第28話 Story about ロザリオ 4-4
「そんな、できるかどうかまだ分からないような戦闘艇団は、どうでも良いんだよ、チーフ・ミハル。4課2班の随伴戦力としての私を、評価して欲しいって言ってるんじないか」
「あれ? 1-1-1ができたら、是非入隊したいって、この前飲んだ時には泣きながら語っていたのじゃなかったかな? 」
「うわっ、また、あの時の話を持ち出すのか」
「ははは、まあ、あの時のことは、置いておくか。
でも、もちろん、4課2班の随伴戦力としても、とても頼もしく思っているよ」
「本当かなぁ。どうもチーフ・ミハルは、トンラ族の知見や航宙民族の血筋にばかり、目が行っているように思えるのだよなあ。
なあ、そう思わねえか、ロザリオ君よ? 」
「えっ? いや・・・・・・それは、別に、その・・・・・・」
「大尉、その質問をロザリオ君にぶつけるのは、ずるいよ」
「あはははは、ずるくはないさ、チーフ・ミハル。そう思うだろ、ロザリオ君?
新入り職員が2人も連続で逃げ出すような過酷な任務に、健気に付き従って頑張ってる私を、出身部族の功績でしか評価してくれないんだぞ、あんまりだと思うだろ? 」
「え、そ・・・・・・そうなんですか? 」
「そんなことは無いぞ、ロザリオ君。くれぐれも本気にしないでくれよ。大尉も、勘弁してくれ」
「いいや、チーフ・ミハル。この際だから、徹底的に言わせてもらうぜ、あはははは。聞いてくれよ、ロザリオ君・・・・・・」
チーフと大佐の掛け合いがヒートアップすると、場の空気は一気に砕けたものになった。
地味で地道な活動に、長く釘付けになるのが任務だとしても、それを共にこなすのが彼らであるのならば、少なくとも退屈することはなさそうだと思った。
数日後には、宇宙要塞チェルチェンから出発するボドルムという名の航宙戦闘艦に、ロザリオは乗っていた。
ガウベラ帝国の影響調査という任務が、早くもスタートする。
コッペパンのような形状をした艦の中央辺りにある航宙指揮室に、ロザリオの席もある。
それに深く身を沈めて、想いを巡らせる。
ショーン・ブランケットは、散々小言をこぼしながら、彼より1日早く飛び立った。
「帰順した航宙民族の護衛だと、ふざけるんじゃねえよ。
何でこの俺が、野蛮人の護衛なんぞ、やらなきゃならねえんだ。
帰順しようが何しようが、野蛮人であることは変わらないだろ。
俺はそんな野蛮人を、排除するために保安機構に入ったんだぞ」
「そんなこと言うな。
帰順して、同盟の締結を約束したのなら、地球連合の一員じゃないか。
これまでどれだけ野蛮であったとしても、これからは同胞として接するべきだ」
ショーンをそう諭したサイモンは、地球連合からの離反を表明している惑星国家パータリプトラを説得して、連合に復帰させるという課題を負ったチームの一員として、明日ここを旅立つ予定だ。
「いいよな、サイモンは。閣下のおひざ元に行けるのだものな。
つい先日にも、宙賊の撃破に成功された偉大な方に、お目見えできる可能性もあるのだろう? 羨ましいぜ」
「偉大なものか、あんなもの。
宙賊撃破については、どこかの宇宙系との裏取引の可能性や、培養奴隷の活用などという非人道的な手段を使っていることが、公然の秘密とされているのだぜ。
そんな悪党を抱える国の説得なんて、気が重いったらないよ」
「どうしてそんな認識になるんだ。
宇宙系にも貴重な人脈を持っていることや、航宙民族の戦力である培養奴隷を逆にこちらが使って見せたことは、マクロクリン閣下の偉大さの証拠だろう。
あの方は、我ら地球系にとっての救世主となるお方だ」
どこまでも平行線をたどる主張を繰り返しながら、彼らは別の道を進むことになった。
3年をずっとともに過ごした学友と、この次はいつ会えるか分からないのに。
