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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第35話 Story about スパルタクス 3

 新たに指示された座標に向けて、転進した。

 自分の駆る戦闘艇が、正しい座標を指しているのをデイスプレイ上に確認すると、スパルタクスは観測情報の精査を再開した。


(せっかく都合の良い任務を与えられたのだから、ここで何とかしたいものだ)

 評議会場周辺をパトロールしながら、脱出に使えそうな船はないかと、眼を走らせ続ける。

 簡単なミッションではない。どの船にも持ち主がいて、厳重に警戒しているから。


(奪うとすれば、小型の船だな。輸送や連絡用のやつか。

 潜り込むなら、大型の方が隠れやすいだろう。千人規模が暮らす集落船なら、隠れる場所も見つけられるか)

 脱出を決意した矢先に、宇宙船の集まる場に立ち会えたのだから、この機は逃せない。


「ずいぶん念入りなパトロールを、やってくれているな。感心だ」

 この任務を指揮しているドラヴァレットが、通信機で声をかけてきた。

(そっちこそ、ずいぶん熱心なコマンダーではないか)

 内心で、スパルタクスがつぶやいた。


 彼ばかりを気にかけているようなら、行動を怪しまれている可能性に警戒しなければならないところだ。

 しかしドラヴァレットは、部下全員をこまめに気にかけ、頻繁に声もかけている。


 こんな几帳面さは、最初から発揮された。

 一時使用の培養奴隷に、直に面会して作戦内容を説明するコマンダーなど、これまで見たことが無かった。

 任務に参加する十人ほどを集め、持ち場や役割を、立体投影の模式図を使って丁寧に説明した上、1人1人目を見て握手と言葉を交わした。


(安心感を与えるコマンダーだ。彼のもとでなら、任務への自信が湧く・・・・・・おっと、そんなこと考えている場合じゃない。脱出の隙を、探さなくては)


 気持ちを切り替え、今しがた飛び過ぎた大型集落船に、潜入の隙が見つからないのを確認した直後、巨大な宇宙基地を、彼の戦闘艇がレーダーで捕らえた。

 時代によっては、テトラポッドと呼ばれる物体を連想する者もいるであろう形状の、人工宇宙建造物だ。


 その中で係留されていた、おそらくは百を超えるであろう宇宙船をスパルタクスは見た。

 ドラヴァレットが作戦の説明をしたのも、その中だ。評議会も、そこで催されている。


 更には、多くの人々がこの中で強制労働に就かされていることも、ドラヴァレットは彼に教えてくれた。

 各部族が拉致して来た人々に加え、王国外からの流亡民や王国内で犯罪者とされた者たちが、厳しい苦役に耐えているそうだ。


 基本的に自分たちでは生産活動を行わない航宙民族は、他所者や犯罪者に強制労働をさせることで、入用のものをここで作り出しているらしい。

 船艇の出入りもひっきりなしだ。バクトラ王国下にある各部族船にとっての、補給や補修の拠点でもあるのだろう。


(こういう拠点を持っているから、バクトラ王国下の航宙民族どもは、この近辺で反復継続的な宙賊活動を実施できるのだろう)


 エネルギー供給も、受けられる施設のようだ。

 テトラポッド形の宇宙基地の公転軌道では、歴代国王の墳墓天体とされている人工物が周回している。

 それに、核融合施設もあるらしい。各部族が歴代国王の威光を感じながらエネルギー供給を受けることで、王国の求心力が維持されるとの考えによるとか。


 王国の産業的中心にも、政治的中枢にも、精神的中核にもなっている宇宙基地だった。

(こんなことを、尋ねもしないのに親切に教えてくれたあのコマンダーは、やはりとても珍しい存在に・・・・・・おっと、またコマンダーのことを。隙を探すことに専念だ)


