関する不正申告の調査も、近く実施される予定なのですから、合わせて行えば効率も良い。


 異存はありませんな、バイルクの族長殿」


「いや、そ・・・・・・それは、その・・・・・・」


「絶体絶命ね、バイルク族は」

 セシリアのそんな見解の直後に、スパルタクスを動揺させる声が発せられた。


「しばらく、お待ちください」

 発言者の見当たらない声だった。

「マイロード・・・・・・」


 未だにこの声には、鼓動の高鳴りをどうすることもできない。

 そんなスパルタクスに気付いたセシリアが、すかさず彼の手を握る。


「今回も、リモート参加なのね、あなたのロードを騙っている人は」

 手の温もりと客観的な状況確認が、スパルタクスの鼓動を鎮めた。


「バイルク族への調査には、わがアフシ族も参加させて頂きたい。

 バイルクの使役する培養奴隷数に関する情報は、我々の申告への信頼性にも影響します。

 おかしな情報操作をされては困りますのでな。


 定住民や帝国への対応に、あんなにも臆病な意見をお持ちのマゼーパ族だけの調査では、我らとしても安心できませぬ」

 声だけでの主張に、しかし進行役は、首をひねって不満足を露にした。


「しかし、アフシ族は直接の利害関係者ということになる。

 それが調査に参加したのでは、それこそ信憑性が損なわれるではないか」


「彼らが単独で調査したのなら、信憑性が低いでしょうが、我らマゼーパ族との合同調査となれば、問題ないでしょう」

 アフシ族を弁護したのは、意外にもマゼーパの族長ポフダンだった。


「なるほど。マゼーパ族とアフシ族が共に真実と認定した情報ならば、疑う余地は無くなるというものだな。

 マゼーパ族がそれで良いと言うなら、そうしようではないか。いかがですかな、大王様」


 振り返った進行役の視線の先で、クルトゴルが黙って小さく頷いた。

「おお、有難い。左覇星王殿、かたじけない」


 スパルタクスのロードである男の声は、謝辞に続いて更に言った。「それから、帝国と率先して対峙すると決まった部族に対しては、培養奴隷を無制限に提供することを、お許し頂きたい。


 帝国は恐るべき存在ですが、培養奴隷を潤沢につぎ込めば、必ずやこちらに有利な対処が叶いますでしょう。

 そうすれば、左覇星王殿が言っておられたことが、いかに臆病な見解であったかが明確になります。

 それこそ、大王の血筋でなければ追放処分になっていたであろう程に、航宙民族の誇りを失った弱腰であったと。


 培養奴隷に関しては、膨大な犠牲が予測されますが、なに、いくらでも替えの効く道具に過ぎません、アレは。


 定住民の生産物が不可欠とはいえ、培養奴隷という道具を生産して使いこなせる我らが、定住民に劣等感など覚えるはずは無い。

 定住民を虐げるのは、航宙民族の特権なのです。そのことを、培養奴隷の潤沢な供給を通じて、我らアフシ族が証明して見せましょう」


「ロ・・・・・・ロード・・・・・・」

 怒りとも悲しみともつかぬ感情が、スパルタクスを突きあげる。

 が、アース放電のごとくに、セシリアと繋がった腕から、たちまちにしてそれは抜け出していく。


「大丈夫、ダック」

「ああ、セシー」

 手をつないで見つめるモニターから、彼らの怨敵への揶揄が聞こえた。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/5/13  です。


 航宙民部族の連合王国であるバクトラの、族長評議会の中で、話題が色んな所へと飛んでいく感じの場面でした。

 飛び過ぎて何を言っていたのか、思い出せなくなってしまったりされている読者様も、おられるでしょうか?


 定住民やガウベラ帝国と、密かに癒着している部族らいるらしく、大王がそれに怒っていました。

 一方で定住民への迫害を、自慢し合うという場面もありました。


 きっと、定住民と癒着している部族も、定住民を迫害したとの自慢話を繰り広げたりしていたことでしょう。

 むしろ癒着の事実を隠すためにこそ、殊更に迫害の事実をでっちあげたり誇張したりしていたかもしれません。


 また、帝国との癒着を非難していたのに、バクトラ王国は帝国が誕生した当初から、エクパティア打倒において協力していた事実も示されました。

 王国も各部族も矛盾だらけで、皆が裏の顔を隠しながら、表向きの結束は維持しようと努めています。


 今も昔も、国家の中枢とはこんなものではないでしょうか?

 未来の宇宙でもこんな感じであることは、想像するのに難はないでしょう。


 そんな中、バイルク族が裏の顔を暴かれそうになっていました。

 使役する培養奴隷数について疑われていましたが、帝国との癒着でも後ろ暗いところがありそうです。


 マゼーパ族が調査を任されましたが、アフシ族が助け舟を出す姿勢であることも示されました。

 バイルク族とアフシ族が裏で結んでいる感じも見えたでしょう。


 そんなアフシ族がマゼーパ族と共同でバイルク族の調査に乗り出す、ということが決定していました。

 これくらいのことをここで押さえておけば、この後の展開は理解できるはずですが、「これくらい」というのがボリューム過多なのかどうか、作者には判断し切れません。


 読者の皆様には、是非この後の展開をしっかりとご理解頂きたいので、上記の内容をどうにかご記憶頂きたいと願っています。

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