「ガウベラ帝国もパータリプトラの件も、どちらも重要な課題だ。お互いに頑張ろうぜ」
ロザリオとサイモンは、そう言って握手を交わして別れた。
言葉にはしない深い憂慮を、互いの眼の中に見つめながら。
「セシー」
任務へと向かう戦闘艦ボドルムの中で、人知れず憂慮を言葉にする。「どんどん、君から離れて行くよ。アガデ星系からは、ずっと離れた場所に向かっているんだ。
捜索チームがきっと見つけてくれると信じているけど、君を探せないことは、やっぱり苦しいな」
「どうしたロザリー、緊張しているのか? 俺で良ければ、相談に乗るぜ」
数日の間にすっかり打ち解けたイゴルが、右斜め前から気さくな笑顔で声を掛けて来る。
円環形式が航宙指揮室のレイアウトだから、互いの顔をほぼ正面から見られる。
「緊張なんてしないよ、大尉。色々心配ごとを、思っていただけさ」
実は同世代だと分かった相手だから、ロザリオも砕けて話すことをこの数日の間に決めていた。
「そうか」
話を聞き終えたイゴルは、ロザリオよりも深刻な顔になった。「失踪したというガールフレンドのことを、考えていたのか。
それを置いたまま、数か月もかかる旅路につくのだものな。トンラ族が懇意にしている定住型の部族から情報を得た、はるか遠方で未知でもある天体地中都市に、接触を試みる任務に。
気が沈むのも無理はないか」
ヘラクレス回廊群における宇宙保安機構の活動域の中では、最北端近くに位置するのが宇宙要塞チェルチェンで、彼らはそこから更に北へ、つまり銀河中心方向へと、長征することになっていた。
「うん。でも、そのことは大尉にもチーフにも、気にしないでもらいたい。
俺も忘れるように努力するよ。今は、ガウベラ帝国の影響について調査することに、専念しないと。
『プルシャプラ』って言ったっけ、銀河北辺暗黒天体群域に千光年も踏み込んだところにあるという、その都市は」
「あまり、気を張り詰めすぎないようにな」
右隣からはチーフ・ミハルの声。「心配事を相談するくらいに、気を逸らして良い時間帯だって、活動期間中にはたっぷりある。
拉致されてしまったセシリアという君のガールフレンドのために、我々に何かできることが無いか、皆で知恵を出し合おうじゃないか」
「ありがとうございます。チーフ」
良き仲間には巡り合えた。
任務にもやり甲斐を感じ始めている。
少し温度を高めた心が、未知の天体地中都市プルシャプラへと向かう加速重力の高まりを、ジワリと感じ始めた。
今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/2/25 です。
1-1-1(トリプルワン)戦闘艇団というワードが、この物語に、既に何回か登場していますが、これ自体はこの物語では登場しません。
構想段階の組織と表現されていますが、その構想の実現はまだまだ先の話で、この物語が終わるまでには成されません。
というか1-1-1というワードすらも、これ以降出て来なかったのではないかと、作者は記憶しています。
「銀河戦國史」シリーズの他の作品を読んで下さった方の中には、1-1-1戦闘艇団がバリバリと活躍するシーンをご覧になった方もおられるでしょう。
1-1-1という名の由来も、シリーズ内のある作品において、語られています。
要するに、シリーズの別作品も読んでもらおうと宣伝を試みているわけですが、それによって、未来の銀河の歴史の、1万年に及ぶ時間や10万光年に渡る空間のスケール感を、味わって頂きたいのです。
それこそが、作者にとっては執筆の大きな原動力になっているので、是非、シリーズ内の複数の物語を体験することで、途方もない時間と空間の広がりを感じて頂きたいと、切に願っております。
後書きでの他作品の宣伝は、ルール違反でしょうか?