「C-683、聞こえるか? さっき示した通りに、そこから22-19-66ポイントに移動してくれ。

 ここまでの観測結果は受け取った。念入りにスキャンしてくれて助かるぜ」


 首を振って振り払おうとしたコマンダーからの通信に、苦笑しながらコンソールを叩く。

 十分丁寧に説明した手順なのに、こまめな進捗確認という気配りまでして万全を期している。

 感心しながら、パトロールを続けた。


 3時間余りもこんな感じで飛び回った後、ドラヴァレットは任務終了を告げて来た。

「解散だ。ご苦労だった。おかげで族長評議会は、無事に成し遂げられた。

 完璧な警護ができたことを、お前たちに感謝するぜ。じゃあな」


 初めて聞くような、胸に染みる労いの言葉と共に、スパルタクスもC-683の名前から解放され、自由の身になった。

 労いの言葉の染み込んだ心が、なぜかセシリアの肌を求めるのを不思議に思いながら、そのセシリアの待つ住居艇に引き返した。


「お帰り。お疲れ様」

 スパルタクスの機先を制して、セシリアの方から距離を詰めて来る。意表を突いた急接近だ。

 何度も経験したが、何度も面食らう。あざやかすぎる急接近に呆然としている隙に、口を口で塞がれていた。


 長すぎる口づけで、スパルタクスが心地よい脱力におぼれそうになっていた時、住居艇のコンピューターが充電完了のアラームを鳴らした。

 彼らの住居艇は今、ドラヴァレットの所属するマゼーパ族の集落船から、電力の供給を受けている。

 マゼーパ族は、墳墓天体の核融合施設から、直に電力を供給されている。


 パトロール参加への報酬としての充電が完了したと、アラームは告げていた。

「宇宙保安機構軍の艦船のように、反物質動力炉が使われていないから、かなり頻繁な充電が必要なのね。


 その電力供給についても序列があって、天体墳墓から直接供給されるのは、かなり上位の部族の船だわ。

 他の部族は、上位部族を経由する形でしか電力を得られない。私たちと同じように」

 長いキスの後にセシリアは、基地へのハッキングで得られた情報を伝えた。


「肝心な情報は、私もお前も、入手できなかったということか」


「焦っちゃダメ。ここで得られる情報は、まだあるわ。一番有望な情報がね」


「ロードがこの船のコンピューターに、評議会の映像を転送して来るのか? 」


「そうよ。これまでも毎回そうしていたらしいから、今回もきっと来るわ。

 あなたにそれを見せて、指示を出す場合を考慮して」


 スパルタクスにはアクセス権限の無かったはずの情報を、セシリアがハッキングにより獲得したことで、ロードのそんな習慣も知るところとなった。


「そこに必要情報があることを、期待しているのだな。

 俺も色んな情報をコマンダー・ドラヴァレットに教わったのだが、脱出に繋がると思えるものは無かった」


「大丈夫よ。じっくり探せば、きっと見つかるわ」

 気弱な声を出すスパルタクスの手を、セシリアが握った。ドラヴァレットの名を口にした途端、なぜかまたスパルタクスは、セシリアの肌が恋しくなっていた。

 そこで手を握られたものだから、沸き上がる欲求を抑えることはできなかった。


 不意に、スパルタクスはセシリアを押し倒す。されるがままだった。

 彼の想いは、余すところなく彼女に届いていると信じられた。

 彼の肉体の全ての部分は、彼女の肢体の全ての部分に、思うがままに辿り着いた。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/4/15  です。


 評議会の開催されている基地と、墳墓天体の関係はご理解頂けましたでしょうか?

 月が地球の周りを回っているように、墳墓天体が基地の周りを回っているわけです。


 もちろん大きさは段違いですが、公転という現象は人工の施設間でも起こり得ます。

 公転させないと、手頃な距離を維持できないでしょう。


 核融合施設があってエネルギー提供ができる墳墓天体を、基地と手頃な距離に配置し続けるには、公転させるしかありません。

 地球の上と宇宙とで、意識を転換しなければならない典型的な事例です。


 この墳墓天体が公転している基地が、スパルタクスが以前夢で覗き見たものと同様な評議会の会場となっていて、スパルタクスはその護衛をしていますが、この状況を利用して脱出に使えそうな宇宙船の物色もやっていた訳です。


 この辺りの状況は、是非ともご記憶頂きたいと思います。

 基地がテトラポットの形状であることや、ドラヴァレットという名のコマンダーが登場していたことも、合わせて覚えておいて欲しいです。


 覚えなければいけないことが、ごちゃごちゃと沢山出て来てしまって恐縮ですが、ここからのストーリーを見失わないようにするためには、上記の情報がとても重要になってきます。

 反則を承知の、後書きでの説明でした。

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